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海洋観測研究センター

大気海洋セミナー

第204回横須賀大気海洋セミナー

日時
3月29日(火) 14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
熊本 雄一郎 (GOORC)
タイトル
北太平洋・ベーリング海底層水のトレーサとしてのクロロフルオロカーボン(フロン)
要旨
南大洋で沈み込んだクロロフルオロカーボン(フロン)が、北太平洋の底層水で検出され始めた。 南大洋では広く測定され、同海域におけるventilationのトレーサとして利用されてきたフロンであるが、北太平洋でのその動態はまだまとめられていない。一方ベーリング海では北太平洋域ではレアな底層水形成が起こっているが、フロンの観測データから日本海のそれと同様に近年停滞している可能性が示唆されている。2023年夏季に計画されている「みらい」WHP-P14N航海でのフロン測定に向けて、上記についてレビューする。

第203回横須賀大気海洋セミナー

日時
3月23日(水)14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
勝俣 昌己(GOORC)
タイトル
「みらい」偏波レーダーで観測されるパラメータ「ZDR」について
要旨
「みらい」偏波気象レーダー(いわゆる「ドップラーレーダー」)で取得される観測パラメータの一つに「反射因子差(ZDR)」がある。これは水平偏波と垂直偏波の反射強度の比で、散乱体(~降水粒子)の形状の縦横比に依存する(が、散乱体の量には依存しない)。このため、例えば雨滴粒径分布の算出等においてZDRは鍵となる観測パラメータである。しかしその要求測定精度はレーダー反射強度(水平偏波の反射強度、降水の分布を求める為に広く用いられている)と一桁異なる為、その値の検証・補正が重要となる。本発表では、主に「みらい」レーダーで得られたZDRについて、その検証と補正の現状、そして今後の利用に向けた展望、等を紹介する。

第202回横須賀大気海洋セミナー

日時
3月15日(火)14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
増田 周平 (GOORC)
タイトル
ペルー沿岸水温と外洋海洋環境との関係に関する研究
要旨
エルニーニョ現象の終着点である赤道海洋東端での海洋変動を把握するため、過去3年間にわたり南半球低緯度域に南北に延びるペルー沿岸の8地点において水温ロガーを設置し、モニタリングを実施してきた。このデータと外洋の海洋観測データセット(EN4)との比較を中心に、沿岸データの応用可能性や、低緯度海洋東岸域での変動特性について報告する。

第201回横須賀大気海洋セミナー

日時
3月8日(火)14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
井上 龍一郎 (GOORC)
タイトル
黒潮の運動エネルギー散逸過程の研究
要旨
季節変動を含めた黒潮の運動エネルギー散逸過程の解明やそれに伴う生物応答の理解を目的として、鹿児島大学を中心に複数の大学・研究機関が参加した研究プロジェクトが現在進行中である。本発表では、このプロジェクトの概要と黒潮がトカラ海峡の急峻な地形の背後で引き起こす乱流混合過程に注目した現場観測と高解像度数値実験の結果を紹介する。特にトカラ海峡の海山における現場観測と数値実験によって示されつつある、黒潮が潮汐周期に同期して渦を生成し海山下流でのエネルギー散逸に影響するという仮説は、これまでにない知見を含み興味深いと考えられる。

第200回横須賀大気海洋セミナー

日時
2月15日(火)14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
赤澤 文彦 (GOORC)
タイトル
AOGEOデータポータルの構築
要旨
JAMSTECが参加しているAOGEOの紹介と研究情報データベースサイトの構築について簡単に紹介します。

第199回横須賀大気海洋セミナー

日時
2月8日(火)14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
杉浦 望実 (GOORC)
タイトル
観測された系列データから知識を引き出す方法
要旨
地球科学などで観測される系列データは、多次元空間内の経路とみなすことができる。経路を効果的に読み取るには、経路内の点の順序や非線形性を忠実に記述することができるシグネチャと呼ばれる数列に変換することが有効である。特に、シグネチャの各項の線形結合を使えば、経路の集合上で定義された任意の非線形関数を近似できる。このことにより、系列データにラベルが付されたデータセットを学習するには、経路のシグネチャとラベルの組に対して線型回帰を適用すればよく、ラベルが非線形関数で決められる場合でも高性能な学習ができる。系列データを活用する機械学習やデータ同化にシグネチャ法を取り入れることで、これまで得られなかった情報が引き出される可能性がある。

