2020年1月19日までの黒潮「長期」予測(11月20日発表)

黒潮大蛇行は、典型的な流路が続いており、終わる徴候は無く、年を越えて継続すると予測しています。

高分解能予測JCOPE-T DAの開始にともない、

を行っています。

ここでは来年1月19日までのJCOPE2Mによる長期予測を解説します。長期予測では、黒潮大蛇行の予測がテーマです。

予測

図1は11月15日の状態の推測値、図2・3は12月19日・2020年1月19日の予測です。東海沖の典型的な黒潮大蛇行が続いています。典型的な黒潮大蛇行には(1)蛇行が大きい(2)紀伊半島・潮岬での離岸(3)八丈島の北を流れるといった特徴があります。

蛇行が大きいというのは北緯32度以南まで蛇行するというのが目安です[1]。流れを見ると、北緯32度を越えて黒潮が大きく蛇行しています(A)。予測でも大きな蛇行がまだ続きます。

黒潮は潮岬で離岸しています(B)。串本と浦神の日平均潮位差(気象庁)も小さいままであることから、離岸が継続していることがわかります[2]。予測でも潮岬での離岸は継続すると予測しています。

黒潮は八丈島の北を通過する流路が続くと予測しています(C)[3]。八丈島の南を流れる流路が長期化、つまり大蛇行を作る反時計回りの渦が八丈島を越えて東に移動すれば、黒潮大蛇行が終わりに向かうことも考えられますが、いまのところ予測されていません。むしろ、西への移動を予測しているようです。

四国・室戸岬で離岸が続きます。小さな蛇行の通過によって、足摺岬では接岸と離岸が繰り返されそうです。

反時計回りの渦(D)が西に移動中です(図1~3)。これが九州南東に小蛇行を作るとすれば、これが次の大きな変化につながるかもしれません。

図4は、11月15日から2020年1月19日までの予測をアニメーションにしたものです。

Fig1

図1: 2019年11月15日の推測値。矢印(ベクトル)は海面近くの流れの向き(メートル毎秒, 長いほど速い流れ)、色は海面高度(メートル, 相対値)。赤丸()が八丈島の位置。海面高度が低いところは海面水温が低いおおまかな関係があります。

 

Fig2

図2: 図1に同じ。ただし2019年12月19日の予測値。

 

Fig3

図3: 図1に同じ。ただし2020年1月19日の予測値。

 


図4: 2019年11月15日から2020年1月19日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

黒潮大蛇行を作る渦の強さ

図5は、黒潮大蛇行を作る冷水渦の強さの指標です[4]。黒太線が現在の推定値で、8月になってから弱くなりましたが、9月に入ってからは強さを回復しています。先週からは予測どおり(点線)、ほぼ横ばいでした。最新の予測では(赤線)、これから弱化する予測になっていますが、まだ十分に高い値が保たれます。先週の予測(黒点線)よりは上方修正です。黒潮大蛇行はまだ長期に続きそうです。

Fig5

図5: JCOPE2Mで推定と予測した冷水面積(東海沖水深1000mで水温3℃以下の海域の面積)の1日ごとの時系列。黒潮大蛇行を作る冷水渦の強さの指標。単位は104平方キロメートル。黒線は観測を取り入れつつ推定した値。赤線が最新の予測で、青線が一つ前、黒点線が2つ前の予測(先週の予測)。


  1. [1]海上保安庁の用語の説明参照。http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/KAIYO/qboc/exp/yougo.html
  2. [2]串本・浦神潮位差については、2016/4/1号「潮岬への黒潮接岸判定法は?: 串本・浦神の潮位差」で解説したように、紀伊半島・潮岬で黒潮が接岸→潮位差大黒潮が離岸→潮位差小という関係があります。過去の串本・浦神潮位差の解説一覧はこちら
  3. [3]東京大学大気海洋研究所の「潮位データを用いた黒潮モニタリング」のグラフで見ると、潮位が高い値を保っており、黒潮が八丈島の北を流れていることを示唆しています。八丈島の潮位については、「黒潮が八丈島の南を流れているのをどうやって観測で確認するの?」で解説しています。八丈島の潮位の持つ意味は、解説「黒潮大蛇行が終わる時: 2005年の場合」でもとりあげています。
  4. [4]図の見方は「深海から黒潮大蛇行のこれからを予測する」を参照


JCOPE2Mは4日毎に更新を行っています(解説参照)。JCOPE2Mの他の予測図についてはJCOPE のweb pageでご参照ください。図の見方は連載: JCOPE2解析・予測画像の見方で解説しています。