渦がちぎれて蛇行が小さくなっています。蛇行は再発達する予測です。ただ長期には保たれないかもしれません。 |
高分解能予測JCOPE-T DAの開始にともない、
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- JCOPE-T DAによる短期予測(20日先)
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- JCOPE2Mによる長期予測(2か月先)
を行っています。
ここでは7月23日までのJCOPE2Mによる長期予測を解説します。長期予測では、黒潮大蛇行の予測がテーマです。
予測
図1は2025年5月14日の状態の推測値、図2・3は6月23日、7月23日の予測です。
気象庁が5月9日に、7年9か月続いた黒潮大蛇行が終息する兆しと発表しました。
大蛇行から渦がちぎれて(A’’) 、黒潮大蛇行の蛇行が大幅に小さくなっており(図1)、大蛇行と呼べるほど蛇行は大きくありません。
黒潮大蛇行が終わると黒潮が紀伊半島に近づきます。黒潮が紀伊半島に近づいているかを観測で見る良い方法として、串本と浦神の潮位差を見るという方法が知られています(「潮岬への黒潮接岸判定法は?: 串本・浦神の潮位差」「今後の黒潮の3つのポイント」参照)。黒潮が紀伊半島に近づくと潮位差は大きくなり、黒潮が紀伊半島から離れると潮位差は小さくなります。小さな値は今月5月20日の時点でも続いており(図4)、黒潮はまだ紀伊半島に近づいていない状態です。
今後は蛇行が再発達するかが注目点になります。紀伊半島の南にある小さな蛇行(A)が東に進みながら大きくなる予測になっています(図2~3)。しかし、八丈島(●)を通り越すような形になっており(図3)、このまま東進して、大蛇行としては保たれないかもしれません。
予測期間内ではちぎれた渦(A’)が黒潮に再びくっつきそうですが(図3)、この後に関しては不明です。
「今後の黒潮: 考えられる4つのシナリオ」の中では、シナリオ1は現実的でなくなりました。予測ではシナリオ2もなく、シナリオ3か4ということになります。しかし、この予測モデルでは黒潮が蛇行を東に押し流す力が強すぎる可能性があり[1]、シナリオ2もまだ否定できません。
図5は、2025年5月14日から7月23日までの予測をアニメーションにしたものです。

図1: 2025年5月14日の推測値。矢印(ベクトル)は海面近くの流れの向き(メートル毎秒, 長いほど速い流れ)、色は海面水位(メートル, 相対値)。赤丸(●)が八丈島の位置。海面高度が低いところは海面水温が低いおおまかな関係があります。

図4: [上]串本・浦神の潮位差(日平均)の2016年1月1日以降の時系列。データは気象庁から入手した。[下] 2025年以降を拡大。
図4: 2025年5月14日から2025年7月23日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。
JCOPE2Mは4日毎に更新を行っています(解説参照)。JCOPE2Mの他の予測図についてはJCOPE のweb pageでご参照ください。図の見方は連載: JCOPE2解析・予測画像の見方で解説しています。
- [1]近年、黒潮の動力である太平洋の風が弱まっていますが、この予測モデルでは平年の風を使っています。↩