第198回横須賀大気海洋セミナー

日時
2月1日(火)14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
青山 道夫(GOORC / 筑波大)
タイトル
栄養塩認証標準物質の開発の歴史とそれを使って最近見えている北太平洋深層での栄養塩などの濃度変化
要旨
1993年のJAMSTECのWOCE航海に始まり、1994年にはJAMSTECのラボで最初のロット#H1を作成し、その後はKANSOで1996年の#H5では500本まで本数を増やした。また#L1は気象研で作成した。これらは、1997年から2001年まで保存実験と気象庁の複数の航海で試験測定を行っていた。その結果標準物質(RM)として作成しているものが、均一性や保存性でRMとして使用可能な水準に達していることを確認できたので2002年のOSMで海水ベースの栄養塩RMは作れると講演した。この2002年には21ロット(ロットMからロットAHまで)を作成し、その一部は2003-2004年のみらいの世界一周航海で使われた。この航海は全ての測点でRMを測定する世界最初の航海となった。並行して開発したRM/CRMを使い2003年から2018年まで2003,2006,2008,2012年のあおやまが主催する国際比較実験と、IOCCP-JAMTEC主催で2015年と2018年に国際共同実験を計6回行った。また比較可能性が相対的に良くないリン酸塩では国際ワークショップを行い、分析化学の観点での技術的な検討と勧告を行っている。ケイ酸塩については、自家製標準を作る時点で使える良い標準が存在しないと結論し、自作することとした。2018年から100回におよぶ作成実験を繰り返して、栄養塩認証物質の認証および海水中のケイ酸塩濃度測定のための新しいSIトレーサブルなケイ素標準液を確立した。確立した新しいケイ素標準液は、来年度KANSOからlot#AAとして世界に供給される。さらに並行して海水中栄養塩の分析マニュアルを2019年に最新版を出版し、世界の海水中栄養塩分析の標準化を進めている。

これらの複数の分野での努力の結果、最近のJAMSTECおよび気象庁の航海で得られる栄養塩濃度の間には、明示的に比較可能性と追跡可能性が確保されている。その結果、北緯47度P1と東経165度線P13の交点付近の深層(海底から1200mまで)ではケイ酸塩と硝酸塩では増加傾向がみられ、その大きさは溶存酸素量の変化の大きさと化学量論的に整合している。(さらに纐纈博士によると、2007年以降は酸素減、硝酸増加の傾向は物理場からの推測と整合的であるとのこと)。準備が間に合えば北緯32度P2と北緯24度3と165度P3との交点における変化傾向も報告する。

第197回横須賀大気海洋セミナー

日時
1月25日(火)14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
服部 美紀(GOORC)
タイトル
北半球冬季におけるボルネオ渦の出現頻度とMJOの位相の関係
要旨
ボルネオ渦は冬季アジアモンスーン期にボルネオ島西岸域に出現する低気圧性循環で、その多くは北東モンスーンに伴うコールドサージが南シナ海から赤道域へ到達する際に発生する。強いコールドサージがボルネオ渦の発達に寄与することが指摘されており、南シナ海周辺域に多くの降水をもたらす。一方、マッデン・ジュリアン振動(MJO)の卓越時にはボルネオ渦が発達しにくいことが報告されているが、位相による違いやコールドサージとの関係は考慮されておらず、詳細な解析はなされていない。
本研究では、MJOの位相による出現頻度や強度の違いについて40年間のデータを用いて調べたところ、MJOの活発期の方がボルネオ渦が強く発達する場合が多くあることが示された。特にphase5ではコールドサージを伴う時・伴わない時共にMJO非活発期よりもボルネオ渦が強く発達することや、phase8ではコールドサージを伴う場合のみボルネオ渦が発達し、最も強くなることなどが示された。これらの背景としてMJOに伴う赤道域の東西風の変動やコールドサージに伴う北風によって形成される水平シアと渦の発達について考察する。

