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海洋観測研究センター

大気海洋セミナー

第176回横須賀大気海洋セミナー

日時
3月16日(火) 14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
村田 昌彦 (GOORC)
タイトル
海洋CO2測定の現状と課題 ー地球環境問題としての海洋炭素循環ー
要旨
海洋は大気中に放出された人為起源CO2の約25%から30%を吸収しているとされている。この推定は最近のIPCCの報告書でも述べられているものであるが、放出された CO2 の行方が判らないという“ミッシングシンク”が問題となっていた1980年代と比べると隔世の感がする。1990年代以降、海洋CO2の高精度観測が実施されてきたことが、この確度の高い見積もりに繋がっている。しかしながら、すべての課題が解決したわけでもなく、新たな課題も提出されている。本セミナーでは、地球環境問題の視点から、海洋CO2研究の現状と課題を紹介する。

第175回横須賀大気海洋セミナー

日時
3月2日(火) 15:00~16:00
場所
ZOOM
発表者
増田 周平 (GOORC)
タイトル
10年スケールの全球海面水位変動に関する研究
要旨
全球海面水位は太陽活動の11年周期に似た変動を持っていることが指摘されている。Shaviv(2008)はこれを短波放射の変化にともなう海水の熱膨張で説明しようとしたが、定量的に説明できなかった。近年、リモートセンシングデータやアルゴフロートデータなどを用いて全球海面水位の長期トレンドの要因のデコンポジットが進んでいる。これらのデータを用いて、10年スケール変動の要因を探った。

第174回横須賀大気海洋セミナー

日時
2月16日(火) 14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
井上 龍一郎 (GOORC)
タイトル
黒潮再循環域でのBGCフロート観測
要旨
黒潮再循環域での早春季の混合層再成層化過程とそれに伴う生物生産過程を理解することを目的に、2018年1月から4月にかけて、船舶・フロート・水中グライダーによるマルチプラットフォーム観測を行った。本発表では、BGCフロート観測を中心にこれまでに得られた結果を紹介する。

第173回横須賀大気海洋セミナー

日時
2月2日(火) 14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
熊本 雄一郎 (GOORC)
タイトル
海洋循環のトレーサとしての放射性セシウム_過去、現在、未来
要旨
放射性セシウム(134Csと137Cs)は、人類の核エネルギー利用によって生成する人工放射性核種である。 放射性セシウムは半減期が長いために環境中に比較的長く留まり、健康への影響が最も懸念される核種のひとつである。その一方で、セシウムは水に溶けやすいという化学的な性質があるため、 水文学、海洋循環研究のトレーサとして利用されてきた。発表では、海洋循環のトレーサとして放射性セシウムを用いた研究の、(1)福島原発事故以前のレビュー(2)福島原発事故から10年間の成果(3)今後の研究展開、について述べる。

第172回横須賀大気海洋セミナー

日時
1月26日(火) 14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
濱名 実 (GOORC)
タイトル
比色法による海水pH測定装置の測定精度について
要旨
比色法を用いた海水のpH測定は高精度であることが知られており、過去のWOCE REVISIT航海においても実施されてきた。近年購入した比色式のpH測定装置について、測定シーケンス等の調整を行った結果を紹介する。
また、今年度予定されていたpHの国際比較実験について紹介する。

第171回横須賀大気海洋セミナー

日時
1月19日(火) 14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
杉浦 望実 (GOORC)
タイトル
シグネチャ法に基づく海洋プロファイルデータの分類
要旨
Argoによって観測された海洋プロファイルデータを形状の特徴に基づいて分類することを試みた。まず、温度・塩分・圧力からなるデータ系列をシグネチャと呼ばれる特徴量に変換し、次に、その特徴量に対してK-means法によるクラスタリングを施した。この方法により、主な海流や水塊を適切に分類できるように思われる。本検討で用いたシグネチャというのは、反復積分という一連のテンソルの集まりのことで、多次元データ系列を効率的に表現することができる。従って、この例に限らず、時系列解析を始めとする多次元データ系列の分析への幅広い応用が期待できる。

