2022年4月16日の予測海面水温

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黒潮大蛇行が観測史上最長期間に

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美山 透

JAMSTEC 付加価値情報創生部門
アプリケーションラボ 主任研究員
海洋予測モデルを使った予測や海流変動メカニズムの研究をおこなっている。

黒潮大蛇行とは

黒潮が紀伊半島から東海沖で大きく離岸することを特徴とする黒潮大蛇行が、20178月に始まって、今年3月で48か月目になります。確かな観測がある1965年以来では最長であった1975-1980年の黒潮大蛇行の期間に並んでいます(1)4月以降も継続すると見込まれていることから、今回の黒潮大蛇行は過去最も長い期間となります1)

黒潮大蛇行は黒潮と本州南岸の間に大きな冷水渦(冷水塊)が居座ることによって、黒潮が迂回して流れる現象です(1)。冷水渦がある海域では例年より水温が低下します。一方、冷水渦の北では渦に巻き込まれる形で黒潮の分岐流が流れ込むため、関東・東海沿岸では例年より水温が高くなります。このような海の変化のため、黒潮大蛇行時には、高潮が起こりやすい2)、東京で南岸低気圧による雪が降りやすい3)、関東で蒸し暑い夏になる4)、生態系.・漁が変調を起こすなどの影響があると言われています。

開始 終了 期間
1 1975年8 1980年3 4年8か月
2 1981年11 1984年5 2年7か月
3 1986年12 1988年7 1年8か月
4 1989年12 1990年12 1年1か月
5 2004年7 2005年8 1年2か月
6 2017年8 (継続中) (2022年3月で4年8か月目)

表1: 気象庁が判定した1965年以降の黒潮大蛇行のリスト。開始日、終了日、期間。

図1: 黒潮大蛇行の概念図。

長期化している理由

上記のように黒潮大蛇行は冷水渦が居座った状態です。黒潮の流れが強く、冷水渦が東に黒潮で押し流されると、黒潮大蛇行が終了します。理論的には黒潮が弱いほど黒潮大蛇行が長期に継続します5)。黒潮大蛇行が長期化しているのは、黒潮が現在弱いことが一因だと考えられています。

2は気象庁が推定している黒潮流量の長期的変化と黒潮大蛇行の期間の関係をしめしたものです。1970年代は黒潮の流量が比較的小さく、過去最長期間の1975-1980年の黒潮大蛇行が発生したのはこの時期です。その後、1990年代初め頃まで黒潮の流量は増大しました。それに対応して、黒潮大蛇行の期間が短くなり、黒潮大蛇行が発生すること自体がまれになっているように見えます。1990年代以降は再び黒潮の流量は小さくなってきています6)。そのような状況の中で発生したのが今回の長期の大蛇行です。

図2: 赤線は気象庁が観測から推定した東経137度線での黒潮の流量の時間変化。単位は106m3/s。横軸は年。長期的な変化を見るために5年移動平均しています。緑帯は黒潮大蛇行の期間。

今後の予測

アプリケーションラボの研究グループでは、日本沿海予測可能性実験(JCOPE)による予測実験として、黒潮流路の変化とその予測を研究しています。現時点ではまだ黒潮大蛇行は継続すると予測しています。今後については、黒潮親潮ウォッチのホームページで一週間に一度予測を更新していきますので、ぜひご注目ください。

脚注

1) 1960年代以前の黒潮については、はっきりした観測がありません。しかし、限られた観測や、串本・浦神の潮位、漁師の体験談などから、さらに長い期間の黒潮大蛇行があった可能性もあります。黒潮親潮ウォッチ「黒潮大蛇行の歴史」参照。
2) 黒潮親潮ウォッチ「台風21号による高潮
3)  JAMSTECニュース:コラム「2017年と2018年の冬季前半における日本付近の寒さと雪
4) 黒潮大蛇行で夏の関東蒸し暑く(杉本周作、新学術研究領域・気候系のHOTSPOT2研究成果紹介)
5) 黒潮大蛇行の謎に迫る(碓氷典久、新学術研究領域・気候系のHOTSPOT研究成果紹介)
6) 1990年代以降に黒潮の流量が減少していることはアプリケーションラボの他の研究でも見られています。プレスリリース「過去20年の海流変動は日本にやってくるシラスウナギの数を減らしていた」参照。

 

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