2017年10月26日から12月28日の予測(11月1日発表)

黒潮は、東海沖で大きく蛇行しています(黒潮大蛇行)。東海沖の蛇行のために、四国・室戸岬、紀伊半島・潮岬でも離岸しています。蛇行は東寄りになり、八丈島付近を北上しています。蛇行の東側から沿岸に黒潮から暖水が入りやすくなっています。四国・足摺岬では接岸しています。黒潮大蛇行は継続するでしょう。

JCOPE2の改良版であるJCOPE2M週2回の予測を行っています。ここでは2017年10月26日から12月28日までの予測を解説します。

現状

図1と図2はJCOPE2Mで計算した10月26日と11月1日の黒潮の状態です。

黒潮は東海沖で大きく離岸しており、黒潮大蛇行と呼ばれる状態になっています[1](図1,2)。大蛇行にともない、四国・室戸岬、紀伊半島・潮岬でも離岸しています大蛇行を作っている反時計回りの大冷水渦の北側では、東海沿岸沿いに西向きに暖水が入りやすい状況です[2](図1,2)。蛇行は以前よりも東寄りになり、黒潮は八丈島付近(●)を北上しています(図1,2)。黒潮の一部は、八丈島の南から東に流れているようです(図1。図8も参照)。

房総半島沖では黒潮が離れています(離岸傾向v[3]、図1,2)。

四国・足摺岬では接岸しています(接岸傾向e、図1,2)。

Fig1

図1: 観測値を取り入れて作成した10月26日の推測値。矢印は海面近くの流れ(メートル毎秒)、色は海面高度(メートル)。赤丸()が八丈島の位置。海面高度が低いところは海面水温が低いおおまかな関係があります。

 

Fig2

図2: 11月1日の予測値。

 

予測

図3・図4・図5・図6は11月8日・11月15日・11月29日・12月28日の予測です。

東海沖の黒潮大蛇行は成長しながら続きそうです(図3~6)。紀伊半島・潮岬での離岸も継続するでしょう(図3~6)。八丈島付近では黒潮の一部が八丈島の南を流れる時期はありますが(図5,6)、八丈島の北を流れる流路が継続しそうです(図3~6)。黒潮大蛇行については次の節で詳しく見ています。

足摺岬では、小刻みに離岸・接岸しながらも、接岸が基調になると予測しています(図3~6)。室戸岬では黒潮がいったん接岸しますが(図3,4)、大蛇行の規模が大きくなるにつれて再び離岸する可能性があります(図5,6)。房総半島沖では離岸傾向が続きそうです(図3~6)。

図7は、10月26日から12月28日までの予測をアニメーションにしたものです。

Fig3

図3: 11月8日の予測値。

 

Fig4

図4: 11月15日の予測値。

 

Fig5

図5: 11月29日の予測値。接岸・離岸の記号は略。

 

Fig6

図6: 12月28日の予測値。接岸・離岸の記号は略。

 


図7:
 2017年10月26日から12月28日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

黒潮の大蛇行は今後どうなるか?

この欄では黒潮大蛇行の今後を検討します。図8下段にしめした図が典型的な黒潮大蛇行になった場合のイメージです。典型的な黒潮大蛇行には(1)蛇行が大きい(2)紀伊半島・潮岬での離岸(3)八丈島の北を流れるといった特徴があります。特徴を一つずつ見てみましょう。

図8上段は10月23日に「ひまわり8号」が観測した海面水温です[4]。黒潮は温度の高い帯として見えています。10月23日の段階では、黒潮は典型的な大蛇行でした。蛇行が大きく[5]、紀伊半島・潮岬で離岸しており(黒潮の温度の水温の高い帯と潮岬が離れている)、八丈島の北を流れていました。

図8の中段の10月30日になると、典型的な黒潮大蛇行のパターンは少し崩れています。まず、紀伊半島・潮岬に暖水が近づいています。これは図1,2の接岸傾向cに対応します。

また、大蛇行が10月23日よりも東寄りになり、冷水渦(塊)が八丈島(図8の)の周りまで広がっています。このことから、図1のように、少なくとも黒潮の一部が八丈島の南を通過するようになっているようです。

これらの変化は一時的で、再び典型的な黒潮大蛇行になると予測しています(図3~6)が、今後が気になる状況です。

Fig8

図8:[上段]10月23日に「ひまわり8号」が観測した海面水温。は八丈島の位置。白くなっているところは雲がかかって観測できなかった所。[中段]同じく10月30日。[下段]典型的大蛇行になった場合の流れのイメージ。

 

  1. [1]黒潮大蛇行の記事のまとめはこちら
  2. [2]黒潮大蛇行時の東海沿岸への暖水進入については2017/9/13号「黒潮大蛇行で浸水被害?」を参照。
  3. [3]接岸と離岸の傾向を上流から一連のアルファベットで図示しています。赤字w,y,が接岸傾向で、青字v,x,が離岸傾向です。黒潮上に接岸・離岸傾向は交互にあらわれており、黒潮が波うっている様子をあらわしています。接岸・離岸傾向は黒潮の流れで下流に流されます。アルファベットは図1から図4まで共通で(前号とも共通ですが、あらためて記号を振り直したところもあります)、同じアルファベット、例えば離岸傾向xが、上流から下流に位置が動いていることをしめしています。
  4. [4]「ひまわり8号」の海面水温はJAXA提供のデータです。2015/10/9号・気象衛星「ひまわり8号」で見た黒潮を参照してください。鹿児島県水産技術開発センター和歌山県水産試験場三重県水産研究所からも「ひまわり」の画像が公開されています。過去の「ひまわり8号」の水温データを使った解説一覧はこちら
  5. [5]蛇行が大きいというのは北緯32度以南(図8の赤点線)まで蛇行するというのが目安になります。海上保安庁の用語の説明参照。http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/KAIYO/qboc/exp/yougo.html


JCOPE2Mは4日毎に更新を行っています(解説参照)。JCOPE2Mの他の予測図についてはJCOPE のweb pageでご参照ください。図の見方は連載: JCOPE2解析・予測画像の見方で解説しています。