黒潮続流の北上は解消されるか? (親潮ウォッチ2023/8)

見通し(長期予測)

海洋予測モデルJCOPE2Mで、約2か月先までの予測を行っています。図1はJCOPE2Mによる水深100メートル[1]で8月17日の水温(色、℃)と流れ(矢印)です。赤色が黒潮の影響を受けた暖かい水温で、青色が親潮の影響を受けた冷たい水温です。親潮の影響を受けている範囲の指標として、水温5°Cに赤線を引いています。

黒潮続流(A)も例年に比べて異常に北上しており東北沖は水温が高くなっています(図5も参照)。

気象庁は黒潮続流の北上のために三陸沖の海洋内部の水温が記録的に高くなっていることを発表しています[2]

気象庁が診断した親潮面積[3]を見ても、例年よりはるかに小さくなっています。去年も夏に0に近い値まで下がっていましたが、今年はさらに早い時期に0に近づいています。

今後(図2~3)は、黒潮続流は暖水渦として切り離されると予測しています(A)。しかし、暖水渦は東北沖に残ります。黒潮続流も北寄りで推移しそうです(B)。そのために東北沖の高水温は続きそうです。

日本海では北海道北部で、少なくとも水深100mの水温5度線の分布が平年値に近づいており、それが続く予測です(C)。気象庁の対馬暖流の勢力の時系列(日本海における深さ 100m の水温が 10℃以上の領域の面積)も平年値に近づいています。

図4は2023年8月17日から10月26日までの予測をアニメーションにしたものです。

Fig1

図1: JCOPE2Mによる2023年8月17日の水深100メートルでの水温(色、℃)と流れ(矢印)。赤色が5°Cより高い黒潮の影響を受けた暖かい水温で、青色が5°Cより低い親潮の影響を受けた冷たい水温。親潮の影響を受けている範囲の指標として水温5°Cに太い赤線を引いた。青線は1993-2020年平均の水温5°C線で平年の親潮の影響範囲。

 

Fig2

図2: 図1に同じ。ただし2023年9月26日の予測。

 

Fig3

図3: 図1に同じ。ただし2023年10月26日の予測。

 


図4: 図1に対応する2023年8月17日から10月26日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

 

今月のハイライト: 黒潮続流の北上

JAXAひまわりモニタ・海中天気予報のサイト がリニューアル公開されました(「JAXAひまわりモニタ・海中天気予報のサイトがリニューアル」) 。このサイトでは上の予測(JCOPE2M, 約9kmメッシュ)よりも高分解能のモデル(JCOPE-T DA, 約3km)の様々な図を見ることができます。モデルの結果と人工衛星「ひまわり」の図を重ねることもできます。

図5は、8月21日の「ひまわり」観測の海面水温と、モデルによる流れの推定です。黒潮(黒潮続流)は、いぜんとして異常に北上しています。黒潮続流は北端で時計回りの渦状の流れになっており(A)、今後暖水渦として切り離される可能性があります。

Fig5

図5:7月21日午後7時の人工衛星「ひまわり」観測の水温(色)とモデルによる流れ(矢印)(①で指定)。色の幅は20~31℃とした(②で指定)。


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黒潮親潮ウォッチでは、親潮の現状について月に一回程度お知らせします。親潮に関する解説一覧はこちらです。 JCOPE-T-DAによる短期予測はJAXAのサイトで見ることができます。 4日毎に更新されるJCOPE2Mによる親潮の長期解析・予測図はJCOPE のweb pageで見られます。親潮関係の図の見方は2017年1月18日号2017年2月1日号で解説しています。

  1. [1]天気の影響を受けやすい海面よりも海流の状態を反映していると考えられます。
  2. [2]三陸沖の海洋内部の水温が記録的に高くなっています」(気象庁、2023年8月9日)
  3. [3]東経141度〜148度、北緯43度以南における、深さ 100m の水温が 5℃以下の領域の面積