第196回横須賀大気海洋セミナー

日時
1月20日(木)14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
細田 滋毅(GOORC)
タイトル
北太平洋亜熱帯西部における中深層の変動:Argoフロートで推定した鉛直拡散と海底地形との関係
要旨
全球熱塩循環の終端とされる北太平洋では、深層からの海水の湧昇が起こっていると考えられ、潮汐や内部波の砕波に伴う乱流混合がそのメカニズムの主要因とされている。その混合過程が北太平洋における中・深層循環や水塊変質、および経年変動とどのように関わっているかを明らかにするのは目下の課題である。このうち、潮汐や内部波砕波に伴う水塊変質は、ローカルには観測されつつあり、またArgoフロートを用いた海盆規模の鉛直拡散係数(Kv)の推定も行われている。今後海底地形との関係、海域や季節依存性などの詳細な解明に向けて、ArgoMIXなどの全球的な展開として加速していくものと考えられる。
本研究では、新学術領域研究Hotspot2の枠組みにおいてCTDおよび溶存酸素センサー搭載Argoフロート12台の結果を紹介する。これらのフロートは、北緯31度と26度に沿った西部亜熱帯域に、2020年春~夏にかけて投入され、通常より周期の短い1~5日間隔、鉛直解像度2dbar毎の観測を実施している。このデータから、小笠原海嶺などの海底地形の影響を受けていると思われる中深層の変動シグナルを検出した。そこでフロートのCTDデータを用いたstrain成分によるKvを推定したところ、海底地形の有無とKvの大きさとの関係が明確に現れた。また、東から延びる塩分極小層(NPIW)やその下層の貧酸素層(OMZ)に着目すると、観測期間中に塩分、酸素の比較的大きな変動が現れていた(塩分で0.1、酸素で10µmol/kg程度)。ただし、この変動は必ずしも海底地形との関係を示唆するものではなかった。
以上の結果は定性的ではあるものの、フロート観測が中深層での水塊変質、循環像の解明に強力なツールとなることを示すと同時に、さらに他のArgoフロートや、Deep、BGCArgoを活用して、各種変量を海底から海面まで観測することで、海水全体の詳細な水塊変質や混合過程の解析が可能であることも考えられる。

第195回横須賀大気海洋セミナー

日時
1月11日(火)14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
堀井 孝憲(GOORC)
タイトル
Coastal upwelling south of Java observed by surface chlorophyll-a variation and onset of the Indian Ocean Dipole
要旨
Coastal upwelling along the southern coast of Sumatra and Java brings cold and nutrient-rich subsurface water upward and plays an important role in controlling ocean surface heat balance, biogeochemical balance, coastal ecosystem, and local fisheries in the eastern Indian ocean. One of the important roles of this coastal upwelling is to influence the onset and development of the Indian Ocean Dipole (IOD) by supplying cold water to the southeastern tropical Indian Ocean. To make a proxy of the coastal upwelling, we used satellite-based daily Chlorophyll-a data during 2003-2020 and investigated surface chlorophyll-a variation along the southern coast of Java. We focused on the first chlorophyll-a blooming signal in intra-seasonal scale from April to June of each year, which is the onset phase of a positive IOD event. The coastal upwelling signals were observed in most of the positive IOD events that occurred from 2003 to 2020, and the timing and strength of the upwelling signal were significantly correlated with the subsequent peak intensity of the positive IOD. Heat balance diagnosis indicates that after the cold-water upwelling south of Java, westward horizontal surface temperature advection play a role in cooling the SST in the southeastern Indian Ocean and setting a favorable condition for the subsequent IOD development. Accurate understanding of the upwelling and advection of the cold water observed during the IOD onset phase at the intra-seasonal scale may modify our seasonal prediction of the positive IOD.

第194回横須賀大気海洋セミナー

日時
12月21日(火)14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
勝又 勝郎(GOORC)
タイトル
豪州南極海盆の大陸斜面における水平・鉛直混合
要旨
南大洋の混合は全球子午面循環に与える影響という意味で鉛直混合が・渦活動が活発という意味で水平混合が興味深い。2018/19 の水産庁「開洋丸」で間接的にこれらを観測する機会を得た。似たような潮汐と海底地形の粗さをもつインド洋中緯度と比較すると、CTDとLADCP のデータを用いた Gregg-Heyney-Polzin パラメタ化による推定では 乱流運動エネルギー拡散は弱めである。ところが南大洋は成層が弱いので、混合効率一定と仮定して算出した鉛直拡散係数はインド洋と同程度の強さとなる。McDougall & Zika による局所移流拡散モデルを用いて、これらの鉛直拡散係数から水平拡散係数を推定した。流速は箱インバースモデルを用いた。温度極大・塩分極大周りの深度では鉛直拡散と水平拡散が同程度に働くがより深くでは水平拡散が温度・塩分場をよく説明する。ソルトフィンガーの効果と海水の状態方程式の非線形性の効果も議論する。

