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火山・地球内部研究センター

西之島

2020年12月調査航海の速報

更新日2021年02月19日

再び活発な活動をした西之島の実態を探るべく2020年12月に調査航海を実施しました。このうち、海底火山研究グループでは主に周辺海底の地質調査を行い、噴火により堆積したと思われる火山灰、火山礫などの採取に成功しました。

航海概要

西之島火山噴火調査 KR20-E06
使用船舶:深海調査研究船「かいれい」
期間:2020年12月15日~12月28日(回航および他調査日含む)
主な実施項目:

  • マルチビーム測深器、サブボトムプロファイラーによる地形調査
  • 目視および熱赤外カメラによる現状の火山活動把握
  • 採泥器による海底の堆積物採取と撮影
  • ドローンによる火山灰の採取と撮影
  • ウェーブグライダーを用いた火山モニタリング

【参考】
【#JAMSTEC】西之島の活動を注視せよ!航海レポートをツイートします(2020年12月11日)

船上から観察した島の様子


(上)西側から見た西之島 (下)南西から見た西之島

以前は流れ出た溶岩がごつごつとした表面を形作っていましたが、現在は全面火山灰に覆われ、山麓はのっぺりとした印象を受けます。北側でより厚く火山灰が堆積しているようです。中央に形成された火砕丘は標高約250mと大きく存在感を増し、侵食の痕が山体の下半分で目立っています。


(左)2020年12月 (右)2017年7月

2020年6月以降の爆発的な噴火により拡大した火口は南側に大きく口を開けていて、内壁の様子が少し観察できます。調査期間中(2020年12月20~25日)に噴火は確認できませんでしたが、火口内や侵食により山麓に発達した割れ目、海岸の崖など溶岩の露出している場所では白い噴気が見られました。降り積もった火山灰の下に埋もれた溶岩は、依然として高い温度を持つことが推定されます。また、海岸付近では海水の変色域も観察されました。活動が落ち着いているためか、海鳥の飛来も確認できました。

採泥の成果速報

本調査では、ボックスコアラーとよばれる箱型の採泥器を用いた地質調査を実施しました。これは、ごく表層 30 cmほどの海底堆積物を採取するもので、据え付けの深海カメラで海底の様子も撮影できます。


(左)ボックスコアラー採泥器と西之島 (右)採泥器フレームにつけた深海カメラ

結果、西之島周辺の海底(水深約800~1470 m)から火山灰、火山礫を含む地質試料を得ることができました。試料にはスコリア(黒っぽくて多孔質)が多く含まれます。中にはスパッターのような形状を持つ新鮮なスコリアも観察されました。これは粘性の低いマグマが爆発的な噴火を起こしたときに形成されるもので、今回の爆発的な噴火との関連が示唆されます。また、ある地点では軽石(白っぽくて多孔質)も採取されました。これが最近の西之島で噴出したものであれば、バイモーダル(黒っぽい玄武岩と白っぽい流紋岩の噴出)な活動へと移行している可能性があります。


(左)採泥地点、海底の様子 (右)ボックスコアラーで採取した堆積物

(左)採取した堆積物中のスコリア (右)採取した堆積物中の軽石

今後の展望

現在、本調査で得られた火山灰や火山礫の詳細な分析・解析を進め、実際の化学組成やその特徴、変化などを調べています。また、12月と2021年1月に無人潜水探査機で得られた岩石と火山灰も合わせて分析しています。今回の爆発的な噴火活動との関連性を検証し、カルデラ噴火へ至る可能性も含めて、今後の西之島の活動予測へとつなげていきたいと考えています。

【参考】
クルーズレポートを含む本航海の基本データがDARWINにて順次公開される予定(航海番号:KR20-E06)