最近の黒潮大蛇行と5月12日までの「長期」予測

最近の黒潮大蛇行

図1・2・3は2022年2月1日・2月16日・3月3日の黒潮の状態の推定です。

2月に黒潮大蛇行から渦(A)がちぎれて、現在の黒潮は図3のような状態になっています。図1のような「ひ」の字型の黒潮大蛇行流路に比べて、図3の流路は黒潮大蛇行に見えないかもしれません。しかしながら、気象庁の黒潮大蛇行判定基準は、

  1. 紀伊半島潮岬で黒潮が離岸している。
  2. 東海沖(東経136~140度)での黒潮流路の最南下点が北緯32度より安定して南に位置している(図3の赤点線参照)。

であり、図3は黒潮大蛇行流路と言えます。形式的な話は置くとしても、図1でも図3でも、紀伊半島から黒潮が離れて流れた後、東海沿岸にむかって北上するという点は共通しており、黒潮の沿岸への影響という点ではあまり大きな違いはありません。

2020年の10月にも黒潮大蛇行から渦が大きくちぎれ、その後に大蛇行が回復したことがありましたが(「黒潮大蛇行の入れ替わり (2020/9-2021/2)」)、その時は今年よりも黒潮が紀伊半島に近づきました。2020年の時と比べると、今年の方が大蛇行らしさが保たれていると言えるでしょう。

FIg1

図1: 2022年2月1日の推測値。矢印(ベクトル)は海面近くの流れの向き(メートル毎秒, 長いほど速い流れ)、色は海面水位(メートル, 相対値)。赤丸()が八丈島の位置。海面高度が低いところは海面水温が低いおおまかな関係があります。

 

Fig2

図2: 図1に同じ。ただし2月16日の推測値。

 

Fig3

図3: 図1に同じ。ただし3月3日の予測値。

 

2022年5月12日までの予測

図4・5は2022年4月1日・5月12日の黒潮の状態の予測です。渦がちぎれた後の大蛇行の残り(B)は八丈島(赤点)の東に消えていく一方で、四国から九州東にある離岸(C)が東に進んで代わりの大蛇行になってくるという予測になっています。5月には黒潮大蛇行らしい「ひ」の字型の流路に戻りそうです(図5)。2月に黒潮大蛇行からちぎれた渦(A)は九州南東で黒潮にくっつき、吸収されると予測しています。

2017年8月に始まった黒潮大蛇行は今月で期間が約4年8か月目に入っており、観測史上最長の1975-1980年の黒潮大蛇行と並んでいます(「黒潮大蛇行の歴史」参照)。来月に過去最長の黒潮大蛇行になるでしょう。

図6は、2022年3月3日から5月21日までの予測をアニメーションにしたものです。

Fig4

図4: 図1に同じ。ただし4月1日の予測値。

 

Fig5

図5: 図1に同じ。ただし5月12日の予測値。

 


図6: 2022年3月3日から5月12日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

 



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