第193回横須賀大気海洋セミナー

日時
12月14日(火)14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
金子 仁 (MIO)
タイトル
相対渦度分布からみた津軽海峡東部における短波レーダ表面流速と船底ADCP流速の比較
要旨
むつ研究所では、津軽海峡東部を対象海域として海峡・沿岸環境変動研究を行っており、海洋短波レーダによる継続的なモニタリング観測を展開している。現在精度検証のために、船底設置型ドップラー多層流向流速計データとの比較も並行して行っているが、とりわけ秋季に津軽暖流の流軸の南北で両者の差が大きく違う傾向が捉えられている。津軽暖流に伴う顕著な相対渦度が、直接・関節的に表層エクマン境界層の厚みに影響することが一つの原因ではないかという見地から比較を行った結果について紹介する。

第192回横須賀大気海洋セミナー

日時
11月30日(火)14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
重光 雅仁 (GOORC)
タイトル
海洋溶存有機物の難分解性を表現できる新たなモデルの検証
要旨
溶存有機物は海洋中で最大の有機炭素リザバーであり、その炭素量(約700Pg)は大気中二酸化炭素量に匹敵する。そのため、溶存有機物の動態を調べることは重要である。特に、溶存有機物の大半を占めると考えられる難分解性溶存有機物の制御機構は長年議論されている。これまで、難分解性を表現できるモデルとして、溶存有機物をいくつかの画分(易分解性、準易分解性、難分解性など)にわけ、それぞれの画分に対して特異的な従属栄養細菌が異なる速度で分解するという考えに基づくモデルが主流であった。しかし近年、室内実験で確認された希釈仮説(溶存有機物を構成する各化合物の濃度が薄いため、従属栄養細菌が利用できない)を表現できるモデルが提案された。当該モデルでは、従属栄養細菌と溶存有機物の多様性を考慮し、それぞれの有機化合物に対する従属栄養細菌の特異性を仮定しない。本研究では、当該モデルに放射性炭素の計算を導入し、大西洋とインド・太平洋を分ける14ボックスモデルに結合した上で、海盆間の溶存有機物濃度と年齢スペクトルの差がどの程度再現できるのかを検証した。その結果、従属栄養細菌の生理パラメータを調整すると、海盆間の溶存有機物の濃度差や鉛直分布は再現できることがわかった。しかし、海盆間の年齢スペクトル差は再現できなかった。有機物濃度に加え、放射性炭素年代を計算できるようにしたことによって、当該モデルのみでは全海洋の溶存有機物動態を表現できないことが明らかになった。本研究で考慮しているボトムアップ効果に加え、トップダウン効果(従属栄養細菌の捕食)、独立栄養微生物による生産、あるいはその他の非生物的な現象(溶存有機物の凝集、光分解、熱水噴出孔からの供給等)も年齢スペクトルの再現には必要であろう。

第191回横須賀大気海洋セミナー

日時
11月9日(火)14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
笹岡 晃征(GOORC)
タイトル
MR21-04航海初期結果:北太平洋北緯47°測線(P1)におけるCDOMの分布
要旨
MR21-04航海(2021/7/13 ~ 8/26)で取得したCDOM(Chromophoric Dissolved Organic Matter:発色団含有溶存有機物)に関する初期結果を報告する。今回より変更したサンプリング手法の紹介、及びP1測線におけるCDOMの分布や他の水塊パラメータとの関係等についてお話ししたい。

