黒潮と6月の梅雨の関係は?

今、6月は梅雨の真っ最中。梅雨の降水分布にも黒潮が関係しています。図1は、6月の平均降水量(上段, 1998-2014年平均, ※1 )と6月の平均海面水温(下段, 1998-2014年平均)を比較したものです。この図から沖縄西から九州南の黒潮が流れているため海面温度の高い所(図1下段)と、降水が多い所(図1 上段)が一致していることがわかります。これは偶然の一致ではなく、高い海面温度のため大気の対流が活発になることが降水量が多い理由であることがわかっています。このような関係は1年のなかで6月が最もはっきりしています。それは梅雨前線帯が近くにあること、また、6月は黒潮上にはっきりした海面温度の高いピークがあること(※2)が原因です。

ただし、日々の天気を見ても黒潮上で雨が多いことがはっきり見えるわけではありません。日々の降水の分布は、梅雨前線帯や低気圧の位置で決まります。その中で黒潮上にさしかかった部分が、黒潮の高い水温に刺激を受けて、いくらか周りよりも雨が多くなります。これらを長期間かき集めて平均すると図1のような 分布が浮かび上がるのです。このような隠れた海流と降水の関係は近年活発に研究されています(※3)。

※1 降水量分布は、熱帯降雨観測衛星TRMM(トリム)・静止気象衛星赤外降水量分布・地上雨量計等の組み合わせによる月平均降雨から作成しました。このうち、TRMMは日米の共同プロジェクトとして開発され、1997年に打ち上げられた人工衛星です。当初の目標寿命は約3年とされていましたが、それを大幅に超えた17年間も貴重なデータを送ってくれました。今週6月16日に大気圏に突入し、その生涯を終えました。

※2 梅雨後期の7月には様子が異なってきます。これについてはまたの機会に解説します。
(2016/7/10 追記: 7月の梅雨後期に関しては2016/07/08号「豪雨の鍵をにぎる東シナ海」で解説しました。

※3 黒潮蛇行と雪の関係については2015年2月20日号で解説しています。

参照文献
この解説記事は以下の論文を参照しています。
Sasaki, Y. N., S. Minobe, T. Asai, and M. Inatsu, 2012: Influence of the Kuroshio in the East China Sea on the Early Summer (Baiu) Rain. J. Clim., 25, 6627-6645. doi:10.1175/JCLI-D-11-00727.1

 

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図1:上段] 1998-2014年の6月の平均降水量(一日あたりミリメーター)。3B43プロダクト(熱帯降雨観測衛星TRMM(トリム)・静止気象衛星赤外降水量分布・地上雨量計等の組み合わせによる月平均降雨)をハワイ大学IPRC-APDRCより取得した。 [下段] 1998-2014年の6月の平均海面水温(ºC)。JCOPE2再解析より作成。