| 黒潮大蛇行の終息後、その余波は続いていましたが、その余波である蛇行はほぼ消えかけています。接岸流路がしばらく続きそうです。 |
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- JCOPE-T DAによる短期予測(20日先)
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- JCOPE3Mによる長期予測(2か月先)
を行っています。
ここで来年1月16日までのJCOPE3Mによる長期予測を解説します。長期予測では、黒潮の蛇行の予測がテーマです。
予測
図1は2025年11月15日の状態の推測値、図2・3は12月18日、来年1月16日の予測です。
気象庁と海上保安庁は今回の黒潮大蛇行が2025年4月に終息したとの判断を発表しました(2025/8/29)。しかし黒潮大蛇行の余波は続き、(「2025年の黒潮のこれまでをふりかえる」参照)、黒潮大蛇行からちぎれていた渦が黒潮に吸収されて蛇行をつくっていました(図1, A”)。その蛇行は縮小し、ほぼ消えかけています。「今後の黒潮: 考えられる4つのシナリオ」の中で、シナリオ4となりました。
また、黒潮は八丈島の近くからやや北をを流れています(図1, 図6も参照)。蛇行が大きく無く、黒潮が八丈島の北を流れていることから、現在の黒潮は非大蛇行接岸流路と判定されます。
今後の予測の注目点は、暖水渦Hと冷水渦Lです。この渦ペアは西に移動すると予測しています(図1~3)。暖水渦Hと冷水渦Lがこのまま西に進んで九州東の黒潮に近づくと、黒潮の流れが変化するきっかけになる可能性があります。ただ、冷水渦Lは段々弱くなるという予測であることから(図3)、今の所あまり大きな変化を引き起こすことはなさそうです。
図4は、2025年11月15日から2026年1月16日までの予測をアニメーションにしたものです。



図4: 2025年11月15日から2026年1月16日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。
観測で見る黒潮流路
黒潮大蛇行の特徴の一つは、黒潮が潮岬で離れていることです。黒潮が潮岬で離れているかを観測で見る良い方法として、串本と浦神の潮位差を見るという方法が知られています(「潮岬への黒潮接岸判定法は?: 串本・浦神の潮位差」参照)。黒潮が紀伊半島に近づくと潮位差は大きくなり、黒潮が紀伊半島から離れると潮位差は小さくなります。2017年に黒潮大蛇行が始まって以来、一時を除いて小さな値が続いていました(図5)。しかし、4月の黒潮大蛇行の終息後しばらくして値が大きくなり、潮岬で黒潮が接岸しました。その後、西の蛇行(A”)による離岸によって、串本と浦神の潮位差は再び小さくなりましたが、再び上昇が見られています。黒潮が潮岬に接岸している証拠となります。予測通りであれば、今後も黒潮は潮岬に接岸し、潮位差は大きい値が続きます。
黒潮大蛇行のもう一つの特徴は、黒潮が八丈島の北を通ることです。八丈島の南を黒潮が通ると、八丈島の潮位が下がることが知られています(「黒潮が八丈島の南を流れているのをどうやって観測で確認するの?」参照)。黒潮大蛇行が始まって以来、短期間を除き、八丈島の潮位は高い状態が続いてきました(図6)。大蛇行が終息した後、潮位は低下しました。その後、一旦上昇した後、蛇行A”によって再び下降しました。現在、再び上昇しています。蛇行が消え、黒潮が八丈島の北を流れるようになった証拠です。


参考: アンサンブル予測
JCOPEでは、上記の予測の他に、予測初期での条件を変えて予測がどれくらいの幅で変わるかという予測実験も行っています(JCOPE3Fによるアンサンブル予測)。下の参考図は2026年1月16日の黒潮の予測です。全24の予測をおこなっています。黒潮が八丈島の北を流れる流路が優勢ですが、八丈島の近くを流れる流路が多くなっています。

JCOPE3Mは水平1/12度の分解能で2か月先までの予測を行っています。予測は毎日更新されています。
2026年1月16日までの黒潮「長期」予測(2025年11月19日発表)