第190回横須賀大気海洋セミナー

日時
10月26日(火)14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
名倉 元樹 (GOORC)
タイトル
ESTOCを用いた南インド洋の鉛直高次モードロスビー波に関する研究
要旨
近年のアルゴフロートによる観測の拡充により、かつては観測がまばらだったインド洋でも海洋内部の変動の研究が可能になった。本研究では、アルゴフロート等の現場観測データを四次元変分法で同化した海洋再解析データであるESTOCを用い、南インド洋の鉛直高次モードロスビー波の伝播について調べた。力学的な変動に注目するため流れ(南北流)の変動を調べた。その結果、南インド洋には表層に捕捉された速い(約7cm/s)西向き伝播成分と、深度約500mに振幅のピークを持つ遅い(約2cm/s)西向き伝播成分が存在することが明らかになった。前者は衛星海面高度計によって検出されていた傾圧第1モードのロスビー波の位相速度と一致する。位相速度の遅い亜表層の南北流変動は全球海洋の中緯度に見られるが、南インド洋で最も振幅が大きい。ESTOCで使用された海洋大循環モデルによる数値実験の結果から、南インド洋の亜表層の変動の主な駆動力はエルニーニョ南方振動に関連した熱帯太平洋の東西風変動であることが明らかになった。また、オーストラリア西岸沖の岸沿いの風や海面熱フラックスの変動も亜表層にピークを持つ成分を駆動し得る。検出された南北流の変動は深さ2000m程度まで達し、モード水や中層水の南北輸送にも影響を与えると予想される。

第189回横須賀大気海洋セミナー

日時
10月19日(火)14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
安中さやか (東北大学、 IACE)
タイトル
海洋表層化学データを集めて、見えてきたもの
要旨
海洋観測データは、物理パラメータに加えて、化学パラメータの蓄積と公開が進みつつある。CO2分圧や栄養塩濃度など、海洋表層化学データを収集して、統計解析することで、太平洋における海盆スケールでの季節・経年変動や、北極海におけるCO2吸収を明らかにしてきた。それらを概観しつつ、今後、取り組めそうな課題を考えたい。

第188回横須賀大気海洋セミナー

日時
10月12日(火)14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
耿 驃 (GOORC)
タイトル
西部北太平洋で観測されたモンスーントラフの微細構造
要旨
ラジオゾンデとドップラーレーダーの集中観測データを用いて、西部北太平洋のモンスーントラフ(MT)とそれに伴うメソスケール降水システム(MCS)の構造と振る舞いを調べた。後に台風となる渦状擾乱がMTの内部に観測され、渦状擾乱周辺大気の熱力学的と気流の構造はMTにトリガーされるMCSによって大幅に変動していた。観測結果は、MTによって引き起こされたMCSの内部プロセスに応じた大規模なサイクロン循環の強化が、台風の発生にとって重要であることを示唆している。

第187回横須賀大気海洋セミナー

日時
10月5日(火)14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
永野 憲 (GOORC)
タイトル
国際黒潮観測プロジェクトCSK-2への取り組み
要旨
1965年〜1977年の国際観測プロジェクトであるCooperative Study of the Kuroshio and Adjacent Regions(CSK)をはじめとし、黒潮と周辺海域に関する研究は、国際的な観測プロジェクトの下で大きく進展してきた。近年、地球温暖化や海ごみ等の問題が社会的に注目され、他の海域に比べ温暖化が急速で海ごみの多い黒潮域では、科学的知見をもとに観測システムの構築を行うことが急務と考えられる。そこで、CSKの後継プロジェクト(CSK-2)として、サイエンスアクションプランを今年4月にIOC/WESTPACの政府間会合に提出し、承認が得られた。この活動は、SDGsやUN Decadeにも貢献することができる。そこで、CSK-2のこれまでの取り組みと今後の予定を紹介したい。

第186回横須賀大気海洋セミナー

日時
9月28日(火)14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
平野 瑞恵 (GOORC)
タイトル
Argoフロートの効率的な展開・運用について
要旨
Argoフロートの稼働年数と稼働密度を考慮した2021年度~2022年度の展開計画およびArgoフロート展開前に実施しているセンサー検定に関連する情報提供を行う。

第185回横須賀大気海洋セミナー

日時
9月21日(火)14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
小林 大洋 (GOORC)
タイトル
深海用フロートで観測された日本東岸の中規模渦の深層構造
要旨
2012年8月に深海試験のために投入された深海用フロートDeep NINJAは、当時実施中のACE-INBOX研究の一環として、同時に投入された4台のアルゴフロートとともに北海道南東沖の高気圧性の中規模渦の観測に資された。これらのデータを用いて、この中規模渦の内部構造、特に深層の構造の再現を試みた。再現結果は必ずしも芳しくはないが、近年の研究レビューとともに紹介する。

