「海洋速報」黒潮流軸とモデル予測の比較(2021年3月3日)

ポイント1. 黒潮流路「短期(10日)予測」では、大蛇行が八丈島の東に移動する傾向がありました

ポイント2. 黒潮「長期(1か月)予測」では、黒潮大蛇行の先が西向きに伸びていく傾向がありました。

短期予測

今回は

2021年3月4日までの黒潮「短期」予測 (2021年2月24日発表) で示した予測結果にほぼ対応している結果(JCOPE-T DAモデルを紹介)について示します。まず現況予測結果を図1に示します。

Fig1

図1 「海洋速報」黒潮流軸(黒線)とJCOPE-T DA黒潮流軸(緑線)。2021年2月24日。左上の数字は予測開始日を示す。

現況予測の結果(緑線)は黒潮大蛇行について伊豆諸島付近を除いては海洋速報の結果(黒線)をほぼ再現できていましたが、予測のほうが海洋速報流軸よりも東に移動する傾向がありました。その後の短期予測(図2)でも

Fig2

図2 「海洋速報」黒潮流軸(黒線)とJCOPE-T DA黒潮流軸(緑線)。2021年2月28日。左上の数字は予測開始日を示す。

同様でした。ただし、実際の予測結果を見ると黒潮流軸は八丈島の西にあるようにも見え、ここでは流軸を単純にモデルでの日平均水位が0.3mと定義していることで実際の予測結果と海洋速報流軸(「黒潮の流軸は、流路の内で最も流速が速い海域(最強流帯)を示し、黒潮北縁から概ね13海里に位置します。」(リンク))とのずれもあるようでした。

ともあれ八丈島の潮位の実況を見ると(図3)、2月に入ると潮位が下がる傾向にありますが、このまま下がって流軸が東に移動するという状況ではないようです。黒潮大蛇行は八丈島の西にあって安定して持続する傾向がみられるようです。このまま黒潮大蛇行が八丈島の西でもちこたえ続けるのか、注目していきたいと思います。

Fig3

図3 八丈島(位置は図1の矢印参照)の潮位の推移。潮汐と気圧の影響を取り除いたもの。https://ovd.aori.u-tokyo.ac.jp/tides/time1.html より取得して加工。

長期予測

次に、長期予測(JCOPE2Mモデルの結果を紹介)

2021年4月7日までの黒潮「長期」予測(2021年2月3日発表)

2021年4月15日までの黒潮「長期」予測(2021年2月10日発表)

におおよそ対応する結果の予測を見てみます(図4)。

図4 「海洋速報」黒潮流軸(黒線)とJCOPE2M黒潮流軸(色線)。左:2021年2月24日。右:2021年2月28日。左上の数字は予測開始日を示す。

黒潮大蛇行とその上流側の小蛇行をおおむね予測できていたといえますが、予測された大蛇行の先は海洋速報よりも西側にとびだすように伸びています。予測の大蛇行が、もっと長く予測していくとさらに伸びて先から渦がちぎれる傾向があることに関係しています。