
大気海洋セミナー
第321回横須賀大気海洋セミナー
- 日時
- 2月4日(火)10:00~11:00
- 場所
- 海洋科学技術館3Fセミナー室+オンライン(ハイブリッド形式)
- 発表者
- 松本 淳(CCOAR)
- タイトル
- フィリピン西岸における夏の南西モンスーンと台風に関連した降水量について
- 要旨
- フィリピンは西部北太平洋モンスーン気候地域における多くの島嶼からなる最大の陸域である。西部北太平洋はまた、熱帯低気圧(台風)の世界最多発生域にあたっており、年間に26個ほど発生する。フィリピンには年平均で4個ほど上陸し、国別の上陸数では中国に次いで世界2位である。他方で現地気象機関のPASGASAでは、PAR(Philippines Area of Responsibility)という領域を設定し、台風がフィリピンに影響を与える可能性がある領域とみて特に注目して監視をしている。この領域にはいる台風の個数は年21個にもなり、その大半が夏の南西モンスーン季にあたる。台風がフィリピンの北東方にある時には、南西モンスーンに台風に吹き込む風が同方向となり、台風の間接的影響でフィリピンの西岸を中心に大雨をもたらすことがケーススタディで示されている。他方で台風に伴う降水量はフィリピン国内の年平均では35%程とされている。しかしながら、台風の直接及び間接的影響でもたらされるフィリピン西部の降水量がどの程度なのかは明らかになっていない。本報告ではこの点に関して調査した結果を報告する。
第320回横須賀大気海洋セミナー
- 日時
- 1月28日(火)10:00~11:00
- 場所
- 海洋研究棟304セミナー室+オンライン(ハイブリッド形式)
- 発表者
- 木下 武也(CCOAR)
- タイトル
- 大気大循環を3次元に記述する理論を用いた上部対流圏から下部成層圏の物質輸送について
- 要旨
- 上部対流圏から下部成層圏には熱帯域から極域に流れる大気大循環が存在し、主に総観規模スケールの波によって駆動されるが、近年の研究により重力波も大気大循環の構造に大きく寄与することがわかってきた。この大循環と波の関わりは、波と平均流の相互作用に関する理論を用いて調べられ、主に東西平均場の南北断面での理解にとどまっていた。その後、上記理論を3次元に拡張する研究(3次元理論)が行われ、大循環の3次元構造に関する研究が少しずつ進められてきた。
本発表では最新の3次元理論を用いて冬季と夏季の上部対流圏から下部成層圏における大気大循環を調べ、物質輸送と波の関係について調べた結果を報告する。また、3次元理論の今後の展開についても報告する。
第319回横須賀大気海洋セミナー
- 日時
- 1月21日(火)10:00~11:00
- 場所
- 海洋研究棟304セミナー室+オンライン(ハイブリッド形式)
- 発表者
- 杉浦 望実(GOORC)
- タイトル
- 時系列データに基づく非線形システム解析手法の提案
- 要旨
- 本発表では、時系列データに基づく非線形システムの解析手法を提案する。この手法は、時系列データの特徴を効率的に捉えるシグネチャ法と、非線形力学系を線形作用素で記述するクープマン作用素を統合する新たなアプローチに基づいている。
概念実証として、提案手法をローレンツモデルに適用し、シグネチャの打ち切り次数について1次および2次の場合を比較した。その結果、2次のシグネチャを用いることで、より高い予測精度が得られることを確認した。また、クープマン作用素の固有値解析を通じて、システムの安定性や準周期的な振る舞いを具体的に調べることができた。
この手法は、時間遅れ座標を活用することで、観測データが限られる場合でもシステムの挙動を一定程度再構成できるという頑強性を持つ。さらには、カーネル法やデータ同化技術との統合により、海洋気候データや生物化学データなどの多次元複雑系への応用の可能性も考えられる。
第318回横須賀大気海洋セミナー
- 日時
- 1月14日(火)10:00~11:00
- 場所
- 海洋研究棟304セミナー室+オンライン(ハイブリッド形式)
- 発表者
- 藤田 実季子(CCOAR)
- タイトル
- 民間独自基準点データを用いたGNSS可降水量と水蒸気鉛直構造の推定
- 要旨
- 日本のGNSS観測網は国土地理院により運用され(電子基準点、全国1,300点超)、一部の観測点の大気遅延量または可降水量は数値予報へとデータ同化されている。一方で、2019年11月以降、民間企業による測位サービスの高度化を目的とした超多点(全国3,300点超)の独自GNSS観測網の運用が開始された。本研究では、この超稠密GNSSデータを利用し、2021年の九州地方大雨時のGNSS可降水量の詳細分布の解析とトモグラフィ手法を用いた鉛直構造の推定を行った。
対象期間中、九州北部には前線が停滞し熊本県と福岡県で線状降水帯が発生した。周辺のGNSS可降水量は70mmを超え、統計的に極端な可降水量の高値を記録した観測点が限られた地域に存在することがわかった。この地域は湿潤絶対不安定層(MAUL)の出現域と類似しており、トモグラフィによる水蒸気鉛直構造の推定では下層水蒸気の変動のみならず高度2-3km付近の水蒸気量も豊富であった。
※本研究で使用したソフトバンクの独自基準点の後処理解析用データは、「ソフトバンク独自基準点データの宇宙地球科学用途利活用コンソーシアム」の枠組みを通じて、ソフトバンク株式会社および
ALES株式会社より提供を受けたものを使用した。
第317回横須賀大気海洋セミナー
- 日時
- 1月7日(火)10:00~11:00
- 場所
- 海洋研究棟304セミナー室+オンライン(ハイブリッド形式)
- 発表者
- 熊本 雄一郎(GOORC)
- タイトル
- 北太平洋のモード水のトレーサとしての福島事故起源放射性セシウム
- 要旨
- 2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所事故(福島事故)によって北太平洋に放出された放射性セシウムは、西部北太平洋のモード水(亜熱帯モード水と中央モード水)の沈み込みと移流によって、同海域の亜表層に広がった。その結果、福島事故起源の放射性セシウムは、モード水のトレーサとしての動態が議論されてきた。福島事故から約2年を経過した2013年から2021年までの観測結果をまとめ、なにが分かったのか、なにが分かっていないのかをレビューする。
第316回横須賀大気海洋セミナー
- 日時
- 12月17日(火)10:00~11:00
- 場所
- 海洋研究棟304セミナー室+オンライン(ハイブリッド形式)
- 発表者
- 重光 雅仁(GOORC)
- タイトル
- 初期続成過程モデルを用いた海底堆積物中の微生物過程の解析
- 要旨
- 我々がこれまでGO-SHIP航海等で実施してきた溶存有機物や微生物パラメタの観測結果から、堆積物から水柱への物質移動に係る状況証拠が示されてきた。堆積物から水柱への物質移動は海洋内部の生物地球化学的過程に影響するため、正確に理解する必要がある。そのために、堆積物内の複雑な微生物過程を介した物質循環を表現できるモデルが有用である。本発表では、いくつかの海底堆積物内の観測結果を再現できるモデルを用いて、堆積物内微生物過程を解析した結果を報告する。
第315回横須賀大気海洋セミナー
- 日時
- 12月10日(火)10:00~11:00
