黒潮は、東海沖と伊豆諸島周辺で大きく蛇行しています。八丈島の南を流れる離岸は次第に縮小すると予測しています。東海沖の離岸は継続するでしょう。 |
JCOPE2の改良版であるJCOPE2Mは週2回の予測を行っています。ここでは2017年8月17日から10月19日までの予測を解説します。
現状
図1と図2はJCOPE2Mで計算した8月17日と8月23日の黒潮の状態です。
黒潮は、伊豆諸島付近で大きな蛇行が続いています(蛇行1, 図1,2)。前回の予測記事で紀伊半島・潮岬に近づいていた大きめの離岸(小蛇行2[1])は、その後大きく発達しながら東に進み、四国・室戸岬から東海沖にかけて大きく離岸しています(蛇行2, 図1,2)。蛇行にともなって、蛇行2の東側の紀伊半島東から東海沿岸にかけて暖水が入りやすい状況でした(図8も参照)。
房総半島沖ではやや黒潮が離れています(離岸傾向t[2])。
四国・足摺岬では黒潮が近づいていましたが(図1)、現在はやや離れています(離岸傾向b, 図2)。
予測
図3・図4・図5・図6は8月30日・9月6日・9月20日・10月19日の予測です。
伊豆諸島周辺の蛇行(蛇行1)は次第に縮小すると予測しています(図3~6)。一方で、東海沖の蛇行(蛇行2)は継続しそうです(図3~5)。長期的にはさらに蛇行が発達する可能性もあります(図6)。
足摺岬では、小刻みな離岸・接岸がありながらも、接岸が基調になると予測しています(図3~6)。現在、離岸している室戸岬でも次第に接岸するでしょう(図3~6)。潮岬では離岸が続くと予測しています(図3~6)。房総半島沖では離岸・接岸が大きく変化するでしょう(図3~6)。
図7は、8月17日から10月19日までの予測をアニメーションにしたものです。
図7: 2017年8月17日から10月19日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。
黒潮の蛇行はどうなるか?
この欄では黒潮蛇行の様子を検証していきます。
図8は8月8日と8月20日に「ひまわり8号」が観測した海面水温です[3]。黒潮は温度の高い帯として見えています。
黒潮が北緯32度(赤点線)以南まで蛇行すると大きいという目安になりますが[4]、伊豆諸島周辺では黒潮が八丈島(図の★)の南の北緯32度付近を流れ、前回予測したほど小さくならず、引き続き大きめの蛇行になっています(蛇行1)。
8月8日頃に紀伊半島沖を通過していた小蛇行も東に進みながら発達し、8月20日現在でこちらも大きな蛇行になっています(蛇行2)。
蛇行1と蛇行2が、今後どう変化するかが注目点です。蛇行1は小さくなり、蛇行2は継続すると予測しています(図3~6)。蛇行2が大きいまま、蛇行1が小さくなり黒潮が八丈島の北に流れると、長期的に持続しやすい[5]典型的な黒潮大蛇行の流路に近づきます。
- [1]現在の東海沖の離岸の元となった小蛇行と区別するために小蛇行2と呼んでいます。↩
- [2]接岸と離岸の傾向を上流から一連のアルファベットで図示しています。赤字s,u,,が接岸傾向で、青字t,v,,が離岸傾向です。黒潮上に接岸・離岸傾向は交互にあらわれており、黒潮が波うっている様子をあらわしています。接岸・離岸傾向は黒潮の流れで下流に流されます。アルファベットは図1から図4まで共通で(前号とも共通ですが、あらためて記号を振り直したところもあります)、同じアルファベット、例えば離岸傾向xが、上流から下流に位置が動いていることをしめしています。↩
- [3]ひまわり8号」の海面水温については、2015/10/9号・気象衛星「ひまわり8号」で見た黒潮を参照。JAXA提供の「ひまわり8号」海面水温データは、2016年8月31日からバージョン1.2にバージョンアップしています。鹿児島県水産技術開発センターや和歌山水産試験場からも「ひまわり」の画像が公開されています。過去の「ひまわり8号」の水温データを使った解説一覧はこちら。↩
- [4]海上保安庁の用語の説明参照。http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/KAIYO/qboc/exp/yougo.html↩
- [5]APLコラム「黒潮大蛇行は発生するか?」の解説参照。↩
JCOPE2Mは4日毎に更新を行っています(解説参照)。JCOPE2Mの他の予測図についてはJCOPE のweb pageでご参照ください。図の見方は連載: JCOPE2解析・予測画像の見方で解説しています。