2018年2月15日から4月19日の予測(2月21日発表)

黒潮は、東海沖で大きく蛇行しています(黒潮大蛇行)。八丈島付近を黒潮が流れています。東海沖の蛇行のために、四国・室戸岬、紀伊半島・潮岬でも離岸しています。四国・足摺岬では接岸しています。房総半島では黒潮が近づいています。黒潮大蛇行は継続するでしょう。ただし、いったん蛇行が大きくなった後、弱まってくる可能性があります。

JCOPE2の改良版であるJCOPE2M週2回の予測を行っています。ここでは2018年2月15日から4月19日までの予測を解説します。

現状

図1と図2はJCOPE2Mで計算した2018年2月15日と2月21日の黒潮の状態です。

黒潮は東海沖で大きく離岸しており、黒潮大蛇行と呼ばれる状態になっています[1](図1,2)。大蛇行にともない、四国・室戸岬、紀伊半島・潮岬でも離岸しています大蛇行を作っている反時計回りの大冷水渦の北側では、東海沿岸で西向きに暖水が入りやすい状況です[2](図1,2。図8も参照。)。

房総半島沖では黒潮が近づいています(接岸傾向g[3]、図1,2)。

四国・足摺岬では接岸しています(接岸傾向m、図1, 2)。

離岸傾向hが八丈島(図の)に近づき、黒潮の一部が八丈島の南から東にぬけているようです(図1,2。図8も参照)。

Fig1

図1: 観測値を取り入れて作成した2018年2月15日の推測値。矢印(ベクトル)は海面近くの流れの向き(メートル毎秒, 長いほど早い流れ)、色は海面高度(メートル, 相対値)。赤丸()が八丈島の位置。海面高度が低いところは海面水温が低いおおまかな関係があります。

 

Fig2

図2: 2月21日の予測値。

 

予測

図3・図4・図5・図6は2月28日・3月7日・3月21日・4月19日の予測です。

東海沖の黒潮大蛇行は続くでしょう(図3~6)。紀伊半島・潮岬での離岸も継続するでしょう(図3~6)。黒潮大蛇行については次の節で詳しく見ています。

ここしばらく接岸が続いてきた足摺岬、離岸が続いてきた室戸岬では、離岸と接岸の変化が大きくなってくると予測しています(図3~6)。ただし、変化が大きいため、短期はともかく、長期の予測は難しくなっています。房総半島沖では、離岸と接岸が繰り返されそうです(図3~6)。

図7は、2月15日から4月19日までの予測をアニメーションにしたものです。

Fig3

図3: 2月28日の予測値。

 

Fig4

図4: 3月7日の予測値。

 

Fig5

図5: 3月21日の予測値。接岸・離岸の記号は略。

 

Fig6

図6: 4月19日の予測値。接岸・離岸の記号は略。

 


図7: 2018年2月15日から4月19日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

黒潮の大蛇行は今後どうなるか?

この欄では黒潮大蛇行の今後を検討します。図8下段にしめした図が典型的な黒潮大蛇行になった場合のイメージです。典型的な黒潮大蛇行には(1)蛇行が大きい(2)紀伊半島・潮岬での離岸(3)八丈島の北を流れるといった特徴があります。特徴をひとつずつ見てみましょう。

蛇行が大きいというのは北緯32度以南(図8の赤点線)まで蛇行するというのが目安です[4]。図8上段と中段は今年2月12日と2月20日の「ひまわり8号」が観測した海面水温を比較した図です[5]。黒潮は温度の高い帯として見えています。2月12日(上段)、2月20日(中段)とも、東海沖で冷水が北緯32度よりも大きく南まで広がっています。それを迂回して、黒潮が大きく蛇行しています。予測では、大きな蛇行はまだ続きます(図3~6)。

黒潮蛇行の南西にある時計回り渦の動きに注目しています(図1~6)。この時計回り渦は東側の南向きの流れにより、短期的には蛇行をさらに南に引き出す働きをします(図3,4)。一方で、過去の黒潮大蛇行では、蛇行を南に引きちぎるようにして、その後の大蛇行を弱めた例があります。

黒潮は潮岬で離岸しています(図8上段・中段、黒潮の高水温が潮岬が離れている)。串本と浦神の日平均潮位差(気象庁)も小さいままであることから、離岸が継続していることがわかります[6]。予測では潮岬での離岸も続きます(図3~図6)。

東にのびた冷水(図1,2の離岸傾向hに対応)が八丈島()に近づいており、少なくとも黒潮の一部が八丈島の南から東にぬけているようです。この後、八丈島の北を流れる流路に戻ると予測しています(図4~6)。一般的には黒潮が八丈島の北を流れたほうが大蛇行が安定するとされています。

黒潮大蛇行はまだ続くでしょう(図3~6)。ただ、予測では蛇行の形がゆがんできており、大蛇行の安定性が弱まっているようです。時計回り渦の動きによっては、大蛇行が弱まる可能性があります。

Fig8

図8:[上段]2月12日に「ひまわり8号」が観測した海面水温。は八丈島の位置。白くなっているところは雲がかかって観測できなかった所。[中段]同じく2月20日。[下段]典型的大蛇行になった場合の流れのイメージ。


  1. [1]黒潮大蛇行の記事のまとめはこちら
  2. [2]黒潮大蛇行時の東海沿岸への暖水進入については2017/9/13号「黒潮大蛇行で浸水被害?」を参照。
  3. [3]接岸と離岸の傾向を上流から一連のアルファベットで図示しています。赤字g,i,,が接岸傾向で、青字h,j,,が離岸傾向です。黒潮上に接岸・離岸傾向は交互にあらわれており、黒潮が波うっている様子をあらわしています。接岸・離岸傾向は黒潮の流れで下流に流されます。アルファベットは図1から図4まで共通で(前号とも共通ですが、あらためて記号を振り直したところもあります)、同じアルファベット、たとえば離岸傾向fが、上流から下流に位置が動いていることをしめしています。
  4. [4]海上保安庁の用語の説明参照。http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/KAIYO/qboc/exp/yougo.html
  5. [5]「ひまわり8号」の海面水温はJAXA提供のデータです。2015/10/9号・気象衛星「ひまわり8号」で見た黒潮を参照してください。鹿児島県水産技術開発センター和歌山県水産試験場三重県水産研究所からも「ひまわり」の画像が公開されています。過去の「ひまわり8号」の水温データを使った解説一覧はこちら
  6. [6]串本・浦神潮位差については、2016/4/1号「潮岬への黒潮接岸判定法は?: 串本・浦神の潮位差」で解説したように、紀伊半島・潮岬で黒潮が接岸→潮位差大黒潮が離岸→潮位差小という関係があります。過去の串本・浦神潮位差の解説一覧はこちら


JCOPE2Mは4日毎に更新を行っています(解説参照)。JCOPE2Mの他の予測図についてはJCOPE のweb pageでご参照ください。図の見方は連載: JCOPE2解析・予測画像の見方で解説しています。