見通し(長期予測)
海洋予測モデルJCOPE2Mで、約2か月先までの予測を行っています。図1はJCOPE2Mによる水深100メートル[1]で10月12日の水温(色、℃)と流れ(矢印)です。赤色が黒潮の影響を受けた暖かい水温で、青色が親潮の影響を受けた冷たい水温です。親潮の影響を受けている範囲の指標として、水温5°Cに赤線を引いています。
黒潮続流(A, B)が例年に比べて異常に北上しており東北沖は水温が高くなっています。一方で、その北では南向きの親潮が流れてきています(図6も参照)。
今後(図2~3)は、黒潮続流は暖水渦として切り離されると予測しています(A)。その場合、黒潮続流は南下しそうです(B)。しかし、実際に渦がちぎれるかは不確実です。仮にちぎれても、ちぎれた暖水渦は東北沖に残ります。そのために、親潮は南下しにくく、東北沖の高水温は続きそうです。
日本海では水温が高く、北海道北部で水温5度線の分布が平年よりも広がっており、それが続く予測です(C)。気象庁の対馬暖流の勢力の時系列(日本海における深さ 100m の水温が 10℃以上の領域の面積)も、平年よりかなり高くなっています。
図4は2023年10月12日から12月21日までの予測をアニメーションにしたものです。
図4: 図1に対応する2023年10月12日から12月21日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。
今月のハイライト: 昨年の違い
JAXAひまわりモニタ・海中天気予報のサイト がリニューアル公開されました(「JAXAひまわりモニタ・海中天気予報のサイトがリニューアル」) 。このサイトでは上の予測(JCOPE2M, 約9kmメッシュ)よりも高分解能のモデル(JCOPE-T DA, 約3km)の様々な図を見ることができます。モデルの結果と人工衛星「ひまわり」の図を重ねることもできます。
図5と6は、2022年と2023年と10月16日の「ひまわり」観測の海面水温です。
黒潮(黒潮続流)は今年のほうが昨年よりも北上しており(A)、東北沖の高い水温の原因になっています。一方で北海道から岩手県沿岸まで親潮の冷たい水が昨年よりも入っています(B)。
気象庁が診断した親潮面積[2]を見ても、昨年より今年の方が平年値に近づいています。それでもまだ親潮は弱い状態です。
黒潮親潮ウォッチでは、親潮の現状について月に一回程度お知らせします。親潮に関する解説一覧はこちらです。 JCOPE-T-DAによる短期予測はJAXAのサイトで見ることができます。 4日毎に更新されるJCOPE2Mによる親潮の長期解析・予測図はJCOPE のweb pageで見られます。親潮関係の図の見方は2017年1月18日号と2017年2月1日号で解説しています。