潮岬での黒潮急加速

図1は、2016年1月1日の紀伊半島・潮岬付近の黒潮の流れです。この時、黒潮は潮岬の近くを流れ、接岸していました。流れの強さを見ると(色)、黒潮は1メートル毎秒を超える強い流れですが、潮岬を通過した所で流れがさらに急激に強くなっています(赤っぽい色)。わたしたちは、このような現象を潮岬での黒潮急加速と呼んでいます。黒潮急加速は、黒潮が潮岬の地形にぶつかることで発生すると考えています(※1)。

黒潮急加速は、いろいろな点で周辺の海域にとって重要です。その一つとして海面温度への影響を見てみましょう(図2)。この海域では、流れの強いところの北では水温が冷たく、南では水温が暖かくなるという性質があります。そのため、潮岬の下流に、黒潮急加速が発生している時には、同時に南北の温度差が大きい潮境ができます。潮境については2015/5/15号「海流と漁場の関係は?」で解説しました。つまり、黒潮急加速は、漁場にも影響を与えていると言えます。

他にも、黒潮急加速については面白い点がありますので、またの機会に解説する予定です。

図1: 2016年1月1日の潮岬付近での黒潮の流れ。矢印は海面近くの向きと強さ(メートル毎秒)。色も海流の強さをあらわす(メートル毎秒)。

図1: 2016年1月1日の潮岬付近での黒潮の流れ。矢印は海面近くの向きと強さ(メートル毎秒)。色も海流の強さをあらわす(メートル毎秒)。

Fig2

図2: 2016年1月1日の潮岬付近での海面水温(°C)。

 


※1 Miyama, T., and Y. Miyazawa, 2013: Structure and dynamics of the sudden acceleration of Kuroshio off Cape Shionomisaki. Ocean Dynamics, 63, 265-281. doi:10.1007/s10236-013-0591-7 (英語)