- 場所
- 海洋研究棟304セミナー室+オンライン(ハイブリッド形式)
- 発表者
- 鈴木 順子(CCOAR)
- タイトル
- YMC-Sumatra2017期間中に観測された力学場とオゾンの短周期変動
- 要旨
- 熱帯域の対流圏界面~下部成層圏では、大気潮汐による力学的変動が存在し、その鉛直混合はオゾン場にも影響することが指摘されている。本研究では、2017年12月にインドネシアにて実施した、YMC-Sumatra2017の観測期間中のオゾン変動について、力学場との関係に注目した解析をおこなった。解析には、ECC オゾンゾンデと現地気象台による3時間ごとのラジオゾンデ観測データをもちいた。
オゾンゾンデ(および付属ラジオゾンデ)観測から得られたオゾンと温位の鉛直プロファイルを比較すると、高度17-27kmにおいて、オゾンと温位は同位相で変動しており、この高度では、鉛直混合によるオゾン変動は、水平移流や光化学反応よりも大きいことがわかった。また現業気象台の高頻度ゾンデデータをもちい、温位と南北流の波動擾乱成分について各高度の時間依存性を調べたところ、温位と南北流では同様の傾向が見られたことから、オゾンの日周期変動が存在していることが分かった。
第314回横須賀大気海洋セミナー
- 日時
- 12月3日(火)10:00~11:00
- 場所
- 海洋研究棟304セミナー室+オンライン(ハイブリッド形式)
- 発表者
- 勝俣 昌己(CCOAR)
- タイトル
- 「みらい」気象レーダーによる雨量(淡水フラックス)推定法検討の現状報告
- 要旨
- 現行の「みらい」気象レーダー(略称MPOL、いわゆる「ドップラーレーダー」)は二重偏波観測機能を持つ。この機能の有力な応用先が雨量(淡水フラックス)推定である。これまで、偏波パラメータの一つであるKDP(偏波間位相差変化率)を、旧来から得られているZH(レーダー反射強度)と組み合わせた降水量推定法を想定して準備を進めてきた。一方で近年、陸上レーダーでは、偏波パラメータ利用で得られるAH(減衰量)を利用した降水量推定が有効であることが指摘されてきた。本セミナーでは、MPOLデータでのAH利用に向けた検討の進捗状況(まだPreliminaryだが)と、そこに至った背景や今後の展望について報告する。
第313回横須賀大気海洋セミナー
- 日時
- 11月26日(火)10:00~11:00
- 場所
- 海洋研究棟304セミナー室+オンライン(ハイブリッド形式)
- 発表者
- 服部 美紀(GOORC)
- タイトル
- 熱帯および南大洋における海洋気象ブイ観測の全球大気大循環モデルにおける予報感度評価
- 要旨
- 個々の観測がモデルを用いた解析や予報の改善にどの程度貢献するのかを知ることは、観測システムを設計する上で重要であり関心が高い。本研究では、アンサンブル予報を使って観測のインパクトを推定するEFSOと呼ばれる手法を用いて、熱帯域と南大洋における海洋気象ブイ観測の大気大循環モデルにおける予報感度を評価した。その結果、熱帯域ではMJOやIODの対流活発期に対応して係留ブイ観測によるインパクトが増加し、南大洋ではストームトラックの活動に伴って漂流ブイ観測のインパクトが増加することが示された。長期間のアンサンブル再解析データとそのEFSO値を利用することで、地域性や季節性を持つ現象に対して個々の観測の予報感度を議論できる可能性を示した。
第312回横須賀大気海洋セミナー
- 日時
- 11月19日(火)10:00~11:00
- 場所
- 海洋研究棟304セミナー室+オンライン(ハイブリッド形式)
- 発表者
- 細田 滋毅(GOORC)
- タイトル
- BGC Argoと気象庁船舶データを用いた北太平洋中層水塊変動特性
- 要旨
- 海洋中深層の循環場や水塊の変動とそのプロセスの理解は、Argo観測網が充実している昨今でも観測データが不十分なために把握・理解されていない状態である。これまで中深層の変動場の解明には、船舶観測データが主に用いられてきたが、Deep ArgoやBGC Argoの展開により、時空間的分布がより明確になることが期待される。
今回北太平洋に着目し、気象庁の船舶定線観測とBGC Argoデータを用いて、中層における塩分と酸素変動性の相関を利用し、その空間分布特性を示した。変動の相関がゼロとなる層は北太平洋西部の塩分極小層と貧酸素層の中間付近に広域にみられた。この層の意味するところはさらに解析が必要であるが、BGCフロートと船舶データの物理・地球化学変量解析の活用例となりえる。
第311回横須賀大気海洋セミナー
- 日時
- 11月12日(火)10:00~11:00
- 場所
- 海洋研究棟304セミナー室+オンライン(ハイブリッド形式)
- 発表者
- Hou-Sheng Cheng(IO-NTU/JAMSTEC)
- タイトル
- Low-frequency ocean gravity waves triggered by tropical cyclones via seafloor distributed acoustic sensing
- 要旨
- Infragravity (IG) and internal wave propagations reveal ocean dynamics and energy transfer within marine environments. However, the nonlinear interactions between low-frequency gravity wave dynamics and extreme weather conditions across varying topographies still need to be explored. This study investigates the influence of tropical cyclone (TC) Lan, which approached nearly parallel to the cable, on the propagation of IG and internal waves recorded by a distributed acoustic sensing (DAS) cable off Cape Muroto, Japan. Our observations reveal distinct wave behaviors across different TC Lan stages and topographic features, and we compared the spectrogram of DAS results with the spectrogram of nearby absolute pressure gauge. We apply the frequency-wavenumber analysis to the DAS data, providing the landward and seaward propagating phase velocities of these low-frequency gravity waves along the Muroto cables over time. The approximate phase velocities of IG