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海域地震火山部門

南海トラフにおけるゆっくり滑り観測

南海トラフにおける新たなゆっくり滑りの観測点構築に向けた地球深部探査船「ちきゅう」の航海がはじまります

海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、令和5年11月6日(月)から11月30日(木)にかけて地球深部探査船「ちきゅう」を用いて、南海トラフで発生する「ゆっくり滑り」を高感度に捉えるための調査航海を実施します。

本航海で紀伊水道沖の海域において「ちきゅう」によって新規に掘削した海底掘削孔内に観測センサーを設置することにより、南海トラフでの海洋プレートの沈み込みに伴い発生する浅部ゆっくり滑り等のプレート境界滑り現象の実態を広域かつ高感度に把握します。

<航海の概要>

南海トラフ地震発生帯では、令和2年1月時点で、マグニチュード8~9クラスの巨大地震の30年以内の発生確率が70~80%とされており、ひとたび地震が発生すれば、甚大な人的被害・経済損失は避けられません。JAMSTECでは、この巨大地震の発生に関連があるとされるゆっくり滑りの検知に向けた研究開発に取り組んでいます。

JAMSTECでは、東南海地震の震源域である熊野灘において、平成22年より海底掘削孔内に観測センサーを設置し、地震・津波観測監視システム(DONET1)に接続することによって、現在計3か所において孔内間隙水圧計による海底地殻変動のリアルタイム観測を実施しています。

今回の航海では、紀伊水道沖の1地点において「ちきゅう」により新規の海底孔を掘削し、光ファイバー歪計など最先端の技術を取り入れた新型の観測センサーを孔内に設置します。これは南海地震の震源域における初めての設置となるものです。

得られたリアルタイム観測データは気象庁等に提供され、「南海トラフ地震に関連する情報」(南海トラフ地震臨時情報等)の発出に向けた貢献が期待されます。

JAMSTECでは今後も南海トラフ西側の海域に観測センサーの展開を進め、広域でのゆっくり滑りの観測監視を進めていきます。

地球深部探査船「ちきゅう」
掘削調査を行ったゆっくり地震を起こしている断層の孔に「長期孔内観測システム」を埋設する。 図版作成:鈴木知哉
今回設置する長期孔内観測システム装置

<首席研究者からのメッセージ>

荒木 英一郎

海域地震火山部門 地震津波予測研究開発センター
観測システム開発研究グループ グループリーダー

南海地震の想定震源域において、1基目の長期孔内観測システムの設置がいよいよ始まります。巨大地震の発生が危惧される南海トラフでは、広域でゆっくり滑りを観測することが不可欠であり、今回の航海は非常な重要な意義を持っています。関係者一同、この航海の実現に向けて心血を注いできました。最後まで気を引き締めて邁進していきます。

(撮影:神谷美寛/講談社写真部)

<航海情報>

〇使用船舶  地球深部探査船「ちきゅう」
〇航海日程  令和5年11月6日(月)~11月30日(木)
出港・帰港共に清水港(静岡県静岡市)
注)なお、気象条件や調査の進捗状況によって予定変更の場合があります。
〇調査海域  紀伊水道沖

<関連記事>

令和5年11月2日付プレスリリース「南海トラフ広域ゆっくり滑りリアルタイム観測のための地球深部探査船「ちきゅう」を用いた長期孔内観測点の構築について」
https://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20231102_2/

「ゆっくり地震」を捉えろ!光のものさしで海底の変化を観測する~海底の光ファイバーケーブルを地震研究に活用!
https://www.jamstec.go.jp/j/pr/topics/explore-20230411/

日々の航海の様子はX(旧Twitter)「ちきゅう」アカウントで配信します。お見逃しなく!
https://twitter.com/Chikyu_JAMSTEC