親潮のこの一年をアニメーションで(親潮ウォッチ2016/05)

先月の2016/4/15号「親潮域の高温続く (最近の親潮)」でも報告したように、親潮域の高温が続いています。今回もその様子を見てみましょう。

図1は、5月7日の海面水温が平年(1993から2012年の20年平均)より高いか(赤っぽい色)、低いか(青っぽい色)、をJCOPE2のデータを用いて見たものです。親潮域の高温(図矢印でしめした場所)は引き続き見られます。

Fig1

図1: JCOPE2再解析による海面温度の平年(1993年から2012年の平均)との差(ºC)。2016年 5月7日。

 

親潮域の高水温は、海面下の海流の状態を反映しています。図2aは、2016年5月7日の水深100メートルでの水温と流速です。平年(図2b)と比較すると、沿岸で親潮が南下しておらず(図2a中の赤矢印でしめした場所)、温度がその分高くなっていることがわかります。

Fig2

図2: a) JCOPE2による2016年5月7日の水深100メートルでの温度(色, ºC)と流れ(矢印, メートル毎秒)。b) 平年(1993年から2012年の平均)の5月7日の温度と流れ。

 

2015/9/4号で 紹介した、親潮の勢力の指標である親潮の面積(図2の点線領域での水深100メートルの水温5度以下の水の広がり)で見ると、3月の月間平均は1993年以降の過去最少でした(2016/4/15号の図5)。4月の月間平均は、2001年、2000年に次いで、過去3位まで順位が落ちましたが(図3)、まだまだ小さいです。親潮面積が小さいということは、冷たい水(5度以下)の範囲が狭い、すなわち、親潮域があたたかいことを意味します。

Fig3

図3: 親潮の4月平均面積の各年の比較。単位は104 km2

 

親潮面積の2014年11月からの時間変化を見ると(図4の赤線)、親潮域の高温について触れ始めた昨年2015年の5月頃(2015/5/22号「親潮域があったかくなっているって聞いたけど?」)から、今年の5月に入っても、その値はまだ平年(黒細線)のはるか下、通常の範囲(灰色の範囲)を超えてさらに小さい面積になっています。

図3で触れた2000・2001年では、ある期間小さな値が続いても1年間も続いていないので(図5)、2015年から2016年まで続いている現象は異例に長期だと言えます。我々の予測では2ヶ月先でも小さい値が続きます(図4の青線)。

FIg4

図4: JCOPE2再解析データから計算した親潮面積の時系列(単位104 km2)。赤線が2014年11月から現在までの時系列。黒細線は平年(1993-2012年)の季節変化。灰色の範囲は平均からプラスマイナス標準偏差の範囲。青線はJCOPE2による2ヶ月先までの予測。

Fig5

図5: 図4と同じ。ただし赤線が1999年11月から2001年12月までの時系列。

 

昨年からの親潮の様子をアニメーションにしました。まだ親潮域面積が小さくなかった2015年3月1日から、2016年5月7日現在までの、親潮域の水深100mの水温(左図)と平年(1993から2012年の平均、右図)を比較しています。親潮の影響を受けた水温の低い領域が、平年に比べてどのように変化していったかご覧ください。


図6: 親潮域の水深100mでの2015年3月1日から2016年5月7日までの水温(左図)と平年(1993から2012年の平均、右図)の比較のアニメーション。親潮域の指標として水温5度に黒太線で等値線をひいてある。データは海洋再解析JCOPE2から。クリックして操作して下さい。途中で停止することもできます。

 

 


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黒潮親潮ウォッチでは、親潮の現状について月に一回程度お知らせします。親潮に関する解説一覧はこちらです。 JCOPE-T-DAによる短期予測はJAXAのサイトで見ることができます。 4日毎に更新されるJCOPE2Mによる親潮の長期解析・予測図はJCOPE のweb pageで見られます。親潮関係の図の見方は2017年1月18日号2017年2月1日号で解説しています。