第184回横須賀大気海洋セミナー

日時
7月6日(火)14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
茂木 耕作 (DCOP)
タイトル
スマトラ西岸沖における直接観測を用いた海面水温格子点プロダクトの検証
Validation for satellite based sea surface temperature products against in-situ observations off the western coast of Sumatra
要旨
本研究は、GMPE, OIv2, OIv2.1, ECCO2について、スマトラ西岸沖の領域における直接観測に対する精度検証を行った。さらに、高精度が確認されたGMPEを参照値として、OIv2, OIv2.1, ECCO2のRMSDの分布、空間相関、時間相関の特徴を調べた。スマトラブイおよびMR17-08のCTDに対する検証によって、スマトラ西岸沖において、極めて高い精度(RMSD0.2K以下)を示した。OIv2は、大きな負のバイアスによって1-1.5Kの大きなRMSDを示したが、OIv2.1では、大きく改善された(RMSD0.4K以下)。
海大陸周辺の2017年12月平均のSST分布において、スマトラ島西岸、ジャワ島南岸、ボルネオ島南岸のインドネシア内海では、データセット間の分布の違いがかなり大きかった。この特徴は、GMPEのアンサンブルスプレッドの分布と整合的であった。OIv2の大きなRMSDの分布は、高い雲の分布とよく対応していた。OIv2.1における改善においては、推定に使用する衛星データの変更が貢献していたことが示唆された。

This study validated the sea surface temperature (SST) datasets of the Group for High Resolution SST Multi Product Ensemble (GMPE), National Oceanic and Atmospheric Administration (NOAA) Optimal Interpolation (OI) SST version 2 and 2.1 (OIv2 and OIv2.1), and Estimating the Circulation and Climate of the Ocean, Phase II (ECCO2) in the area off the west coast of Sumatra against in-situ observation. Furthermore, the root mean square difference (RMSD) of OIv2, OIv2.1, and ECCO2 were investigated using GMPE, of which its high accuracy (RMSD < 0.2 K against in-situ observations) was confirmed, as a reference. Although OIv2 showed the large RMSD (1-1.5 K) with significant negative bias, OIv2.1 (RMSD < 0.4 K) was remarkably improved.
In the SST distributions averaged for Dec. in 2017, the differences between 4 datasets were significant in the areas off the western coast of Sumatra, southern coast of Java, and Indonesian inland sea. This was consistent with the ensemble spread distribution with GMPE.
The large RMSD of OIv2 corresponded to the high cloud distribution and the change of satellite for the SST estimation was suggested to contribute for the improvement of OIv2.1.

第183回横須賀大気海洋セミナー

日時
6月29日(火)14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
内田 裕 (GOORC)
タイトル
海洋における圧力・水温・塩分の高精度観測のための品質管理の現状と今後
要旨
JAMSTECでは、GO-SHIP等の高精度船舶観測を実施しています。これらの高精度観測で使用するセンサーについては、メーカーによる校正だけではGO-SHIP等で要求される測定精度を確保できない場合があります。今回は、基本的な測定項目である圧力・水温・塩分について、主にJAMSTECで実施している品質管理の現状や問題点を紹介します。また、持続的に高精度データを取得するために必要な検討事項を議論します。

第182回横須賀大気海洋セミナー

日時
6月22日(火)14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
川合 義美 (GOORC)
タイトル
Global mapping of 10-day differences of temperature and salinity around 2000 m depth observed with Argo floats
アルゴフロート観測による2000m付近の水温及び塩分の10日間変動量の全球分布
要旨
In this study, the author examines the variability of the layer around 2000 m depth, which is the “bottom” of the present, dense Argo observation system, using all of available Argo float data. In particular, this study focuses on the difference between two successive observations, that is, nearly 10-day variation, aiming to detect rapid changes, such as effect of developed cyclones or internal tides. Even 1-day sampling is too coarse to resolve near-inertial oscillations, but a large number of samples will highlight areas where the frequency of large changes in a short period is high.