第170回横須賀大気海洋セミナー

日時
12月22日(火) 14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
細田 滋毅 (GOORC)
タイトル
北太平洋でのDeep Argo観測
要旨
北太平洋は、大西洋北部や南極海で沈み込む深層循環の湧昇域であり、深層の貯熱量や熱・淡水輸送量の変動が、長期的な気候変動に大きく影響すると考えられる。これまで、GO-SHIP等の観測船による高精度観測によって、底層昇温や貯熱量、熱輸送量の変動が推定、精緻な評価がなされてきた。一方で、2015年に全球を約1200台の深海型フロート(Deep Argoフロート)でカバーするDeep Argo観測の実施案が提出され、OceanObs’19でもその全球展開に向けたプランに示されたような、新たな全球観測が始まっている。Deep Argoフロートというツールによって、これまで困難であった深層海洋循環や熱・淡水輸送の3次元的描像やその時空間的変動が明らかになってくると思われる。JAMSTECでも、これまで60台のDeep Argoフロート(Deep NINJA、Deep APEX)を南大洋や北太平洋、インド洋に展開し、技術的な課題を徐々に解決しつつデータ収集を行っている。北西太平洋でも、2017年頃からフロートの投入を開始し現在10台程度稼働しており、水温や塩分、一部溶存酸素データの取得や、フロートという特性を生かした漂流位置から推定する深層流の計測も可能となってきた。今回の発表では、Deep Argoの最近の動向を紹介しつつ、北西太平洋に展開されたDeep Argoフロートから得られた各種データを示し、その有用性について議論したい。

第169回横須賀大気海洋セミナー

日時
12月8日(火) 14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
勝又 勝郎 (GOORC)
タイトル
インド洋子午面循環はどのように閉じているか
要旨
インド洋を南北・東西に横切る 10 の船舶観測線に沿って CTD によって測られた温度・塩分および LADCP によって測られた水平流速のデータを集めた。このデータから内部波定常スペクトルを仮定したパラメタリゼーションによって乱流運動エネルギー拡散および鉛直混合係数を推定した。後者は観測点の海底地形および 10 から 80 日前の観測点上を吹く風によって生じる近慣性周期内部波エネルギーと相関を示した。この相関を用いて、全インド洋における鉛直混合のマップを作製した。それを等密度面上で積分することによって鉛直混合が閉じるインド洋子午面循環を推定した。以前同様の計算を行った Huussen et al. (2012)に新しいデータを加え海上風の効果を追加したにもかかわらず彼らの結論は変わらなかった。すなわち内部波砕波によって閉じられる子午面循環は観測・OGCM によって推定されるそれより弱すぎる。その原因として(1) 観測点が少なすぎて強乱流イベントを捉えられていない (2) パラメタリゼーションが表現できない海底近くの混合過程 (3) 赤道域の混合の三つが挙げられる。

第168回横須賀大気海洋セミナー

日時
12月1日(火) 14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
金子 仁 (むつ研究所)
タイトル
これまでの研究紹介とむつ研究所での海洋短波レーダー流速データを用いた研究の展望
要旨
むつ研究所赴任前までに行ってきた乱流鉛直混合強度、硝酸塩乱流鉛直フラックスの定量評価などの研究の概観とともに、むつ研究所で展開している海洋短波レーダーによって蓄積された表層流速データを用いた解析の例を紹介する。津軽海峡から流出した津軽暖流の季節変動(ジャイアーモードと沿岸モード)に対する暖流ジェットの相対渦度の寄与について Kubokawa (1991) の渦度前線モデルに基づくモード移行条件を検証した結果について報告する。

