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研究者オススメの一冊

【第1回】地球の履歴書

記事

新型コロナウイルス感染拡大防止のために 外出自粛を続けている若者のみなさんへ、いま読んでほしい一冊を海と地球の営みを探究するJAMSTECの研究者たちに聞きました。
46億年の地球の歴史をたどる物語や不確実な自然のしくみを紐解くドラマ。 科学者、技術者を目指したエピソードなど海と地球を探る人々の思いを紹介します。

オススメする人

オススメする人:大河内 直彦 上席研究員 (海洋機能利用部門 部門長)オススメする人:大河内 直彦 上席研究員
海洋機能利用部門 部門長)
 
東京大学大学院博士課程修了。京都大学、北海道大学、米国ウッズホール海洋研究所などを経て、現職。主な研究テーマは海洋における有機化合物の同位体比を規定する要因に関する研究など。著書に講談社科学出版賞受賞した『チェンジング・ブルー 気候変動の謎に迫る』(岩波現代文庫)など。

聞き手:豊福 高志 主任研究員 (海洋科学技術戦略部 部長)聞き手:豊福 高志 主任研究員
(海洋科学技術戦略部 部長)
 
静岡大学大学院博士(理学)取得。主な研究テーマは海洋に住む有孔虫という小さな生物が炭酸カルシウムの殻を構築する過程の解明。2019年度から研究開発の社会連携や広報活動などを担っている。

豊福:みなさん、こんにちは。JAMSTECの豊福といいます。 今回から、「海と地球を語る。」と題して、 JAMSTECの研究者に本の紹介をしてもらう企画を 始めたいと思っています。 それで、さっそくですね。(大河内さんを見て) まず第1回目は、 海洋機能利用部門の大河内さんに お薦めの一冊をご紹介いただきます。大河内さん、こんにちは。

大河内:こんにちは。よろしくお願いします。

豊福:さっそくですが、お薦めの一冊をお持ちいただきました。

大河内:(少し照れながら)今日ご紹介する1冊はですね、 僭越ながら、私自身の本をご紹介したいと思います。

豊福:はい(笑)

科学者が書いた本にしては、わかりやすいじゃないかと(笑)

対談する二人(左:豊福、 右:大河内)

大河内:本のタイトルは『地球の履歴書』。新潮選書から出ております。この本は2015年に出版されたんですけどね。

豊福:ええ。

豊福:すごいですね!

大河内:なんか、売れてるんです、はい(笑)

豊福:はい(笑)

大河内:この『地球の履歴書』を出版する少し前から 本好きのための雑誌で連載を書いていたんです。

豊福:ほう。

大河内:それを、最終的に、本としてまとめたんです。

豊福:うん。

大河内:だから、『地球の履歴書』は、 8つある章が独立した読み物になっています。少しだけご紹介しますと、「第一章 How Deep is the Ocean?」「第二章 謎を解く鍵は海底に落ちていた」、「第三章 海底が見える時代」こんな感じで、ひとつひとつの章が 独立した読み切りみたいになっています。

豊福:今回の「海と地球を語る。」の一冊としては最適ですね。

大河内:ありがとうございます(照れ) 研究者が書いた本と聞くと、 みなさん、ちょっとね。 手に取りにくい、と感じる方も多いと思うんです。

豊福:むずかしいんじゃないかと。

大河内:そうそう、むずかしいことが書いてあるのかなあと。でも、これは、単なる読み物として楽しめる。 小説を読む、ノンフィクションを読む、 そういうつもりで手に取っていただいても楽しめるかなと思います。

豊福:そのあたりが、Amazonで今でも1位だったという、 ちょっと驚くくらいの売れ行きですよね。

大河内:あはっ(照れ) なんでこんなに売れているのか私もわからないんですが、 ある書評サイトで、非常に褒められましてね。 その影響も、大きいのかなあと。

豊福:どんな風に褒められてたんですか?

大河内:科学者が書いた本にしては、わかりやすいじゃないかと(笑)

豊福:わかりやすいじゃないかと(笑)

研究には必ず背景があるんです

本を手に紹介する大河内 部門長
本を手に紹介する大河内

豊福:本にはどんなエピソードが書かれているんですか?

大河内:そうですね。(と、本を手に取りながら) たとえば、第五章は「南極の不思議」というタイトルなのですが、 地球科学を研究しているものにとっては 南極は、重要な場所なんです。

豊福:そうですよね。

大河内:ひとつは、オゾンホール。 オゾンホールが発見されたのは南極ですね。また、南極の氷床を、だいたい3kmくらいの長さの 氷のコアを掘って採ってきてですね、アイスコアと呼びますが。 その氷から、昔の気候変動を読み解く。 南極は、そういった研究がされている場所です。

豊福:ええ。

大河内:そういう地球科学の研究が南極で進められているのですが、 実はアムンゼンが最初に南極点に到達※1したのは たかだか100年くらい前なんです。その時に、アムンゼンは、イギリスのスコット隊と 我先に、と競い合って南極点に到着するんですけれど、

  • 1:1911年

豊福:はいはい。

大河内:そういった探究する人々のドラマも、 私としては一生懸命に書いたんです(笑)

豊福:僕が『地球の履歴書』を読んだ印象では、 大河内さんって、サイエンティストが書く文章というよりは 後ろに隠れているドラマを一生懸命に書かれるので それが好評なのかもしれないですね。

大河内:そうですね(照れ)
数式とか化学式とかを書くと(本が)売れなくなりますから(笑) なぜ、自然や生物の営みが研究の対象になっているのか。 研究には必ず背景があるので、 そこを、ノンフィクションとして書いてみると 実は面白いんじゃないかな、と考えました。

豊福:この『地球の履歴書』を読んでほしい人は、 大人だけじゃなくて、大学生とか。

大河内:うんうん。

豊福:これから海とか、地球の研究をしてみたい、という 若者にも読んでほしいですよね!

大河内:もちろん、そうですね。「本が好きな人が読んで面白いものを書いてください」 と(編集者さんから)言われたので 中学生から大学生まで、 これから地球科学の研究者になりたいと思っている人まで 幅広いみなさんに楽しんでもらおうというつもりで書きました。

豊福:僕もそう思います。(新型コロナウイルス感染拡大防止のため) 今日はテレワーク中にビデオ会議でのインタビューとなりましたが、 ありがとうございました。

大河内:いえいえ。テレワーク中だからこそできることですしね。ご自宅で働いている人、休日も家で過ごされていると思いますが ぜひ、『地球の履歴書』を手に取っていただいて、 海と地球に思いをはせていただけると幸いです。

豊福:そうですね。大河内さん、どうもありがとうございました。

大河内:ありがとうございました。

いま読んで欲しい1冊!

大河内 直彦 上席研究員のオススメ

地球の履歴書
『地球の履歴書』
大河内直彦/著 新潮社

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