waves are estimated to be between 50-120 m/s in the frequency band of 3 and 30 mHz and are associated with TC Lan. Internal waves (0.1-0.8 mHz), characterized by long wavelengths (0.125-6 km) and low propagation speeds (~10 60 cm/s), exhibit localized and stratified patterns influenced by both topography and the presence of TC Lan, particularly from seamounts to continental slopes. Both IG and internal wave activities show periodic features modulated by tidal currents during the passage of TC Lan near the seamount region. Our research enhances our understanding of deep ocean-atmosphere interactions with various topographic features during the TC. It demonstrates the effectiveness of low-frequency ocean gravity wave monitoring using the DAS system.
第310回横須賀大気海洋セミナー
- 日時
- 11月5日(火)10:00~11:00
- 場所
- 海洋研究棟304セミナー室+オンライン(ハイブリッド形式)
- 発表者
- 清木 亜矢子(CCOAR)
- タイトル
- 2024年7月の熱帯西部北太平洋域における季節内振動と大気海洋相互作用現象~MR24-04航海速報~
- 要旨
- 2024年6月下旬から7月下旬にかけて、熱帯西部北太平洋において研究船みらいを含む集中観測が行われた。IOP中には、ターゲットの1つである北半球夏季季節内振動(BSISO)が発生し、その発達と海洋との相互作用を捉えることができた。
今回、対流抑制期から活発期への転換期において強い降水がみられ、海洋混合層が急激に浅くなった。しかし、まだ大気対流自体は組織化していなかったため日射は減らず風も強まらなかったことから、海面水温の急上昇を引き起こした。多量の降水は一般的に活発対流と結びつき、日射の減少と風の強化によって海面水温を引き下げるといわれている。今回それとは逆の特徴がみられたことが、その後のBSISO発達にどのように影響したのかを考察する。
第309回横須賀大気海洋セミナー
- 日時
- 10月29日(火)10:00~11:00
- 場所
- 海洋研究棟304セミナー室+オンライン(ハイブリッド形式)
- 発表者
- 趙 寧(CCOAR)
- タイトル
- 2021年寒気吹き出しによるジャワ島に発生した豪雨について
- 要旨
- 2021年1月8日から3月8日の間に、我々は赤道を越える寒気吹き出し(CENS)
とその影響を中心に集中観測(YMC-Cold Surge Observation2021)を行った。観測期間中には、6回のCENS事例が発生し、南半球におけるジャワ島に豪雨をもたらした。本研究は、観測、再解析データ及び大気海洋結合モデルに基づいて、豪雨に対するCENSの役割について、水蒸気の視点から解析を行った。その結果、CENSに伴う北からの水蒸気輸送がジャワ島の豪雨をもたらしたことが明らかとなって、その水蒸気が主にジャワ海、スマトラ島の東沖及び南シナ海の南部におけるCENSによる強化された海面蒸発から供給されたこともわかった。また、大気モデルが豪雨を過小評価した要因を調べるため、大気モデルと大気海洋結合モデルによる海面水温及び結合頻度に関する感度実験を行った。結果によると、高頻度な大気海洋結合モデルが、豪雨に対する重要なCENSによる水蒸気供給を再現できたため、豪雨の再現性も一番高かったことがわかった。
第308回横須賀大気海洋セミナー
- 日時
- 10月22日(火)10:00~11:00
- 場所
- 海洋研究棟304セミナー室+オンライン(ハイブリッド形式)
- 発表者
- 堀井 孝憲(CCOAR)
- タイトル
- 2019年インド洋ダイポール現象の急速な衰退過程について
- 要旨
- 2019年の5月頃に発生した正のインド洋ダイポール現象(2019 pIOD)は、10月頃までに過去30年で最大のレベルに発達し、その後11月から12月にかけて急速に衰退して終息した。本研究は、このIODの急速な衰退過程について、海面熱フラックスと海洋混合層深度の変動に注目して調査した。
2019年はインド洋におけるArgo観測が最も充実した年であり、Argoデータによってこれまでより高い時空間解像度における混合層深度や混合層水温・塩分の観察が可能であった。Argoデータによって、2019年の10月から12月頃にスマトラ・ジャワ島沖500km程度に拡がる浅い混合層の分布が観測された。このとき東部インド洋において、短波放射の増加と潜熱冷却の減少によって正の正味の海面熱フラックスが卓越していた。2019 pIOD終息期の東部インド洋SST負偏差の衰退は、この海面熱フラックスによって主に説明できる。これに加えて本研究では新たに、この時期に存在した通常より浅い混合層が、海面熱フラックスからの加熱に対する水温変化の感度を上げることにより、混合層水温が効果的に上昇していたことを定量化する。
第307回横須賀大気海洋セミナー
- 日時
- 10月15日(火)10:00~11:00
- 場所
- 海洋研究棟304セミナー室+オンライン(ハイブリッド形式)
- 発表者
- 名倉 元樹(CCOAR)
- タイトル
- 赤道インド洋中層上部の東西流の57日周期変動とその非線形性
- 要旨
- 音響式流速計による現場観測データと海洋大循環モデルOFESを用いて、赤道インド洋中央部の上層1000 mの東西流の季節内変動を調べた。過去の研究は、赤道インド洋の東西流の季節内変動は海盆モードなどの線形過程によって生成されると考えていた。これに対し、本研究では非線形過程が主要な役割を果たす証拠を提出する。
観測データとモデル出力を調べたところ、東西流の統計的に有意なスペクトルピークが深さ450~800 mの約57日周期に見られた。この周期の変動の水平構造・東西波長・鉛直波長は静止場における線形赤道ロスビー波と整合的であった。しかし、コヒーレンスの構造から、海面付近で強制された波動が中層へ伝播してきたとは考えづらく、中層で局所的に生成された可能性があることが分かった。振動数空間における東西運動エネルギー解析を行なったところ、57日周期変動のエネルギー源は移流項であった。
移流項を分解したところ、東西流の256日周期振動(半年周期変動のlow frequency tail)と73日周期振動の寄与が主要であった。57日・256日・73日周期振動の振動数・赤道に関する南北対称性・東西波長・鉛直波長を調べたところ、先行研究が提案した赤道波の三波共鳴の条件と矛盾しなかった。これらのことから、赤道インド洋で卓越する半年周期変動がエネルギーを躍層下に運び、非線形過程によって57日周期振動にエネルギーが分配されているのではないかと考えられる。
