| 親潮は冷たいですが、黒潮系の暖水渦が北海道の南でそれ以上の南下を止めています。しかし、暖水渦が弱まったタイミングで親潮が南下する可能性があります。 |
見通し(長期予測)
海洋予測モデルJCOPE3Mで、約2か月先までの予測を行っています。
図1左はJCOPE3Mによる水深10メートルでの、12月26日の水温(色、℃)と流れ(矢印)です。右が同じ日の平年の値です[1]。
黒潮続流は平年(図1右)よりもやや高い緯度を流れ、高い水温になっています。
親潮自体は千島周辺で平年よりも強く、冷たくなっています(B)。親潮は北海道近くまで流れてきていますが、黒潮由来の時計回りの暖水渦Aの存在のため、平年に比べて親潮が沿岸近くを南下しにくくなっています。親潮系の水と黒潮系の水がぶつかり、温度差の大きい境目ができています(図5も参照)。
今後の予測(図2)でも、暖水渦(A)の影響が続くことから、親潮自体は勢いがあり冷たいものの、親潮の岸沿いの南下は限定されそうです。代わりに沖合で南下しそうです(B)。
しかし、暖水渦が弱まったタイミングで、親潮の冷水(B)が岸近くを南下する可能性があります(図3)。ただし、これは1か月よりも先の予測のため、予測は変化する可能性もあります。
黒潮続流の北では暖水渦の活動が活発で、高い水温が続きそうです(図2~3)。
図4は2025年12月26日から来年2月26日までの予測をアニメーションにしたものです。



図4: 図1に対応する2025年12月26日から2026年2月26日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。
短期予測
長期予測(JCOPE2M, 約9kmメッシュ)よりも高分解能のモデル(JCOPE-T DA, 約3km)による20日予測のアニメーションを、YouTubeに1週間に一度の間隔で掲載しています。親潮ウォッチの更新は月に一回ですが、一週間に一度の予測のアニメーションも参考にしてください。
今月のハイライト: 去年と今年の暖水渦の違い
JAXAひまわりモニタ・海中天気予報のサイト (解説は「JAXAひまわりモニタ・海中天気予報のサイトがリニューアル」) 。このサイトでは上の予測(JCOPE2M, 約9kmメッシュ)よりも高分解能のモデル(JCOPE-T 1ks 約1kmやJCOPE-T DA 約3km)の様々な図を見ることができます。モデルの結果と人工衛星「ひまわり」の図を重ねることもできます。
図5は、去年12月26日と今年12月28日の「ひまわり」観測の海面水温です。暖水渦(a)があるのは去年も今年も同じですが、今年は暖水渦が去年よりも弱く、やや南に位置しています。黒潮続流(b)も去年は岩手県あたりまで北上していましたが、今年はそこまで北上していません。親潮も去年より、今年の方が冷たく、南下しやすい状況です。

- [1]JCOPE3Mは平年のデータが無いため、JCOPE2Mの1993年から2020年の平均で平年の値を計算しています。↩
黒潮親潮ウォッチでは、親潮の現状について月に一回程度お知らせします。親潮に関する解説一覧はこちらです。 JCOPE-T-DAによる短期予測はJAXAのサイトで見ることができます。 4日毎に更新されるJCOPE2Mによる親潮の長期解析・予測図はJCOPE のweb pageで見られます。親潮関係の図の見方は2017年1月18日号と2017年2月1日号で解説しています。
親潮が南下する可能性(親潮ウォッチ2025/12)