第167回横須賀大気海洋セミナー

日時
11月24日(火) 14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
重光 雅仁 (GOORC)
タイトル
Determining the distribution of fluorescent organic matter in the Indian Ocean using in situ fluorometry
要旨
In order to determine the behavior of marine fluorescent organic matter (FOM) using high-resolution spatial data, in situ fluorometers have been used in the open ocean. In this study, we measured FOM during the Global Ocean Ship-based Hydrographic Investigations Program (GO-SHIP) expedition from early December 2019 to early February 2020, using an in situ fluorometer at 148 stations along the two meridional transects (at ~80°E and ~57°E) in the Indian Ocean, covering latitudinal ranges from ~6°N to ~20°S and ~30°S to ~65°S, respectively. The FOM data obtained from the fluorometer were corrected for known temperature dependence and calibrated using FOM data measured onboard by a benchtop fluorometer. Using the relative water mass proportions estimated from water mass analyses, we determined the intrinsic values of FOM and apparent oxygen utilization (AOU) for each of the 12 water masses observed. We then estimated the basin-scale relationship between the intrinsic FOM and the AOU, as well as the turnover time for FOM in the Indian Ocean (410 ± 19 years) in combination with the microbial respiration rate in the dark ocean (> 200 m). Similar to previous estimates in the global tropical and subtropical ocean, the FOM turnover time obtained is of the same order of magnitude as the circulation age of the Indian Ocean, indicating that the FOM is refractory and is a sink for reduced carbon in the dark ocean. The decoupling of FOM and AOU from the basin-scale relationship was also observed in the abyssal waters of the northern Indian Ocean. The local variability may be explained by the effect of sinking organic matter altered by denitrification through the oxygen-deficient zone on enhanced abyssal FOM production relative to oxygen consumption.

第166回横須賀大気海洋セミナー

日時
11月17日(火) 14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
笹岡 晃征 (GOORC)
タイトル
これまでの観測で得られた発色団含有溶存有機物(CDOM)の分布
要旨
発色団含有溶存有機物(CDOM: Chromophoric Dissolved Organic Matter)は可視から紫外域における海水の光学特性に大きな影響を持ち、近年では外洋域の中・深層における生物地球化学過程や循環を究明するためのトレーサーとして注目されている。Nelsonらの先行研究(US CO2/CLIVAR Repeat Hydrography Surveys)によって、太平洋とインド洋ではCDOMと見かけの酸素消費量(AOU: Apparent Oxygen Utilization)の間に正の直線関係にあることが明らかとなり、CDOMが有機物の分解過程において生成することが示された。本セミナーでは、はじめにCDOMとは何か?、重要性、測定方法等を説明し、Nelsonらの先行研究と同様の結果が見られているのか、我々の観測航海から得られた太平洋、インド洋におけるCDOMの分布及び他の水塊成分との関係について紹介する。

第165回横須賀大気海洋セミナー

日時
11月10日(火)14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
安中 さやか (GOORC)
タイトル
クロロフィル亜表層極大の広域分布
要旨
既存のクロロフィルデータを用いた初期解析結果を紹介する(今回は太平洋のみ)。クロロフィル亜表層極大は、南北太平洋の亜熱帯域および西部熱帯域において、1年を通して存在していた。クロロフィル極大より浅いところを中心に、酸素の過飽和が見られ、亜熱帯海域でも新生産があることが示唆された。また、エルニーニョに伴うクロロフィルの変化は、表層と亜表層で逆センスになっており、単純に生物生産が抑制される訳では無いのかもしれない。

第164回横須賀大気海洋セミナー

日時
10月27日(火)14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
小林 大洋 (GOORC)
タイトル
深海用フロート用 CTD センサ計測値にみられる負の圧力依存性を持つ塩分バイアスについて
要旨
深海用フロートによる塩分計測値には、ほぼ例外なく深層ほど低塩を示す、負の圧力依存性を持つ塩分バイアスが含まれている。これはフロート用CTDセンサのパラメータCPcorを設定値よりも小さくすることで解決できることが分かっている。しかし、現行のCPcorは弾性論に基づいて理論的に求められた値であるため、より小さい値が適当である理由が不明であった。
そこで、深海用フロートに搭載のCTDセンサの計測セルを模した二重円筒セルモデルを用いて、水圧下における計測セルの変形を求めた。その結果、内側のガラスセルは外側のポリウレタンセルから水圧より強い応力を受けて、従来の想定よりも半径方向に大きく変形する。このような非等方的な変形の結果、CPcorは現行値よりも小さくなることが分かった。この他、このモデルは観測で明らかになっている塩分バイアスの特徴を説明することができる。さらに、CTDセンサの改良方法についても言及する。