第306回横須賀大気海洋セミナー
- 日時
- 10月8日(火)10:00~11:00
- 場所
- 海洋研究棟304セミナー室+オンライン(ハイブリッド形式)
- 発表者
- 荻野 慎也 (CCOAR)
- タイトル
- 地球規模の海陸間水循環について
- 要旨
- 海と陸との間の水循環はこれまで、主に水文学的は興味から、海で蒸発した水が陸に輸送され降水となり河川から海に戻る、という海と陸との2領域間の循環として記述・理解されてきた。それに対し近年我々は、海と陸との境界である沿岸域に降水が卓越することから、これまでの水循環像を外洋、沿岸、内陸の3領域で考えることを提唱した。つまり、海で蒸発した水蒸気の半分以上は陸に輸送される前に沿岸で降水として消費される。その沿岸での降水は地球全体の気候形成に一定程度の役割を担っている。このような、水循環を形成、維持するメカニズムはどのようなものか?気候学的な長期平均の描像として、沿岸域で上昇し、外洋の海岸から2,000km付近で下降する1セル型の循環構造が見いだされた。その季節変化や日変化の解析結果も含め紹介する。
第305回横須賀大気海洋セミナー
- 日時
- 10月1日(火)10:00~11:00
- 場所
- 海洋研究棟304セミナー室+オンライン(ハイブリッド形式)
- 発表者
- 横井 覚(GOORC)
- タイトル
- 人工衛星および船舶観測データを用いた全球雲解像気候モデルの降水日周期変動の再現性検証
- 要旨
- 熱帯沿岸域で顕著に見られる降水の日周期変動は、大気大循環やMJO等の大規模擾乱の特性にも大きな影響を及ぼすため、気候モデルでも適切に表現されることが肝要である。本研究では、全球雲解像モデルNICAMによる複数の気候実験が日周期変動をどの程度現実的に再現したか、人工衛星データや再解析データといった一般的なデータに加え、海洋地球研究船「みらい」によるインド洋-太平洋暖水プール上での複数の集中観測データを用いて評価した。その結果、特に沿岸海域での再現性が実験間で異なり、日周期変動に重要な役割を果たす積雲対流起源の冷気外出流を適切に表現するか否かが再現性の鍵であることが示された。本研究は、次世代気候モデルの相互比較研究に船舶特別観測データをどのように役立てるかという課題にも示唆を与えるものとなった。
第304回横須賀大気海洋セミナー
- 日時
- 9月24日(火)10:00~11:00
- 場所
- 海洋研究棟304セミナー室+オンライン(ハイブリッド形式)
- 発表者
- 小林 大洋(GOORC)
- タイトル
- 電極式CTDセンサの電気伝導度計測の理論的枠組みの構築の試み ー計測セルの変形シミュレーションに基づくCTDセンサの塩分計測精度の向上ー
- 要旨
- 深海用フロートDeep NINJAによる塩分観測に負の圧力依存性を持つ塩分バイアスが確認されたことをきっかけとして、深海用フロートに搭載されているSBE41CPとSBE61のCTDセンサの圧力補正項CPcorには適切な値(真値)よりも大きい値が与えられているのではないかと疑われている。
現行のCPcorの値はCTDセンサのガラス製電気伝導度計測セルの等方変形を仮定した理論値である。しかし、このガラス製計測セルは樹脂製の外套で覆われる二重円筒構造をしており、モデル計算によれば圧力下では軸方向よりも半径方向に大きく変形する非等方的なものとなる。そのため実際のCPcorは理論値よりも小さくなると考えられる。しかし、観測結果とは定量的な差異があり、その理論的枠組みの解明は十分ではない。
現在MATと共同して、この塩分バイアスの発生原理の解明、さらにはCTDセンサによる電気伝導度(塩分)計測の理論的な枠組みの構築を目指して、モデル研究を進めている。今回のセミナーでは研究全体の背景と、現在までの結果を簡単に紹介する。
第303回横須賀大気海洋セミナー
- 日時
- 9月10日(火)10:00~11:00
- 場所
- 海洋研究棟304セミナー室+オンライン(ハイブリッド形式)
- 発表者
- 川合 義美(GOORC)
- タイトル
- 2004-2021年における北太平洋表層塩分の時空間変動
- 要旨
- MOAA GPVデータを用いて北太平洋の表層400m以浅の塩分の時空間変動を明らかにした。10年規模のスケールでは海盆の約半分が同期して変動しており残りの半分は反対のシグナルを示し偏差は時計回りに伝播していた。2010年代の前半から後半にかけては中央部で低塩化が起こっており、これは風応力の変化に伴い亜寒帯と亜熱帯の塩分前線がほぼ同期して南北方向に変位したことが主要因と考えられた。
第302回横須賀大気海洋セミナー
- 日時
- 9月3日(火)10:00~11:00
- 場所
- 海洋研究棟304セミナー室+オンライン(ハイブリッド形式)
- 発表者
- 永野 憲(CCOAR)
- タイトル
- 「みらい」MR21-06航海で観測された黒潮続流の冷水渦と風の弱化
- 要旨
- 2021年11月から2022年1月にかけて実施された「みらい」MR21-06観測のデータを用いて、黒潮続流の冷水渦が大気に及ぼす影響を調べた。観測期間中、34.5˚N, 150.0˚E付近に存在した冷水渦に注目して解析を行った結果を報告する。海面からの熱放出の結果、冷水渦の内側と外側で海面水温および混合層水温に顕著な違いは見られないにも関わらず、大気海洋相互作用によると見られる海面風の弱化が観測された。この風の弱化が、渦周辺での乱流熱フラックスを抑制したこともわかった。さらに、衛星による海上風データを調べた結果、渦の中心付近で風が約5m/s以上も低下していた。冷水渦の中心付近に投入された浅海用小型観測フロートMOFは、混合層内の急速な低塩分化を捉えており、船舶観測では捉えられなかった黒潮続流の北からの低温の海水の冷水渦内部への貫入が大気に影響を及ぼしたと考えられる。
第301回横須賀大気海洋セミナー
- 日時
- 8月27日(火)10:00~11:00
- 場所
- 海洋研究棟304セミナー室+オンライン(ハイブリッド形式)
- 発表者
- 内田 裕(GOORC)
- タイトル
- 北太平洋底層の塩分長期変化について
- 要旨
- 海洋深層の塩分変化を検出するには、極めて高い精度で塩分を測定する必要がある。そのために塩分測定用標準海水の認証値のバッチ間オフセットの評価を継続するとともに、KANSOテクノスと共同開発した多項目測定用標準海水を用いてバッチオフセットを検証してきた。その結果、塩分測定用標準海水はわずかに(1年あたり+0.0001 psu)時間ドリフトしていることが示唆された。この時間ドリフトを考慮してバッチオフセットを再評価し、北太平洋底層の塩分の長期変化を再評価した。これまで北太平洋底層で見られた低塩化は標準海水の時間ドリフトに起因する人為的変化の可能性が高く、高塩化している実態を明らかにした。
第300回横須賀大気海洋セミナー
- 日時
- 8月20日(火)10:00~11:00
- 場所
- 海洋研究棟304セミナー室+オンライン(ハイブリッド形式)
- 発表者
- 平野 瑞恵(GOORC)
- タイトル
- Argoフロート展開について
- 要旨
