new海洋熱波・寒波ウォッチ(2025/12): 今年は史上3番目の高水温

日本周辺の多くの海域で海洋熱波が発生しています。気象庁の発表によれば、今年の日本近海の年平均海面水温は、2024年(1位)、2023年(2位)に次いで3番目に高い値となる見込み です。

先月から今月

図1と図2は先月11月1日と今月12月26日の図です(図の説明はこの記事の最後にあります)。

海面では相変わらず水温が高く(図左上段)、海洋熱波も多くの海域で発生しています(図右上段)。特に東シナ海・黄海・日本海では海水温が高く、高いレベルの海洋熱波が発生しています。

海面下の図(下段)から、高い水温と海洋熱波には、黒潮・北海道南の暖水渦・対馬暖流、日本海北部の影響がうかがえます。太平洋側では、例年より緯度の高い黒潮続流、北海道南の暖水渦が沿岸を高い水温にしています(「親潮が南下する可能性(親潮ウォッチ2025/12)」参照)。

気象庁の発表によれば、2025 年の日本近海の年平均海面水温の平年差2は+0.96℃で、統計を開始した1908年以降、2024年(1位)、2023年(2位)に次いで3番目に高い値となる見込みです。 海域別に見ると、東シナ海と黄海では、年平均海面水温が2024年(1位)に次いで2番目に高い値となる見込みです。

Fig6
図1: 2025年11月1日の図。左列が水温(等値線, ℃)、温度の平年との差(色, ℃)。平年は1993-2020年平均。右列が海洋熱波・寒波指数。 上段が水深1m。下段が水深100m。  

 

Fig7
図2: 図1に同じ。ただし2025年12月26日。

予測

図3と図4は来年1月26日と2月25日の予測です。

高い海水温と海洋熱波は多くの海域で継続すると予測しています。

日本海で高い水温が続くという予測です。日本海の高い水温は、ドカ雪につながる可能性があるので注意が必要です(「対馬暖流が強く大雪?」参照)。

日本南方では特に水温が下がりそうです。

2月(図4)には、「親潮が南下する可能性(親潮ウォッチ2025/12)」で冷たい親潮が沿岸近くを南下する予測になっており、北海道南で水温が下がり、海洋熱波が解消される可能性があります。

Fig8
図3: 図1に同じ。ただし2026年1月26日。

 

Fig9
図4: 図1に同じ。ただし2026年2月25日。

 

アニメーション

図5は2025年11月1日から2026年2月25日までのアニメーションです。12月27日から2月25日までは予測です。


図5: 2025年11月1日から2026年2月25日までのアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

図の説明

この記事で使う図の説明です。

図の左列が水温(等値線, ℃)と、温度の平年との差(色, ℃)の推定値です[1]。赤っぽい色が平年より水温が高い海域、青っぽい色が平年より水温が低い海域です。

上段が海面近くの水深1mで、下段が海面下の水深100mの図です。水深1mでは、天気と海流の影響によって水温が変化します。水深100mでは、主に海流の影響によって水温が変化します。もし水深1mでも100mでも海面と同様な変化が見られれば、天気よりも海流による影響が大きい可能性が高いです。

右列は、海洋熱波・海洋寒波指数です[2]海洋熱波とは、数日以上極端に海水温が上昇する現象です。その発生頻度は近年、大幅に増加しており、海洋生態系に与える影響が危惧されています([プレスリリース] 北海道・東北沖で海洋熱波が頻発していることが明らかに)。海洋寒波は逆に極端に海水温が低下する現象です。

海洋熱波が発生している明るい色の海域は、水温が平年より高いだけでなく、極端に高いことを意味しています。海洋寒波はその逆です。

海洋熱波・海洋寒波指数も水深1m(上段)と100m(下段)の図があります。

 

  1. [1]この記事では、今年の値はJCOPE3Mを使っています。平年の値はJCOPE2M再解析の1993~2020年の平均を使っています。JCOPE2M再解析データは学術研究利用では無償で公開しています。
  2. [2]海洋熱波でよく用いられている基準で、統計的に上位10%以内(90パーセンタイル以上)の高温が5日以上続いた場合に海洋熱波としています。平年との差が海洋熱波の基準(90パーセンタイルと気候平均の差)の2倍以上である場合は2、3倍以上である場合は3とカテゴリー化しています。逆に統計的に10%以下(10パーセンタイル)の低温が5日以上続いた場合には海洋寒波としています。