まとめ
見通し(長期予測)
海洋予測モデルJCOPE2Mで、約2か月先までの予測を行っています。図2はJCOPE2Mによる水深100メートル[2]での11月1日の水温(色、℃)と流れ(矢印)です。赤色が黒潮の影響を受けた暖かい水温で、青色が親潮の影響を受けた冷たい水温です。親潮の影響を受けている範囲の指標として、水温5°Cに太い黒線を引いています
北海道から東北沖の海は、黒潮続流による暖水や黒潮続流からちぎれた暖水渦(A, B)に影響を受けて水温が高くなっています。
水温5°C線(黒太線)は東北沿岸近く(①)でも沖合(②)でも平年(細い青線)より後退しており、暖水渦の影響で親潮の南下が弱いことを意味しています。一部、渦(孤立した冷水c,d)の形で南下しているのみです。
図3は図2に対応する2019年11月1日から2020年1月7日までの予測をアニメーションにしたものです。暖水渦Aが弱まる徴候があり、予測通りであれば、現在よりは親潮が南に南下しやすくなりそうです。
2019/11/13 追記
日本海を見ると(図2)、水温5度線(黒線)が平年(青線)よりも北にあり、日本海が平年よりも水温が高くなっていることをしめしています。予測でも通常より高い水温が続きます(図3)。
図3: 図2に対応する2019年11月1日から2020年1月7日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。
詳細(短期予測)
より高い水平分解能のモデルJCOPE-T DAで短期予測(約10日先)も行っっています。毎日更新されるJCOPE-T DAの予測は、JAXAが提供を開始した可視化サイトで見ることができます。図の見方は「JAXAと共同で新しい海洋予測を開始」で解説しています。
図4は「1. 人工衛星「ひまわり」観測とJCOPE-T DAを比較するサイト」で親潮付近を見たものです。時間は11月4日17時台(日本時間)の1時間平均で、左が気象衛星「ひまわり8号」による海面水温の観測、右がJCOPE-T-DAによる海面の推定値です。
双方の図で、黒潮続流、親潮、津軽暖流とそれにともなう暖水渦、宗谷暖流、暖水渦Aなどがとらえられています。暖水渦Aによって親潮の南下が抑えられていますが、まわりの隙間を通って一部の冷水が南下している様子(黒点線)も見られます。
図5は11月4日午前9時から11月14日午前9時までの予測のアニメーションです。左が海面、右が水深100mです。右の水深100mの図には、親潮の勢力の範囲の指標として、水温5℃線を黒太線線にしています。JCOPE-T DAは潮の満ち引きも計算しているので、1時間ごとの図でアニメーションにしています。
最新の予測は上記JAXAの可視化サイトでご確認ください。
図5: 2019年11月7日午前9時から11月14日午前9時までの1時間ごとの予測のアニメーション。左が海面、右が水深100m。矢印(ベクトル)が海面の流れの向きと強さ(メートル毎秒)。色が海面水温(℃)。温度の等温線も2℃ごとに白色で加えてある。水深100mの右の図には親潮の勢力の指標として水温5℃の等温線も黒太線で加えている。クリックして操作してください。全画面表示にしたり、途中で停止したりできます。
黒潮親潮ウォッチでは、親潮の現状について月に一回程度お知らせします。親潮に関する解説一覧はこちらです。 JCOPE-T-DAによる短期予測はJAXAのサイトで見ることができます。 4日毎に更新されるJCOPE2Mによる親潮の長期解析・予測図はJCOPE のweb pageで見られます。親潮関係の図の見方は2017年1月18日号と2017年2月1日号で解説しています。
- [1]親潮第一分枝・第二分枝については親潮はどんな流路になっているの?で解説しています↩
- [2]天気の影響を受けやすい海面よりも海流の状態を反映していると考えられます。↩