新型コロナウイルス感染拡大防止のために外出自粛を続けている若者のみなさんへ、いま読んでほしい一冊を海と地球の営みを探究するJAMSTECの研究者たちに聞きました。
46億年の地球の歴史をたどる物語や不確実な自然のしくみを紐解くドラマ。科学者、技術者を目指したエピソードなど海と地球を探る人々の思いを紹介します。
オススメする人
豊福:みなさん、こんにちは。 JAMSTECの豊福です。今回も、「海と地球を語る。」と題して、JAMSTECの研究者に本の紹介をしていただきます。本日、お薦めの一冊を紹介してくれるのは私の古い友人でもあるJAMSTEC地球環境部門の小栗さんです。小栗さん、こんにちは。
小栗:こんにちは。よろしくお願いします。
豊福:(みんなが外出自粛を頑張っている時期ですから)今回もZoomでお薦めの一冊を紹介していただきたいと思って、お越しいただきました。ありがとうございます。
小栗:なんだか画面越しだと照れますね(笑)
豊福:早速ですが、お薦めの一冊はどんな本でしょうか。
小栗:はい!えーっと。まずは、この本ですね。『台風と闘った観測船』(成山堂書店)ですね。饒村曜さんという方が書かれた本です。
豊福:なるほど。非常に、なんというか、海っぽいですね。どんなことが書いてある本ですか。
小栗:『台風と闘った観測船』というタイトルの通りなんですけれどまだ気象衛星ができる前のお話しです。気象庁は気象観測をするために定点観測船というのを造って海の真ん中でですね、同じ場所、定点を定めて気象を観測していました。その歴史が書かれています。
豊福:なるほど。
小栗:どれだけ大変な事情、つまり、予算的にも厳しいし、もちろん、職業としても大変過酷な仕事です。台風が通ろうが、どんな気象状態になろうが、常に同じ地点にいて、つまり定点で、ずっと天気を観測しなければならない。そういう仕事を世に紹介する非常に貴重な一冊です。
豊福:けっこう厚いですものね。いろいろ書いてあるんでしょうね。
小栗:いろいろ書いてありますよ。(本の)厚さも、このくらいありますね。
豊福:ほう。
小栗:戦前の日本海軍による気象観測から始まり、戦後にGHQの命令によって、この定点観測という仕事が始まるんですけれどその始まりの話です。実際にどういう業務をしていたかあとは、海の上でおこったエピソードもでてきます。洋上に昆虫の大群がいた、とか!
豊福:ああ!実際、我々も海の調査に行くといろんなことが起きますもんね。
小栗:起きますよねぇ(笑)
世の中の役に立つか、立たないか、なんていう次元では考えられない、非常に貴重な仕事をしてきた人たちの 心意気のようなものを感じる一冊です
豊福:ちなみに、どういう方にお薦めでしょうか。
小栗:この本はですねえ。まず、天気に興味がある人にはもちろんお薦めなんですけれど、海のことに興味がある人、それから・・・
豊福:それから?
小栗:これから自然科学を学ぼうという学生たちにお薦めします。
豊福:たしかに。いろんなことが起きますもんね(意味深)
小栗:はい、本当に(笑)(現代の観測船で仕事をする)我々に比べたら当時のみなさんはもっと苦労されたと思います。世の中の役に立つか、立たないかなんていう次元では考えられない、非常に貴重な仕事をしてきた人たちの心意気のようなものを感じる一冊です。
豊福:それは、ぜひ読んでいただきたいですね。今日はもう一冊ご紹介いただけるということですね。
小栗:はい。ええっと。(と、本を手に取り)この本です。カズオ・イシグロさんという作家が書かれた小説で『忘れられた巨人』(早川書房・土屋政雄訳)です。
豊福:有名な、、、あの方ですよね。
小栗:はい、2017年にノーベル文学賞を受賞された、あのカズオ・イシグロさんです。
豊福:また、なんで、おすすめがこの一冊なんでしょうか?
<次回へとつづく>
いま読んで欲しい1冊!
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