第163回横須賀大気海洋セミナー

日時
10月13日(火)14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
内田 裕 (GOORC)
タイトル
塩分測定のトレーサビリティ
要旨
海水の塩分測定値のトレーサビリティを確保するために、1901年以降、標準海水が用いられている。しかし、標準海水の認証値には、認証に用いた試薬の純度に起因したオフセットが存在するとした研究や、輸送や保管環境で変化するとした研究がある。ここでは、塩分計を用いた比較測定による認証値のオフセットに関する論文(Uchida et al., 2020, https://doi.org/10.1175/JTECH-D-19-0184.1)の内容を中心に、気象庁・JAMSTECで保管している歴史的標準海水(1969年以降)の測定結果や、トレーサビリティ確保に関する今後の戦略を紹介する。

第162回横須賀大気海洋セミナー

日時
9月29日(火)14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
佐藤 佳奈子 (GOORC)
タイトル
アルゴフロートで計測した溶存酸素データの精度の検証
要旨
地球温暖化に伴う海洋酸性化や貧酸素化の地域的な差や進行度合い・炭素循環の変動の実態解明のために、溶存酸素濃度やクロロフィル濃度など生物地球化学項目の広域でかつ継続的なモニタリングの重要性が認識され、その一つの手段として生物地球化学項目を搭載したプロファイリングフロートが展開されてきている。JAMSTECでは複数の生物地球化学センサーを搭載したフロートを主に北太平洋を中心に2017年から投入している。フロートで計測された生物地球化学項目のうち溶存酸素濃度に焦点を当て、その精度および時間ドリフトの量の検証、試みた補正結果について紹介する。

第161回横須賀大気海洋セミナー

日時
9月25日(金)9:30~10:30
場所
ZOOM
発表者
James H. Shirley (JPL)
タイトル
Relevance of Solar System Dynamics for Studies of Planetary Atmospheric Circulations (and other Geophysical Phenomena)
要旨
The orbit-spin coupling hypothesis describes and quantifies an exchange of angular momentum between the “reservoirs” of the orbital motion and the rotational motion of a planet. In this process, the angular momentum of a planetary atmosphere may be intermittently augmented, or diminished, by torques arising due to the putative coupling. We will briefly describe quantitative and qualitative aspects of the physical hypothesis. Results from published studies of the atmospheric circulation of Mars are employed for illustration. Atmospheric global circulation model simulations for Mars reveal that meridional overturning circulations respond in characteristic ways, when the subject planet is gaining and losing orbital angular momentum (with respect to the solar system barycenter, the origin of the solar system inertial frame). The intensification of meridional overturning (or Hadley) circulations thus represents a diagnostic observable. The above approach was employed to successfully forecast the occurrence of a Martian global dust storm in 2018. Spacecraft observations by the Mars Climate Sounder, obtained during the earliest days of the 2018 global dust storm, clearly document the presence of an intensified, regional-scale, meridional overturning circulation at that time. We will briefly review implications for studies of bi-decadal variability in the circulatory motions of the oceans and atmosphere of the Earth.

第160回横須賀大気海洋セミナー

日時
9月15日(火)16:00~17:00
場所
ZOOM
発表者
Qunshu Tang (South China Sea Institute of Oceanology)
タイトル
New applications of the marine multichannel seismic profiling technique-imaging the water finestructure
要旨
The marine multichannel seismic (MCS) imaging technique, conventionally used for studying the Earth’s lithospheric structures, is also a promising approach for detecting various oceanic phenomena ranging from mesoscale to finescale. This novel application is the so-called “Seismic Oceanography”. In this presentation, first, we’d like to introduce the fundamentals of the seismic observation for imaging the water structure. Second, we will talk about a case study showing the finestructure spatiotemporal variation using time-lapse seismic images. The result reveals how a water interface evolves under a critical state of competing environment between diffusive mixing and turbulent mixing. And finally some other applications using SO, such as submesoscale features and internal solitary waves, will be presented briefly as well.

