続・黒潮大蛇行時の四国沖の状況: 小蛇行の通過(2019年9月)

2017年8月末に黒潮大蛇行は始まった後は四国・室戸岬沖では黒潮の大きな離岸が続いています。加えて2019年7月からは小蛇行が通過中で、足摺岬でも大きく離岸しています。

大蛇行後の四国沖の状況

2018年10月3日の記事「黒潮大蛇行時の四国沖の状況」では、黒潮大蛇行になったことで四国・室戸岬で大きな離岸状態が続いていることを見ました。図1(a)は当時2018年9月27日のの黒潮の状態です。今週の記事ではその後の様子を見てみましょう。

黒潮大蛇行はその後も続き、室戸岬でも大きく離岸した状態は2019年になっても続きました。2019年6月でもその状態は続いています(図1(b))。さらに黒潮大蛇行とは別に九州南東に離岸(小蛇行)が成長しました。

この小蛇行が黒潮の下流へと移動することで、2019年7月からは足摺岬でも大きな離岸が始まりました(図1(c))。足摺岬の離岸は現在も続いています。

Fig1

図1: 観測値を取り入れて作成したJCOPE2Mによる推測値。(a)2018年9月27日、(b)2019年6月15日、(c)2019年7月15日。矢印(ベクトル)は海面近くの流れの向き(メートル毎秒, 長いほど速い流れ)、色は海面高度(メートル, 相対値)。赤丸()が黒潮牧場10号ブイ、青丸()が黒潮牧場13号ブイの位置。海面高度が低いところは海面水温が低いおおまかな関係があります。

 

黒潮牧場ブイの観測から

上で述べたことは、室戸岬と足摺岬沖に高知県が設置している黒潮牧場ブイと呼ばれるブイによる観測で確かめることができます[1]。図1の室戸岬沖のには10号ブイ、足摺岬沖のには13号ブイが設置されています。

図2は、黒潮牧場10号ブイと13号ブイで測られた海面近くの海流の、2017年6月1日から2019年9月16日までの1日毎の時間変化です。縦軸が日付になっており、折れ線グラフは東西向きの強さで、赤で塗っているのが東向きを意味しています。黒潮が岸の近くを流れると流速が大きくなるので、黒潮が接岸→流速大黒潮が離岸→流速小という関係があります。接岸・離岸の変化は上流から下流に移動する性質があるので、流速の増減も上流(足摺岬沖・13号ブイ)から下流(室戸岬沖・10号ブイ)の順に変化する傾向があります。

室戸岬で(10号ブイ)では、「黒潮大蛇行時の四国沖の状況」で見たように、2017年に黒潮大蛇行を発生させた小蛇行(黄色矢印)が通過して以降は、流速が小さい状態が続いています(図2右)。

一方、足摺岬(13号ブイ)では、変動はあるものの、黒潮大蛇行期間中も大きな流速が続いていました(図2左)。しかし、新たな小蛇行が通過を始めた2019年7月からは、黒潮が離岸したために流速が小さい状態が続いています。

Fig1

図2: 足摺岬沖黒潮牧場13号(左)と10号ブイ(右)で観測された表層流速の1日毎の時間変化(2017年6月1日から2019年9月16日)。単位はノット。折れ線グラフは東西向きの強さで、赤で塗っているのが東向き。データは高知県漁海況情報システムから入手した。

小蛇行通過のアニメーション

図3は小蛇行が発達した2019年6月から現在まで(2019年6月1日から9月12日まで)のアニメーションです。現在、小蛇行はさらに下流に流され黒潮大蛇行に吸収されつつあります。小蛇行の通過後は、室戸岬の離岸は続きますが、足摺岬は接岸すると予測しています(黒潮長期予測参照)。


図3: 観測値を取り入れて作成したJCOPE2Mによる推測値。2019年6月1日から9月12日まで。矢印(ベクトル)は海面近くの流れの向き(メートル毎秒, 長いほど速い流れ)、色は海面高度(メートル, 相対値)。赤丸()が黒潮牧場10号ブイ、青丸()が黒潮牧場13号ブイの位置。海面高度が低いところは海面水温が低いおおまかな関係があります。

  1. [1]黒潮牧場ブイの観測を使った過去の解説一覧はこちら