黒潮大蛇行は継続すると予測しています。ただし深層の指標で見ると、黒潮大蛇行を作る渦の強さは弱まっているようです。黒潮大蛇行が2017年8月に始まってから約2年1か月[1]になりました。 |
高分解能予測JCOPE-T DAの開始にともない、
- JCOPE-T DAによる短期予測(2週間先)
- JCOPE2Mによる長期予測(2か月先)
を行っています。
ここでは10月24日までのJCOPE2Mによる長期予測を解説します。長期予測では、黒潮大蛇行の予測がテーマです。
予測
図1・2は9月24日・10月24日の予測です。
東海沖の典型的な黒潮大蛇行が続いています。黒潮大蛇行が2017年8月に始まってから約2年1か月[1]になりました。記録が確かな1960年代後半以降では、史上3番目の長さの黒潮大蛇行になっています(「黒潮大蛇行が過去3番目の長さに」)。今回より長い大蛇行は30年以上前の1981-1984年(約2年7か月)までさかのぼります。
典型的な黒潮大蛇行には(1)蛇行が大きい、(2)紀伊半島・潮岬での離岸、(3)八丈島の北を流れるといった特徴があります。
蛇行が大きいというのは北緯32度以南まで蛇行するというのが目安です[2]。流れを見ると、北緯32度を越えて黒潮が大きく蛇行しています(A)。予測でも大きな蛇行がまだ続きます。
黒潮は潮岬で離岸しています(B)。串本と浦神の日平均潮位差(気象庁)も小さいままであることから、離岸が継続していることがわかります[3]。予測でも潮岬での離岸は継続すると予測しています。
八丈島に近づいていた黒潮は、今後は完全に八丈島の北を通過する流路に戻ると予測しています(図1, 2)[4]。八丈島の南を流れる流路が長期化、つまり大蛇行を作る反時計回りの渦が八丈島を越えて東に移動すれば、黒潮大蛇行が終わりに向かうことも考えられますが、いまのところ予測されていません。
九州東にあった離岸(小蛇行)は東に進むことで大蛇行に吸収されると予測しています(図3参照。図1の段階では既に吸収されており、()付きのDで表記しています)。その後、別の小蛇行が発生する(D’)という予測になっています(図2)。
図4は、8月23日から10月24日までの予測をアニメーションにしたものです。
図3: 2019年8月23日から10月24日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。
黒潮大蛇行を作る渦の強さ
図4は、黒潮大蛇行を作る冷水渦の強さの指標です[5]。黒太線が現在の推定値で、1月からほぼ横ばいが続いていましたが、6月からやや下降し、8月に入ってから急激に下がりました。最新の予測(赤線)でも先週の予測(点線)と変わらず、低下が続くと予測しています。黒潮大蛇行が続くと予測は変わっていませんが(図1~3)、深層の指標では黒潮大蛇行を作る渦が弱まっているようです。これが黒潮大蛇行の継続にどういう影響を与えるか、今後注意深く見ていきます。
- [1]2017年8月も1月に含めて数えています。気象庁に合わせた数え方です。↩
- [2]海上保安庁の用語の説明参照。http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/KAIYO/qboc/exp/yougo.html↩
- [3]串本・浦神潮位差については、2016/4/1号「潮岬への黒潮接岸判定法は?: 串本・浦神の潮位差」で解説したように、紀伊半島・潮岬で黒潮が接岸→潮位差大、黒潮が離岸→潮位差小という関係があります。過去の串本・浦神潮位差の解説一覧はこちら。↩
- [4]東京大学大気海洋研究所の「潮位データを用いた黒潮モニタリング」のグラフで見ると、少し下がっていた潮位が上昇し、黒潮が八丈島の北を通過する流路に戻っていることを示唆しています。八丈島の潮位については、「黒潮が八丈島の南を流れているのをどうやって観測で確認するの?」で解説しています。八丈島の潮位の持つ意味は、解説「黒潮大蛇行が終わる時: 2005年の場合」でもとりあげています。↩
- [5]図の見方は「深海から黒潮大蛇行のこれからを予測する」を参照↩
JCOPE2Mは4日毎に更新を行っています(解説参照)。JCOPE2Mの他の予測図についてはJCOPE のweb pageでご参照ください。図の見方は連載: JCOPE2解析・予測画像の見方で解説しています。