第159回横須賀大気海洋セミナー

日時
9月8日(火)14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
平野 瑞恵(GOORC)
タイトル
アルゴフロート投入計画について
要旨
2000年よりスタートしたアルゴフロートの投入実績報告と計画作成の説明を行い、加えて、コロナ禍による投入計画の影響について報告を行う。

第158回横須賀大気海洋セミナー

日時
9月1日(火)14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
青山 道夫(GOORC)
タイトル
ケイ酸塩測定の比較可能性の向上をリン酸塩および硝酸塩との比較で考える
要旨
現時点でケイ酸塩測定の比較可能性がリン酸塩および硝酸塩と比較するとあまり良くない理由を検討した。また、ケイ酸塩測定の比較可能性の向上をはかるために、あおやまが主導して行っている新しいケイ素標準液の作成実験の現状を報告する。さらに、栄養塩測定の世界的な比較可能性が向上しつつある現在、見えている長期変動(あるのかないのかも含めて)の例を複数紹介する。
参考文献
1.この間の栄養塩標準の国際共同実験報告 下記IOCCPのサイトからdownload可能、2012年以前は気象研究所技術報告(60号、58号、50号)にある
http://www.ioccp.org/images/06Nutrients/IOCCP_JAMSTEC_IC2018report180903protected.pdf
http://www.ioccp.org/index.php/nutrients/2-uncategorised/74-2014-inter-comparison-study-of-certified-reference-material-for-nutrients-in-seawater
https://www.mri-jma.go.jp/Publish/Technical/index_jp.html
2.月刊海洋2020年8月あおやまの総説「世界の栄養塩濃度の比較可能性 : 過去, 現在そして未来」下記の筑波大学のレポジトリからdownload可能
https://tsukuba.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=55283&item_no=1&page_id=13&block_id=83
3.海洋学会 海の研究 総説 「海水標準物質の現状と将来展望 -栄養塩CRMをはじめとして-」村田昌彦1・青山道夫1,2・チョン千香子3・三浦 勉3・藤井武史4・光田 均4・北尾 隆4・笹野大輔5・中野俊也6・永井直樹5・児玉武稔7・葛西広海8・清本容子9・瀬藤 聡7・小埜恒夫7・横川真一朗10・有井康博10・曽根知実10・石川賀子10・芳村 毅11・内田 裕1・田中辰弥10・粥川洋平3・脇田昌英12

第157回横須賀大気海洋セミナー

日時
8月18日(火)14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
川合 義美(GOORC)
タイトル
Heat and salinity transport between the permanent pycnocline and the mixed layer due to the obduction process evaluated from a gridded Argo dataset
アルゴ格子化データセットを用いたオブダクションによる永年密度躍層-混合層間の熱・塩分輸送量の見積り
要旨
It is necessary for air-sea interaction and climate research to evaluate heat and salinity transport between the mixed layer (ML) and the permanent pycnocline and its contribution to the ML properties. The authors have calculated the obduction and subduction rates with the Eulerian definition using a 1°-grid Argo dataset and incorporated the obduction rate into the ML budget analysis in order to assess the impact of the entrained permanent pycnocline water on the ML temperature and salinity. We have successfully separated the effect of obduction on the ML from the entrainment of the seasonal pycnocline, and specified the regions where the obduction impact is noticeable. The ML heating rate due to obduction was smaller than ±0.1 K/yr on average over most of the domain, but it was larger than −0.5 K/yr in places around the Circumpolar Current, in the northeastern tropical Pacific, the southwestern tropical Indian Ocean, and the northeastern North Atlantic. The salinizing rate due to obduction exceeded ±0.02 psu/yr in these areas, and in the subarctic North Pacific and the eastern South Pacific. The waters entrained from the permanent pycnocline warm and salinize the ML in the high latitudes due to the dichothermal structure. The method applied in this study also enabled us to assess the residence time and route of obducted and subducted water parcels below the ML. Furthermore, the authors examine the changes of obduction and subduction related with the marine heatwave occurred in the northeastern North Pacific around 2014.