第181回横須賀大気海洋セミナー

日時
6月8日(火)14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
纐纈 慎也 (GOORC)
タイトル
2019年I08Nセクション(MR1904/80°E)で観測された正のダイポールモード下での海洋亜表層変化
要旨
2019年12月にインド洋東部GO-SHIPラインであるI08N(80°E)の観測を行った。GO-SHIP及びその前身のプロジェクトにより提供されている同種の高精度観測としては1995年以来の観測であった。この観測によってとらえられた変化について報告する。1995年9月の観測との比較では、2019年(12月)は熱帯から亜熱帯亜表層等密度面上で強く低塩・低酸素・高栄養塩化している様子が捉えられた。このうち特に熱帯域(5S-5N)の塩分変化については、Argo観測網によって推定された経年変化(月毎平均からの差)と同等の変化を示しており、正のダイポールモードに付随する経年的な変動の影響が強いことが示唆された。一方で、より亜熱帯側(10°S-5°S)の変化の約半分は季節的な変化の影響であることが示唆された。Argo観測網と組み合わせることで、単純ながら、少なくとも塩分変化についてある程度定量的に季節変化、経年変化の区別ができることが分かった。こうした塩分変化の評価から、酸素・栄養塩の変化に対する、経年変化・季節変化の影響の度合いが想像され、観測された大きな溶存物変化のうち、赤道ちかくの変化の大部分は(塩分変動と同様に)正のダイポールイベントに付随したものであると考えられた。

第180回横須賀大気海洋セミナー

日時
5月25日(火)14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
土居 知将 (GOORC)
タイトル
海洋環境再現データセットESTOCを使ったCFCの拡散実験
要旨
全球海洋における溶存物質の分布の形成にも、鉛直方向の混合・拡散の過程が重要な役割を果たす。長期海洋環境再現データセットESTOCは、OMIXプロジェクトを通じて潮汐エネルギー分布に対応した鉛直混合の空間的な変化が考慮できるように改良され、四次元変分データ同化システムによって最適化された。こうして再現された海洋循環場が溶存物質の分布にどう影響するのかを調べるために、鉛直拡散の改良前と後のESTOCを使った数値実験の比較を行った。実験は、人為起源物質の一つであるCFCをトレーサーと見立てた移流拡散数値実験で、観測ベースの大気中CFC濃度の時系列データをモデルの境界条件として与え、海面で吸収されたCFCが海洋循環場によって形成される分布の再現を試みた。CFC濃度の計算結果と海洋観測値との比較を行うことで、新旧海洋循環場の違いの影響を考察する。

第179回横須賀大気海洋セミナー

日時
5月11日(火)14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
長船 哲史 (GOORC)
タイトル
海洋環境再現実験における潮汐由来far-field mixingの鉛直構造の改善に向けた取り組み
要旨
鉛直拡散は、熱塩循環を含む大規模海洋循環や水塊形成に対して重要な役割を果たす。潮汐は、内部領域における鉛直拡散の主要なエネルギー源である。潮汐流が地形にぶつかる際に内部潮汐波が生じ、その砕波によって鉛直拡散が生じる。内部潮汐波の発生源となる地形の近傍で生じるnear-field mixing(NFM)に加え、近年、発生源から遠方に伝播した内部潮汐波が引き起こすfar-field mixing(FFM)の重要性が指摘されている。OMIXプロジェクトでは、潮汐由来のNFMおよびFFMのスキームを実装したOGCMを用いて線形最適化実験を実施し、深層海洋環境の再現に有効であることを示した。本研究では、表中層も含めた全層における再現性のさらなる向上を目指し、新たにFFMの鉛直構造を考慮した線形最適化実験を行った。セミナーでは、本実験の結果を示し、今後の開発方針について議論する。

第178回横須賀大気海洋セミナー

日時
4月20日(火)14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
植木 巌 (GOORC)
タイトル
太平洋暖水プール北部における海洋大気観測
要旨
海洋大気気候変動研究グループでは熱帯太平洋・インド洋における海洋起源の気候変動現象の把握と理解を深めるために船舶と係留ブイを中心とした海洋上層と大気対流圏の観測を進めているが、本セミナーでは熱帯太平洋の暖水プール北部で実施している観測研究についての進捗状況とともに5月末から実施するMR21-03航海の計画について紹介する。

第177回横須賀大気海洋セミナー

日時
4月6日(火)14:00~15:00
場所
ZOOM
発表者
佐藤 佳奈子 (GOORC)
タイトル
Argoの塩分プロファイルの品質の現状
要旨
国際アルゴ計画では、数年前から発生している高塩分ドリフトの問題を認識し、それに対処してきたが、アルゴデータを用いた力学的高度に影響が出ていることが最近明らかとなった。本セミナーでは高塩分ドリフトの概要と現状について紹介し、さらに、再計算したMOAA-GPVと以前のバージョンを比較した初期解析結果について報告する。