2021年5月5日までの黒潮「長期」予測(2021年3月3日発表)

黒潮大蛇行が始まって約3年7か月を超えています。黒潮大蛇行が不安定になる可能性があります。

高分解能予測JCOPE-T DAの開始にともない、

を行っています。

ここでは5月5日までのJCOPE2Mによる長期予測を解説します。長期予測では、黒潮大蛇行の予測がテーマです。

予測

図1は2021年2月24日の状態の推測値、図2・3は3月16日・5月5日の予測です。水位0.3mの位置に太線を黒潮の流軸の推定値として加えています。詳しくは「海洋速報」黒潮流軸とモデル予測の比較の解説をご覧ください。

黒潮大蛇行が続いています(図1)。紀伊半島・潮岬(B)で大きく離岸しています。一時中断の期間を含めれば黒潮大蛇行は約3年7か月になりました。記録が確かな1960年代後半以降の史上2番目の長さです(最長は1975-80年の4年8か月。「黒潮大蛇行の歴史」参照)。以前の大蛇行を作っていた渦Aは九州の南東で黒潮にくっついています。一連の変化については、「黒潮大蛇行の入れ替わり (2020/9-2021/2)」をご覧ください。

大蛇行(D’)は途中で小さな渦(D)がちぎれるなど(図2)、やや不安定です。また、4月末に大きく渦(D– –)がちぎれて、渦Aにくっつくという予測になっています(図3)。

黒潮が八丈島に近づいていますが(C, 図1,2)、八丈島の北を通る流路に戻ると予測しています(図3)。八丈島付近の流れは今週の検証記事でも議論しています。

今週の予測で黒潮大蛇行が大きく崩れる予測がでてきました(図3)。まだ2か月前の予測なので今後変わる可能性があります。

図4は、2021年2月24日から今年5月5日までの予測をアニメーションにしたものです。

Fig1

図1: 2021年2月24日の推測値。矢印(ベクトル)は海面近くの流れの向き(メートル毎秒, 長いほど速い流れ)、色は海面水位(メートル, 相対値)。赤丸()が八丈島の位置。海面高度が低いところは海面水温が低いおおまかな関係があります。黒太線は海面水位0.3mの等値線で、黒潮の流軸の推定値。

 

Fig2

図2: 図1に同じ。ただし2021年3月16日の予測値。

 

Fig3

図3: 図1に同じ。ただし2021年5月5日の予測値。

 


図4: 2021年2月24日から5月5日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

潮岬での接岸

串本と浦神の日平均潮位差が大きいことは、紀伊半島・潮岬で黒潮が接岸していることを意味します[1]。図5は気象庁のデータから作成した串本・浦神の潮位差の時間変化です。黒潮大蛇行が始まった2017年後半から潮岬で黒潮が離岸していたため低かった潮位差は、昨年10月に黒潮が接岸したため急上昇しました。潮位差は再び下降しており、黒潮が離岸していることをしめしています(図1)。

Fig5

図5: 串本と浦神の潮位差(串本の潮位から浦神の潮位を引いたもの)の時間変化。単位はセンチメートル。データは気象庁のサイトで入手した。

黒潮大蛇行を作る渦の強さ

図6は、黒潮大蛇行を作る冷水渦の強さの指標です[2]。東海沖水深1000mの冷水の面積の指標を3℃以下から、3.3℃以下に変更しています。

黒潮大蛇行を作る渦は昨年の夏以降に渦がちぎれたことで弱まっていましたが、再び強さを取り戻しています。(黒太線)。最新の予測(赤線)は、渦が大きくちぎれる予測も出てきて(図3)、先週の予測(黒点線)より下方修正です。渦が弱くなっていくと予測しています。

Fig6

図6: JCOPE2Mで推定と予測した冷水面積(東海沖水深1000mで水温3.3℃以下の海域の面積)の1日ごとの時系列。黒潮大蛇行を作る冷水渦の強さの指標。単位は104平方キロメートル。黒線は観測を取り入れつつ推定した値。赤線が最新の予測。


  1. [1]串本・浦神潮位差については、2016/4/1号「潮岬への黒潮接岸判定法は?: 串本・浦神の潮位差」で解説したように、紀伊半島・潮岬で黒潮が接岸→潮位差大黒潮が離岸→潮位差小という関係があります。過去の串本・浦神潮位差の解説一覧はこちら
  2. [2]図の見方は「深海から黒潮大蛇行のこれからを予測する」を参照


JCOPE2Mは4日毎に更新を行っています(解説参照)。JCOPE2Mの他の予測図についてはJCOPE のweb pageでご参照ください。図の見方は連載: JCOPE2解析・予測画像の見方で解説しています。