- 2000年から始まったArgoフロートは、現在、CTD搭載のCoreフロートに加え、深海(Deep)や生物地球化学(BGC)フロートも展開しています。本セミナーでは、今年度の実施状況と来年度の計画に加え、フロート展開に関連する手続きや機構内外のフロートユーザーとの連携についても紹介します。
第299回横須賀大気海洋セミナー
- 日時
- 8月13日(火)10:00~11:00
- 場所
- 海洋研究棟304セミナー室+オンライン(ハイブリッド形式)
- 発表者
- 纐纈 慎也(GOORC)
- タイトル
- 北太平洋における月ごと流動場推定と物質循環
- 要旨
- 充実した塩分水温場の観測データから逆推定で月ごとの流動場を求めた。この流動場を用いて北太平洋海洋亜表層以深の物質循環の季節変化が診断できるかを試した結果について紹介する。
第298回横須賀大気海洋セミナー
- 日時
- 7月30日(火)10:00~11:00
- 場所
- 海洋研究棟304セミナー室+オンライン(ハイブリッド形式)
- 発表者
- 田中 辰弥(MWJ、RdPT)
- タイトル
- 「CTD採水システム」における機構内校正の導入 ~水温センサー(SBE3)~
- 要旨
- 「みらい」等に搭載されている「CTD採水システム」は、海洋の基本パラメータ(深度、水温、塩分、溶存酸素、等)を現場で正確かつ高分解能で計測する上で重要な観測機器である。一方で、正確な計測にはメーカー(Sea-Bird Scientific社、米国)による各センサーの定期的な校正(メーカー校正)が必須であるが、近年の諸問題(校正費用の高騰、校正期間の長期化、予算の削減、等)の発生により、年間の校正本数を減らす必要性に迫られている。この状況を打開するため、「メーカー校正」の代替手段としてJAMSTEC内による校正(機構内校正)(例えば、馬場 他 2015)の導入を検討し、水温センサー(SBE3)について2年間の試験を実施したので、その結果を報告する。また、今年度から段階的に「機構内校正」を取り入れ、「メーカー校正」と「機構内校正」を併用する計画であるため、その運用方法について紹介する。
第297回横須賀大気海洋セミナー
- 日時
- 7月23日(火)10:00~11:00
- 場所
- 海洋研究棟304セミナー室+オンライン(ハイブリッド形式)
- 発表者
- 笹岡 晃征(GOORC)
- タイトル
- 最近の航海で得られた有色溶存有機物(CDOM)及び蛍光性溶存有機物(FDOM)の観測結果
- 要旨
- CDOM(Chromophoric Dissolved Organic Matter)及びFDOM(Fluorescent Dissolved Organic Matter)は海洋の溶存態有機物(DOM)の一部として海洋の炭素循環に影響を持ち、近年では外洋域の中深層における生物地球化学過程や循環を究明するためのトレーサーとして注目されている。セミナーでは、2020、2022年の「かいめい」の航海で得られた伊豆・小笠原海溝及び南西諸島海溝の超深海域におけるCDOMとFDOMの鉛直分布に関する結果を主にお話し、さらに2023年秋に実施した「みらい」MR23-07航海のP14N観測線におけるCDOM分布に関する初期結果についても紹介する。
第296回横須賀大気海洋セミナー
- 日時
- 7月16日(火)10:00~11:00
- 場所
- 海洋研究棟304セミナー室+オンライン(ハイブリッド形式)
- 発表者
- 丹下 佑芙子 (GOORC)
- タイトル
- 電位差滴定法(Open Cell法)による高精度全アルカリ度測定の条件検討
- 要旨
- GO-SHIPにより10年単位での全球的な海洋酸性化の状況把握が可能となったが、その反面pH測定値と、全アルカリ度(AT)及び全炭酸から求めたpH計算値が一致しないといった問題点も明らかとなった。その要因はATの場合、有機アルカリ度(Aorg)の過小評価によると考えられ、その判断が求められている。外洋海水試料のAorg測定に向け、その前段階として現在行っている電位差滴定法(Open Cell法)による高精度AT測定の条件検討結果を報告する。
第295回横須賀大気海洋セミナー
- 日時
- 7月9日(火)10:00~11:00
- 場所
- 海洋研究棟304セミナー室+オンライン(ハイブリッド形式)
- 発表者
- 土居 知将(GOORC)
- タイトル
- BGCフロート観測が長期海洋環境再現実験(ESTOC)を用いた状態推定に与える影響の推定
- 要旨
- BGCアルゴフロートアレイは海洋環境観測の重要なツールとして認識され、全球海洋を網羅するための展開、維持管理、データ管理と公開の取り組みが続けられている。地球規模の海洋環境変動をモニターするためには、このような観測網と連携して数値モデルを用いることが有効である。我々は、低次栄養段階生態系モデルと海洋大循環モデルを使って構築した4次元変分データ合成システムにより、BGCアルゴフロートを含む様々な観測データを統合し、海洋物理・生物地球化学的状態の推定を試みている。
このデータ同化システムは、利用可能な海洋観測データを統合し、力学的に矛盾のない海洋状態を推定することができる。ここでは、BGCアルゴによって蓄積された溶存酸素の観測データに着目し、このデータ統合システムを用いて海洋状態推定におけるBGCアルゴ観測データの有効性の評価を試みた。全球海洋の5つの海盆(大西洋、太平洋、インド洋、南大洋、北極海)に対して、海面における酸素の大気交換係数と生物地球化学的活動による酸素消費速度について、最適なモデルパラメータをグリーン関数法により推定することでデータ同化を実現した。得られた最適パラメータに基づく結果を、BGCアルゴ観測の有無で比較することにより、海洋状態推定同化プロダクトにおけるフロート観測データの影響を調べた。こうした各海域の観測値がデータ同化へ与える影響を調べる検討は、BGCアルゴの全球海洋への展開の際の、海域ごとの重要性を評価するのに役立つ可能性を持っている。
第294回横須賀大気海洋セミナー
- 日時
- 7月2日(火)10:00~11:00
- 場所
- 海洋研究棟304セミナー室+オンライン(ハイブリッド形式)
- 発表者
- 長船 哲史 (GOORC)
- タイトル
- PDOと関連した表層貯熱量変動に対する地衡流変動の役割の理解に向けて
- 要旨
- 太平洋十年規模振動(Pacific Decadal Oscillation; 以下PDO)は、北太平洋における季節性を取り除いた海面水温の主要な変動モードである。これまでの多くの研究から、PDOは単一の物理モードではなく、様々なプロセスの組み合わせによって生じていることが分かってきたが、各プロセスがどの程度の寄与を持つかについての理解は十分ではない。特に長いタイムスケールの変動に対する重要性が指摘されている海洋循環変動による影響の理解は残された課題の一つである。以前の研究では、所属グループで開発・運用している長期海洋環境再現実験ESTOCを用いて、外洋におけるPDOの変動中心周辺の表層貯熱量の変動に対するバジェット解析を行い、地衡流偏差や上流域からの水温偏差の流入による寄与の重要性を示した。現在、より詳細なメカニズムの理解に向けた解析を進めている。本発表では、地衡流偏差に着目した解析結果を中心に、途中経過について紹介する。
