2017年9月14日から11月16日の予測(9月20日発表)

黒潮は、東海沖で大きく蛇行しています。東海沖の蛇行のために、四国・室戸岬、紀伊半島・潮岬でも離岸しています。蛇行の東側から沿岸に黒潮から暖水が入りやすくなっています。九州東岸、四国・足摺岬では接岸しています。東海沖の蛇行は継続するでしょう。今後、典型的な黒潮大蛇行の流路になると予測しています。

JCOPE2の改良版であるJCOPE2M週2回の予測を行っています。ここでは2017年9月14日から11月16日までの予測を解説します。

現状

図1と図2はJCOPE2Mで計算した9月14日と9月20日の黒潮の状態です。

黒潮は東海沖で大きく離岸しています(図1,2、蛇行2[1])。この蛇行にともない、四国・室戸岬、紀伊半島・潮岬でも離岸しています蛇行2の東側から、東海沿岸にかけて西向きに暖水が入りやすい状況です(図1,2)。

房総半島沖では黒潮が離れています(図1、離岸傾向t[2])。

九州東岸、四国・足摺岬では接岸しています(接岸傾向c, 図1,2)。

Fig1

図1: 観測値を取り入れて作成した9月14日の推測値。矢印は海面近くの流れ(メートル毎秒)、色は海面高度(メートル)。赤丸()が八丈島の位置。海面高度が低いところは海面水温が低いおおまかな関係があります。

 

Fig2

図2: 9月20日の予測値。

 

予測

図3・図4・図5・図6は9月27日・10月4日・10月18日・11月16日の予測です。

黒潮は八丈島付近を南北に移動すると予測しています(図3~5)。東海沖の蛇行(蛇行2)は成長しながら継続しそうです(図3~5)。蛇行が大きく、紀伊半島・潮岬での離岸が継続し、八丈島の北を安定して流れるようになると、2004-2005年以来となる典型的な黒潮大蛇行の流路(図6)となります。気象庁も黒潮大蛇行になる可能性を指摘しています[3]

足摺岬では、小刻みな離岸・接岸がありながらも、接岸が基調になると予測しています(図3~6)。室戸岬ではやや離岸が続きそうです(図3~6)。潮岬では離岸が続くと予測しています(図3~6)。房総半島沖では離岸・接岸が大きく変化するでしょう(図3~6)。

図7は、9月14日から11月16日までの予測をアニメーションにしたものです。

Fig3

図3: 9月27日の予測値。

 

Fig4

図4: 10月4日の予測値。

 

Fig5

図5: 10月18日の予測値。接岸・離岸の記号は略。

 

Fig6

図6: 11月16日の予測値。接岸・離岸の記号は略。

 


図7
: 2017年9月14日から11月16日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

黒潮の蛇行はどうなるか?

この欄では黒潮蛇行の様子を検証していきます。図8上段は9月18日に「ひまわり8号」が観測した海面水温です[4]。黒潮は温度の高い帯として見えています。

現在の黒潮は図8の上段の図のように流れています。現在でも、蛇行が大きいことと、紀伊半島・潮岬での離岸すること、八丈島の北を流れることの、三つの特徴を満たしており、図8下段にしめした典型的黒潮大蛇行になった場合のイメージに近づいています。蛇行が大きいというのは北緯32度(赤点線)以南まで蛇行するというのが目安になります。[5]

ただ、「ひまわり8号」による観測では、紀伊半島の近くにモデルで十分に再現できない暖水舌があり、紀伊半島での今後の離岸への影響は、やや気になるところです。

また、先週より黒潮が八丈島に近づいており、黒潮が八丈島(図の)の北を流れるのが続くかも注目点になります。現在の予測では、いったんは八丈島の南を流れる可能性があります(図3~4)。

以上のような注目点はありますが、いずれ典型的な黒潮大蛇行になると予測しています(図6)。典型的大蛇行になるという予測は、8月9日号以来続いています。

 

Fig8

図8:[上段]9月11日に「ひまわり8号」が観測した海面水温。は八丈島の位置。白くなっているところは雲がかかって観測できなかった所。[下段]典型的大蛇行になった場合の流れのイメージ。

  1. [1]以前、大きな蛇行が二つ存在していたので便宜的に蛇行2と呼んでいます
  2. [2]接岸と離岸の傾向を上流から一連のアルファベットで図示しています。赤字u,w,,が接岸傾向で、青字t,v,,が離岸傾向です。黒潮上に接岸・離岸傾向は交互にあらわれており、黒潮が波うっている様子をあらわしています。接岸・離岸傾向は黒潮の流れで下流に流されます。アルファベットは図1から図4まで共通で(前号とも共通ですが、あらためて記号を振り直したところもあります)、同じアルファベット、例えば離岸傾向xが、上流から下流に位置が動いていることをしめしています。
  3. [3]臨時診断表 黒潮が東海沖で大きく離岸」(気象庁、2017/8/30)
  4. [4]ひまわり8号」の海面水温については、2015/10/9号・気象衛星「ひまわり8号」で見た黒潮を参照。JAXA提供の「ひまわり8号」海面水温データは、2016年8月31日からバージョン1.2にバージョンアップしています。鹿児島県水産技術開発センター和歌山水産試験場からも「ひまわり」の画像が公開されています。過去の「ひまわり8号」の水温データを使った解説一覧はこちら
  5. [5]海上保安庁の用語の説明参照。http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/KAIYO/qboc/exp/yougo.html


JCOPE2Mは4日毎に更新を行っています(解説参照)。JCOPE2Mの他の予測図についてはJCOPE のweb pageでご参照ください。図の見方は連載: JCOPE2解析・予測画像の見方で解説しています。