黒潮大蛇行はまだ継続すると予測しています。黒潮の蛇行から渦がちぎれる可能性があります。黒潮大蛇行が2017年8月に始まってから約2年[1]になりました。 |
高分解能予測JCOPE-T DAの開始にともない、
- JCOPE-T DAによる短期予測(2週間先)
- JCOPE2Mによる長期予測(2か月先)
を行っています。
ここでは9月26日までのJCOPE2Mによる長期予測を解説します。長期予測では、黒潮大蛇行の予測がテーマです。
予測
図1・2は8月26日・9月26日の予測です。
東海沖の典型的な黒潮大蛇行が続いています。典型的な黒潮大蛇行には(1)蛇行が大きい、(2)紀伊半島・潮岬での離岸、(3)八丈島の北を流れるといった特徴があります。
蛇行が大きいというのは北緯32度以南まで蛇行するというのが目安です[2]。流れを見ると、北緯32度を越えて黒潮が大きく蛇行しています(A)。予測でも大きな蛇行がまだ続きます。黒潮の蛇行から渦がちぎれる可能性がありますが(図1,2のA’。図3のアニメーションも参照)、大蛇行の継続に影響を与えるほど大きくはないと予測しています。渦のちぎれかたは予測のたびに異なっており、今後の注目点です。
黒潮は潮岬で離岸しています(B)。串本と浦神の日平均潮位差(気象庁)も小さいままであることから、離岸が継続していることがわかります[3]。予測でも潮岬での離岸は継続すると予測しています。
黒潮は八丈島の北を流れています(C)[4]。一時的には八丈島の南を通過する可能性がありますが(図1)、その後は八丈島の北を通過する流路に戻ると予測しています(図2)。八丈島の南を流れる流路が長期化、つまり大蛇行を作る反時計回りの渦が八丈島を越えて東に移動すれば、黒潮大蛇行が終わりに向かうことも考えられますが、そのような気配はありません[5]。
九州東に離岸(小蛇行 D)があり(図1)、その後、東に進むことで大蛇行に吸収されると予測しています。その後、別の小蛇行が発生する(D’)という予測になっています(図2)。
図4は、7月26日から9月26日までの予測をアニメーションにしたものです。
黒潮の現状と短期の予測については黒潮短期予測をご覧ください。
図3: 2019年7月26日から9月26日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。
黒潮大蛇行を作る渦の強さ
図4は、黒潮大蛇行を作る冷水渦の強さの指標です[6]。黒太線が現在の推定値で、1月からほぼ横ばいが続いていましたが、6月以降やや下降したものの、高い値をたもっています。最新の予測(赤線)では、渦のちぎれもあり、8月に急激に渦が弱くなると予測しています。ただし、長期予測モデルは下降を予測しすぎる傾向があります。また、たとえ予測通り下降したとしても値は0から遠く、黒潮大蛇行はまだ続くと考えられます。
- [1]2017年8月も1月に含めて数えています。気象庁に合わせた数え方です。↩
- [2]海上保安庁の用語の説明参照。http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/KAIYO/qboc/exp/yougo.html↩
- [3]串本・浦神潮位差については、2016/4/1号「潮岬への黒潮接岸判定法は?: 串本・浦神の潮位差」で解説したように、紀伊半島・潮岬で黒潮が接岸→潮位差大、黒潮が離岸→潮位差小という関係があります。過去の串本・浦神潮位差の解説一覧はこちら。↩
- [4]東京大学大気海洋研究所の「潮位データを用いた黒潮モニタリング」のグラフで見ると、八丈島の潮位が高くなっており、黒潮が八丈島の北を通過していることを示唆しています。八丈島の潮位については、「黒潮が八丈島の南を流れているのをどうやって観測で確認するの?」で解説しています。八丈島の潮位の持つ意味は、解説「黒潮大蛇行が終わる時: 2005年の場合」でもとりあげています。↩
- [5]「黒潮大蛇行はまだまた続く!? (2019年春の状況)」もご覧ください。↩
- [6]図の見方は「深海から黒潮大蛇行のこれからを予測する」を参照↩
JCOPE2Mは4日毎に更新を行っています(解説参照)。JCOPE2Mの他の予測図についてはJCOPE のweb pageでご参照ください。図の見方は連載: JCOPE2解析・予測画像の見方で解説しています。