第293回横須賀大気海洋セミナー
- 日時
- 6月25日(火)10:00~11:00
- 場所
- 海洋研究棟304セミナー室+オンライン(ハイブリッド形式)
- 発表者
- 佐藤 佳奈子(GOORC)
- タイトル
- Argoフロートに搭載した溶存酸素センサーARO-FTの精度の再検証
- 要旨
- Argoフロートには2005年頃から溶存酸素センサーが搭載されるようになり、2024年2月現在稼働中の約3900台の約15%に搭載されている。その多くのフロートにはXylem社製Aanderaa OptodeシリーズまたはSBE-BIRD SCIENTIFIC社製SBEシリーズの光学式溶存酸素センサーが搭載されている。これらのセンサーの解像度は0.2~1micro-mol/L程度であり、応答時間が長いため急激な鉛直勾配を正確にとらえることが難しく遅延品質管理の段階で応答時間の補正が行われている。
一方、JFEアドバンテック株式会社は当機構と共同でフロート搭載型RINKO(ARO-FT)を2011年に開発した。ARO-FTは上述のセンサーに比べて精度・解像度が高く、応答時間が短いことが特徴である。当グループでは当該センサーを搭載したフロートを10数台投入している。当該センサーで計測した溶存酸素の精度について、センサーの時間ドリフトも含めて再評価した結果を発表する。
第292回横須賀大気海洋セミナー
- 日時
- 6月18日(火)10:00~11:00
- 場所
- 海洋研究棟304セミナー室+オンライン(ハイブリッド形式)
- 発表者
- 藤原 弘行(GOORC)
- タイトル
- JAMSTECでの作業実績報告(比色法によるpH高精度測定に向けての検討)
- 要旨
- 気象庁からの2年間の出向任期制職員として、気象庁海洋観測船業務現状及びJAMSTECでの業務内容を簡単に報告し、特に現在取り組んでいる、比色法によるpH高精度測定に向けての現状及び今後の検討内容について紹介する。
第291回横須賀大気海洋セミナー
- 日時
- 6月11日(火)10:00~11:00
- 場所
- 海洋研究棟304セミナー室+オンライン(ハイブリッド形式)
- 発表者
- Jonathan Derot(GOORC)
- タイトル
- Forecast of events linked to global warming and perspectives
- 要旨
- Paul Josef Crutzen Nobel Prize in chemistry in 1995 has democratized the term
“Anthropocene”. According to him, this new geological era began at the end of the 18th
century, corresponding to the start of the industrial revolution. Since 1945, the
Anthropocene seemed to move into a phase of “great acceleration”, where human activities
would cause significant ecosystem changes on a global scale. In this context, aquatic
ecosystems are becoming very important societal issues because they have a direct impact
on human health and economy. Therefore, the restoration and preservation of water quality
are major challenges for our future societies. In this framework, it is crucial to be able to
forecast and understand these extreme events, such as harmful algal bloom (HAB), El Niño
... Although often mistakenly considered as black boxes, Machine Learning (ML) models
have demonstrated their effectiveness over the last decade or so and have become an
indispensable tool for solving this type of environmental problem.
The predictive performance of this type of model is highlighted by several case
studies, in scientific literature. Whether for HAB or the change between ENSO cycles, we
obtained correlation coefficients between 0.7 and 0.8 for forecasts on a scale of several
months. In addition, the signature method allows us to improve these predictive
performances and also to extract information about dominant sequences (time order). In
order to get a better understanding of the interactions between the different
physicochemical parameters that influence these events; we also extracted
complementary information from the ML models via the PDP (Partial Dependence Plots)
and ICE (Individual Conditional Expectation). Moreover, we will take a look at current
analyses that reuse this coupled methodology, with an application to a different type of
aquatic environment (estuary). We will also discuss the future bilateral collaboration
between France and Japan (JAMSTEC, Lorraine University, and INRAE). The aim of this future
research project is to take further advantage of the coupling between ML models and the
