黒潮大蛇行が始まって3年6か月を越えています。黒潮大蛇行は昨年夏以前より弱くなっていますが、以前の予測よりは安定してきているようです。 |
高分解能予測JCOPE-T DAの開始にともない、
- JCOPE-T DAによる短期予測(10日先)
- JCOPE2Mによる長期予測(2か月先)
を行っています。
ここでは4月7日までのJCOPE2Mによる長期予測を解説します[1]。長期予測では、黒潮大蛇行の予測がテーマです。
予測
図1は2021年1月27日の状態の推測値、図2・3は3月7日・4月7日の予測です。水位0.3mの位置に太線を黒潮の流軸の推定値として加えています。詳しくは「海洋速報」黒潮流軸とモデル予測の比較の解説をご覧ください。
黒潮大蛇行から大きく渦がちぎれ(A)いったん大蛇行が終わったと言える状況でしたが(コラム「黒潮大蛇行が終わる!?」を参照)、九州東から四国南にあった離岸(小蛇行D’)が紀伊半島に南に移動し潮岬で離岸したことから、大蛇行の状況が再開していると言える状態です(図1)。中断の期間を含めれば黒潮大蛇行は約3年6か月を越えています。記録が確かな1960年代後半以降の史上2番目の長さです(最長は1975-80年の4年8か月。「黒潮大蛇行の歴史」参照)。蛇行(D’)はさらに大きくなる予測ですが、途中で渦がちぎれそうになるなど(図2)、やや不安定です。より高い分解能の短期予測ではより渦がちぎれそうな予測になっています。
黒潮は八丈島に近づいていましたが、八丈島の北を流れる流路に戻っています(C, 図1~3)。
以前の大蛇行を作っていた渦Aは九州の南東で黒潮にくっつくか、ほぼくっついています(図1)。渦Aは黒潮で下流に流されて渦D’と合流すると予測しています。それとは別に、九州南東には小蛇行(D”)が形成されると予測しています(図3)。
大蛇行から渦がちぎれそうになったり(図2)、大蛇行D’の他に小蛇行D”があったり(図3)と、典型的な黒潮大蛇行としては不安定ですが、黒潮大蛇行は続くと予測しています。図6などを見ると、以前の予測より安定してきているようです。
図4は、2021年1月27日から今年4月7日までの予測をアニメーションにしたものです。
図4: 2021年1月27日から4月7日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。
潮岬での接岸
串本と浦神の日平均潮位差が大きいことは、紀伊半島・潮岬で黒潮が接岸していることを意味します[2]。図5は気象庁のデータから作成した串本・浦神の潮位差の時間変化です。黒潮大蛇行が始まった2017年後半から潮岬で黒潮が離岸していたため低かった潮位差は、昨年10月に黒潮が接岸したため急上昇しました。潮位差は再び下降しており、黒潮が離岸していることをしめしています(図1)。
黒潮大蛇行を作る渦の強さ
図6は、黒潮大蛇行を作る冷水渦の強さの指標です[3]。東海沖水深1000mの冷水の面積の指標を3℃以下から、3.3℃以下に変更しています。
黒潮大蛇行を作る渦は昨年の夏以降に渦がちぎれたことで弱まっています(黒太線)。最新の予測(赤線)は先週の予測(黒点線)より情報修正です。弱いなりに同程度の値が続くと予測しており、以前の予測より安定してきているようです。
- [1]2020/4/15日号の予測より、予測モデルへの海面高度観測のデータの入れ方を変更しています。↩
- [2]串本・浦神潮位差については、2016/4/1号「潮岬への黒潮接岸判定法は?: 串本・浦神の潮位差」で解説したように、紀伊半島・潮岬で黒潮が接岸→潮位差大、黒潮が離岸→潮位差小という関係があります。過去の串本・浦神潮位差の解説一覧はこちら。↩
- [3]図の見方は「深海から黒潮大蛇行のこれからを予測する」を参照↩
JCOPE2Mは4日毎に更新を行っています(解説参照)。JCOPE2Mの他の予測図についてはJCOPE のweb pageでご参照ください。図の見方は連載: JCOPE2解析・予測画像の見方で解説しています。