黒潮大蛇行は、典型的な流路が続いており、終わる徴候は無く、まだ継続すると予測しています。期間が史上2番目の長さの黒潮大蛇行になっています。 |
高分解能予測JCOPE-T DAの開始にともない、
- JCOPE-T DAによる短期予測(10日先)
- JCOPE2Mによる長期予測(2か月先)
を行っています。
ここでは5月6日までのJCOPE2Mによる長期予測を解説します。長期予測では、黒潮大蛇行の予測がテーマです。
予測
図1は2020年3月5日の状態の推測値、図2・3は4月14日・5月14日の予測です。黒潮大蛇行の期間は2年7か月が過ぎ、記録が確かな1960年代後半以降の史上2番目の長さの黒潮大蛇行(1981-84年, 2年7か月)の期間を超えました(「黒潮大蛇行の歴史」参照)。
東海沖の典型的な黒潮大蛇行が続いています。典型的な黒潮大蛇行には(1)蛇行が大きい、(2)紀伊半島・潮岬での離岸、(3)八丈島の北を流れるといった特徴があります。
蛇行が大きいというのは北緯32度以南まで蛇行するというのが目安です[1]。流れを見ると、北緯32度を越えて黒潮が大きく蛇行しています(A)。予測でも大きな蛇行がまだ続きます。
黒潮は潮岬で離岸しています(B)。串本と浦神の日平均潮位差(気象庁)も小さいままであることから、離岸が継続していることがわかります[2]。予測でも潮岬での離岸は継続すると予測しています。
黒潮は八丈島の北を通過する流路が続くと予測しています(C)[3]。八丈島の南を流れる流路が長期化、つまり大蛇行を作る反時計回りの渦が八丈島を越えて東に移動すれば、黒潮大蛇行が終わりに向かうことも考えられますが、いまのところ予測されていません。
四国・室戸岬で離岸が続きます。小さな蛇行の通過によって、足摺岬では接岸と離岸が繰り返されそうです。
九州南東に小蛇行が発達すると予測しています(D, 図1~3)。小蛇行の影響で黒潮大蛇行が一時的に不安定になる可能性があります(図3)。
図4は、2020年3月5日から5月14日までの予測をアニメーションにしたものです。
図4: 2020年3月5日から5月14日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。
黒潮大蛇行を作る渦の強さ
図5は、黒潮大蛇行を作る冷水渦の強さの指標です[4]。東海沖水深1000mの冷水の面積の指標を3℃以下から、3.3℃以下に変更しています。
黒太線が現在の推定値で、昨年8月になってから弱くなりましたが、9月以降は強さを回復しています。最新の予測では(赤線)、前回(黒点線)同様、今後1か月はほぼ横ばいを予測しています。その後、昨年8月程度まで弱まる可能性がありますが、まだ十分に高い値のため、黒潮大蛇行は続きそうです。
- [1]海上保安庁の用語の説明参照。http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/KAIYO/qboc/exp/yougo.html↩
- [2]串本・浦神潮位差については、2016/4/1号「潮岬への黒潮接岸判定法は?: 串本・浦神の潮位差」で解説したように、紀伊半島・潮岬で黒潮が接岸→潮位差大、黒潮が離岸→潮位差小という関係があります。過去の串本・浦神潮位差の解説一覧はこちら。↩
- [3]東京大学大気海洋研究所の「潮位データを用いた黒潮モニタリング」のグラフで見ると、潮位が高い位置を保っており、黒潮が八丈島の北を流れていることを示唆しています。八丈島の潮位については、「黒潮が八丈島の南を流れているのをどうやって観測で確認するの?」で解説しています。八丈島の潮位の持つ意味は、解説「黒潮大蛇行が終わる時: 2005年の場合」でもとりあげています。↩
- [4]図の見方は「深海から黒潮大蛇行のこれからを予測する」を参照↩
JCOPE2Mは4日毎に更新を行っています(解説参照)。JCOPE2Mの他の予測図についてはJCOPE のweb pageでご参照ください。図の見方は連載: JCOPE2解析・予測画像の見方で解説しています。