signature method, in order to better forecast and understand HABs through the use of
remote sensing data.
第290回横須賀大気海洋セミナー
- 日時
- 6月4日(火)10:00~11:00
- 場所
- 海洋研究棟304セミナー室+オンライン(ハイブリッド形式)
- 発表者
- Tong Wang(GOORC)
- タイトル
- Differences between Lighter and Denser portions of Subtropical Mode Water in Their Volume Variations and Signal Propagations
- 要旨
- The important role of the North Pacific Subtropical Mode Water (STMW) in ocean stratification and circulation has been widely discussed in previous studies. However, these studies mainly considered the STMW volume as a whole. In this seminar, I will talk about the differences between the STMW of different density ranges in their interannual to decadal variations of volume. Based on Argo profiles during 2004–2018, the volume changes of the denser part of STMW (D-STMW) are dominated by the decadal variability associated with the Kuroshio Extension, consistent with the classic view. However, the lighter part of STMW (L-STMW) showed opposite signals to D-STMW in most years and exhibited more interannual variations. The propagation pathways of the thickness and potential vorticity anomalies also differed between L-STMW and D-STMW. An off-streamline signal intrusion occurred around 27°N, 145°E only in L-STMW, which could be explained by eddy transport. We verified this by investigating the high-resolution reanalysis dataset FORA-WNP30.
第289回横須賀大気海洋セミナー
- 日時
- 5月20日(月) 13:30~14:30
- 場所
- 海洋研究棟304セミナー室+オンライン(ハイブリッド形式)
- 発表者
- Baolan Wu (The Hong Kong University of Science and Technology)
- タイトル
- The Ocean Memory in the Pacific modulated by the Atlantic Multidecadal Oscillation
- 要旨
- The ocean is believed to sustain the low frequency climate change through its huge heat content or the “ocean memory”, which is usually saved in the subsurface ocean water mass such as the North Pacific Subtropical Mode Water (STMW). Traditionally, the decadal variability of the mode water has been attributed to the Pacific Decadal Oscillation (PDO). In this talk, I will show that the decadal to multi-decadal variability of STMW is controlled by the Atlantic Multi-Decadal Oscillation (AMO). During an AMO positive phase, the subtropical North Pacific westerlies move northward and induce the poleward shift of the Kuroshio-Oyashio (KOE) front. This will result in the decrease of STMW with warmer temperature, and further influence the Northwestern Pacific upper-ocean heat content and fish catches. The above decadal decrease of STMW will be carried by the thermocline circulation and arrive at the subtropical western Pacific Ocean after ~5 years, causing the decreasing of the sea level and subtropical front/countercurrents to the east of Luzon Strait and moreover affecting the Kuroshio and its interaction with the South China Sea in the Luzon Strait. More interestingly, these temperature anomalies carried by the STMW would eventually re-join the KOE region after one decade later. Once reemerged in the surface ocean, the anomalies that carry the memory of the previous decade may engage with local air-sea feedback to trigger the PDO. Overall, the AMO provides important memory for the climate change in the Pacific Ocean.
