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宝石を閉じ込めた石「ピクライト」が教えてくれる“地球の内部”とは

記事

海の底にある岩石は、地球のひみつをたくさん教えてくれます。なぜなら、海底にある岩石は、陸上のものよりもマントルに近く、地球内部の情報をたくさんもっているからです。

そのような、深い海から採取した、地球のひみつを教えてくれる岩石たちを紹介します。

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図1:緑色の宝石「ペリドット」の鉱物が含まれている岩石、ピクライト(玄武岩)。(写真/JAMSTEC)

第2回目に登場するのは「ピクライト」という岩石です。この石から、地球のどんなひみつがわかるのか、見ていきましょう。

緑の宝石を抱えた溶岩

この岩石「ピクライト」の大きな特徴は、緑色に輝く鉱物を散りばめたように包み込んでいるところ。この緑の鉱物は「かんらん石」と呼ばれ、大きくて緑の輝きが美しいものは取り出されて「ペリドット」という宝石になります。その輝きは夜になっても失われないと言われ、「夜のエメラルド」と呼ばれることもあるそうです。

では、誰がこんな素敵な宝石を埋め込んだのでしょうか!?

このピクライトは、ドロドロのマグマが流れ出て冷えて固まった溶岩(玄武岩)です。この玄武岩の中で、かんらん石が全体の半分以上入っているものを「ピクライト」と呼びます。

参考

興味のある方はこちらの記事も「マントルは、溶岩ではなく、宝石」

地球内部のマントルは何色でしょうか?

地球の内部にあるマントルは何色か知っていますか? 

実は、マントルは固体で、緑っぽい色をしているのです。これは、マントルの大部分が、かんらん石でできているからです。

ただ、マントルは、地球の表面近くに上がってくると、その一部が溶けて液体のマグマになり、そのまま固まると真っ黒な岩石になってしまいます。

マグマは、すぐには固まりません。マグマが地上や地表近くで冷やされると、構成する物質の原子がきれいに並んで(結晶化)、美しく輝きだすかんらん石が出てきます。一度溶けたかんらん石が再び結晶化してマグマ中に「鉱物」として現れるのです。

注意したいのは、マントルはかんらん石だけではなく、輝石やスピネルという鉱物も含んでいます。マントルの溶け方は、かんらん石だけが溶けるのではなく、他の鉱物と一緒に溶ける「共融」です。マントルの溶け方は少し複雑ですが、マグマの結晶化はわりと単純で、溶けたマグマから最初に結晶化してくる鉱物がかんらん石だと覚えておいてください。

ピクライトができる条件とは

ドロドロのマグマが冷えて固まるときに、最初に結晶化して析出されるるのが、かんらん石。しかし、そのまま温度が低くなってしまうと、別の鉱物(斜長石や輝石)に取って代わって、かんらん石は析出されなくなってしまいます。ある程度の高い温度で急冷されて固体にならないと、かんらん石は消えてしまうのです。

また、かんらん石はマグマの液体の部分よりも比重が高く、マグマが地中から表に出るまでに停滞してしまうと下に沈んでしまいます。ピクライトが出来上がるには、マグマだまりなどで停滞することなく、溶けたマントルが一気に地中から出る必要もあります。

実は、そんな条件がそろっている場所があります。どこだと思いますか?

ハワイの深い海です。そこにはピクライトがたくさんあります。

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