第156回横須賀大気海洋セミナー

日時
8月4日(火)14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
赤澤 文彦(GOORC)
タイトル
Argoデータフロー自働化への道
要旨
PythonによるArgoフロートデータデコーダー開発の経緯説明と状況報告

第155回横須賀大気海洋セミナー

日時
7月7日(火)14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
纐纈 慎也(GOORC)
タイトル
等密度面塩分分布からの海盆スケール流動場診断
要旨
海洋の物質分布には循環の様子が反映されている。等密度面上の物質分布は波動による影響を受けにくく、拡散など一般に必ずしも大きくない効果が反映されている様子を観測することができる。このことを利用し、Argoによる塩分観測から等密度面上の塩分分布と地衡流シアを計算することで拡散の強さを含む流動場の診断を行った。診断された場の海盆毎の比較、その時間的変化について紹介する。

第154回横須賀大気海洋セミナー

日時
6月23日(火)14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
土居 知将(GOORC)
タイトル
BGC-Argo で測定された粒子後方散乱データをESTOCに利用する試み
要旨
長期海洋環境再現データセット(ESTOC)の低次生態系コンポーネントは、動植物プランクトン、栄養塩、デトリタスの関係を窒素に基づく循環プロセスで表した基本パートと、溶存酸素および無機態溶存炭素の循環を表した拡張パートで構成されている。現在のESTOC低次生態系コンポーネントは、植物プランクトン、硝酸態窒素、および溶存酸素に対して観測データを同化することで長期海洋環境を再現したデータセットに仕上げている。海洋表層の炭素や窒素が固定され深層に輸送される生物ポンプは物質循環に重要な役割を果たしている。ESTOCにおいてもデトリタスを導入して生物ポンプを表現している。したがって、海洋内部の物質循環を再現するためは、デトリタスの空間分布、特に鉛直プロファイルをいかに作り上げるかも重要になる。そこで、近年のBGC-Argoを使った観測で蓄積されてきた粒子後方散乱データを利用して、海洋内部の粒子状有機物に見立てたデータセットを作成し、ESTOC低次生態系コンポーネントへ同化してデトリタスの空間分布を改善させることを考えた。具体的な成果はまだ得られていないが、粒子後方散乱データをESTOCに利用しようとする取り組みについて紹介する。

第153回横須賀大気海洋セミナー

日時
6月9日(火)14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
長船 哲史(GOORC)
タイトル
潮汐鉛直拡散スキームを実装したESTOCで再現された深層昇温について
要旨
海洋の表層と深層をつなぐ大規模循環である熱塩循環は、熱や物質の輸送および貯留を通じて、気候を制御していると考えられる。海洋における鉛直混合は、この熱塩循環を駆動する重要な力学機構の一つである。しかし、その実態については未解明な部分が多く、理論・観測・数値実験など、様々な手法を用いて活発に研究が行われている。海洋大循環モデルや気候モデルを使用した数値実験では、鉛直混合の与え方が計算結果に大きく影響を与えることが確かめられており、鉛直混合に関する近年の知見を反映させた鉛直拡散スキームの導入が進んでいる。一方で、データ同化手法を応用した海洋環境再現実験では、鉛直拡散を含む拡散パラメタを制御変数として用いる試みがなされ、観測データと数値モデルのズレを軽減する上で効果的であることが示されている。しかし、データ同化を通じて得られた拡散パラメタが、現実的であるかどうかについては疑問の余地がある。本研究では、新学術領域研究「海洋混合学の創設」の一環として、長期海洋環境再現データセット(ESTOC)の作成に用いられるデータ同化システムに対し、エネルギー論的により信頼性の高い鉛直拡散スキームを実装するなどの改良を施し、長期海洋環境再現実験を行った。得られたデータセットは、大陸間横断型の高精度全層観測から推定されている深層における水温上昇のパターンをよく再現していた。本セミナーでは、主に太平洋に着目して、深層水温上昇に着目した解析結果について紹介する。