第288回横須賀大気海洋セミナー
- 日時
- 5月14日(火) 10:00~11:00
- 場所
- オンライン
- 発表者
- 植木 巌(CCOAR)
- タイトル
- Flux Glider(Air-sea Flux Observation on Wave Glider)開発について
- 要旨
- 熱や運動量のAir-sea Fluxは気象あるいは気候に関する大気海洋相互作用における基本的な変数であるが、海洋上での現場観測は主に船舶や少数の係留ブイに限られているのが現状である。一方、衛星観測や数値モデルと同化を用いた再解析による全球Fluxプロダクトには大きな不確かさが含まれていることが広く指摘されており、その不確かさの評価や改善のためにも現場観測の必要性が強く望まれている。そのような背景の下、我々は自立型海面プラットフォームであるWave Gliderを用いたAir-sea Flux観測の確立を目指して、2025年より関連する技術と運用の開発及び海域試験を行ってきた。海域試験としては相模湾でのWave Glider自体の作動試験から始まり、沖縄近海での単独観測、や「みらい」との同期観測に加え、パラオ共和国にて現地のダイビングボートを用いた投入・揚収を含む4ヶ月程度の単独観測などを実施してきた。また、海域試験ではブイ観測との比較も進めており、結果として、現在ではある程度の不確かさの評価の付した観測結果を示せるようになってきた。
セミナーではこれまでの活動を簡単にまとめると共に、係留ブイとの比較を通したWave Gliderによる観測評価の結果を紹介する。
第287回横須賀大気海洋セミナー
- 日時
- 5月7日(火) 10:00~11:00
- 場所
- オンライン
- 発表者
- 金子 仁 (むつ研究所)
- タイトル
- 下北半島北岸周辺における陸域水の影響
- 要旨
- むつ研究所では、津軽海峡東部を対象海域として、海洋短波レーダーによる表面流速観測や、ブイなどによる水温等の時系列計測、調査船観測、岸壁採水等を通じた海洋環境の把握・変動予測の研究開発を行っている。
これまでの研究により、津軽海峡東部での流動場の季節変動特性、例えば、夏季〜秋季には、海峡から太平洋側へと流出する「津軽暖流」が下北半島沿岸から離れ、海峡中央部を流れること、また「津軽暖流」と下北半島沿岸との間に直径 20〜30km 程度の時計回り循環が形成されること、この循環周辺では高いクロロフィル濃度分布がみられることなどがわかってきた。
「津軽暖流」は黒潮と同様に高温・高塩分の亜熱帯系水の特性を示すため、栄養塩は低いと考えられている。しかし上述の時計回り循環周辺の高濃度クロロフィルは、何らかの局所的な栄養塩供給が存在することを示唆している。またこの循環内では、植物プランクトン組成も「津軽暖流」の流軸付近と異なり、夏季には相対的に珪藻類が多い特異的な環境となっていたことが報告されている (Isada et al. 2017)。
発表者は、科研「マクロ沿岸海洋学」の枠組みの中で、上記循環に供給される栄養塩の起源に注目し、河川水や湧水などの陸域水の分析を行い、近隣漁協傭船等による沿岸観測なども実施することで、実態解明を進めている。本発表ではその成果について報告する。
第286回横須賀大気海洋セミナー
- 日時
- 4月16日(火) 10:00~11:00
- 場所
- オンライン
- 発表者
- 茂木 耕作(CCOAR)
- タイトル
- パラオを拠点とした航空機観測による熱帯中緯度相互作用研究
- 要旨
- JAMSTECでは、熱帯と中緯度の大気が相互に及ぼす影響を解明する目的で、パラオを拠点とした航空機観測を2002年から2010年にかけてのべ19飛行実施した。ドロップゾンデ設備を搭載した航空機を用い、必要な場所と適切なタイミングで観測データを合計142地点で取得した。そのデータを用いて、
- 中緯度から熱帯への影響・日本の梅雨前線上の低気圧が熱帯まで南下し冷たい空気を取り込む渦を形成
- 熱帯の陸から海への影響・ニューギニア島から吹き出す冷たい風が雨雲を長距離北進させる
- 熱帯から中緯度への影響・大気再解析データセットに航空機観測データを追加した影響が可視化され、パラオ周辺と日本周辺の大気の強い連動が確認された
という成果が得られた。
今後の展望として高層気象、海洋観測の多面的観測の充実と長期的継続が日本にとって極めて重要であることを示した。
3/25に開催されたパラオシンポジウムでの録画発表の内容を一部掘り下げて紹介する。
https://youtu.be/oDF-8IcAmog
Googleスライド(コメント記入可能)
https://docs.google.com/presentation/d/1REk-1rtsgLfNEG8TX_6JP3Ucj9IikQWIWq3Xy3coN4w/edit?usp=sharing
第285回横須賀大気海洋セミナー
- 日時
- 4月9日(火) 10:00~11:00
- 場所
- 海洋研究棟304セミナー室+オンライン(ハイブリッド形式)
- 発表者
- 赤澤 文彦(GOORC)
- タイトル
- 衛星データのセキュアな転送と保存
- 要旨
- 衛星データのセキュアな転送と保存に焦点を当てます。VPN接続を使用して東北大学のFTPサーバーからクラウドサーバーにデータを転送し、ローカルサーバーに保存するプロセスを説明します。セキュリティ対策や運用上のポイントについても触れます。