2019年9月の予測を検証します

毎月、過去1カ月の予測を検証しています[1]。予測よりおだやかに小蛇行が黒潮大蛇行に吸収されて、黒潮大蛇行が強化されています。

予測と実際(長期予測)

今回は8月28日号の、8月23日から予測した9月20日までの結果を検証します。8月28日号では黒潮大蛇行が続くと予測しました。その予測は当たっています。

図1左は、8月23日から予測した9月20日の黒潮の状態です。図1右は、観測値を取り入れて実際に近いと考えられる9月20日の状態です。図2は、同じく予測値(左)と実際(右)の比較を、8月23日から9月20日までのアニメーションにしたものです。

9月20日の予測(図1左)は、実際(図1右)の黒潮大蛇行の特徴である、潮岬が継続して離岸していること、黒潮の最南下点が北緯 32 度より南に位置することを予測できていました(A)。

小蛇行が黒潮大蛇行に吸収される時に、黒潮大蛇行の形がゆがむと予測していました(図1左)。実際には小蛇行は予測よりもゆっくりと進み、おだやかに吸収されています(図1。図2のアニメーションも参照。)。その結果、予測よりも大蛇行が強化されています(大蛇行の中心で海面高度が低い)。

小蛇行の進行を早く予測しすぎた分、予測では実際よりも黒潮が八丈島に近づいています(C)。

八丈島に近づいていた黒潮は八丈島の北を流れる流路に戻ると予測していました(図1左B)。その予測は当たっています(図1右)。

Fig1

図1: [左]8月23日から予測した9月20日の予測値。[右]観測値を取り入れて推測した9月20日の解析値。矢印は海面近くの流れ(メートル毎秒)、色は海面高度(メートル)。赤は八丈島の位置。

 


図2: 8月23日から9月20日までの予測(左)と実際(右)の比較のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

黒潮大蛇行を作る渦の強さ(長期予測)

大蛇行を作る渦の強さを数値化するために、2018/3/14号「深海から黒潮大蛇行のこれからを予測する」で、深層の冷水面積(水深1000mの水温3℃以下の海域の面積)を渦の強さの指標として導入しました。

図3の点線は、7月31日号の8月25日からの予測による1か月の冷水面積の変化です。小蛇行が吸収された後も形が崩れて落ち着かないため、大蛇行は弱いままだと予測していました。実際には小蛇行はおだやかに吸収されて、大蛇行は強さを回復しています。

黒潮大蛇行が2017年8月に始まってから約2年2か月[2]たっており、記録が確かな1960年代後半以降では、史上3番目の長さの黒潮大蛇行になっています(「黒潮大蛇行が過去3番目の長さに」)今回より長い大蛇行は30年以上前の1981-1984年(約2年7か月)までさかのぼります。

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予測と実際(短期予測)

今回は先週の9月16日から予測した9月22日の予測を検証します。図4上段は、9月16日から予測した9月22日の黒潮の状態です(1日平均)。図4下段は、観測値を取り入れて実際に近いと考えられる9月22日の状態です。

予測は黒潮大蛇行の形がゆがみ過ぎていました。実際の小蛇行は予測よりも東に進んでいます。

Fig4

図4: [上段]9月16日から予測した9月22日の予測値。[下段]観測値を取り入れて推測した9月22日の解析値。矢印は海面近くの流れ(メートル毎秒)、色は海面高度(メートル)。青は八丈島の位置。

  1. [1]2017/7/12号「黒潮流路はどれくらい先まで予測できるのか」でも解説しているように、1ヶ月はある程度の精度をもって予測できる限界に近い長さです。毎月の検証では、限界に挑戦するため1ヶ月先の予測の検証をしています。仮に検証で1ヶ月先の予測が当たっていない部分があっても、たとえば1週間先の予測が外れ続けたという意味ではないことにご注意ください。
  2. [2]2017年8月も1か月に加えて数えてます。気象庁に合わせた数え方です。