地球は常に変動し続けている惑星です。その中で、ダイナミックな火山の活動は人々を魅了すると同時に、それが引き起こす災害は人々を悩ませています。火山の活動のエネルギーは地球内部からもたらされているので、火山と地球内部を統合的に理解し、その英知を社会に役立てることが、我々センターの使命です。
火山・地球内部研究センター
センター長 小野 重明
火山・地球内部研究センターでは、火山から噴出した溶岩を化学的に分析し、噴火を引き起こした原因は何か、なぜ爆発的な噴火が起こるのかなど、防災や減災に重要なマグマの性質を解明していきます。また、地球内部の地震波速度や電気伝導度を観測して地球内部のマントル対流や、熱や物質の循環を探っています。地球内部への入口である沈み込み帯にある火山と、出口であるホットスポットや中央海嶺の火山の溶岩の成分を比較することで、大気・海洋と地球内部を含めた物質循環が分かります。それは地球の環境変動を理解する上でも重要です。
海底火山や火山島のような海域の火山の調査研究は、陸の火山に比べて大きく遅れを取っています。そのため、不意打ちの火山噴火によって火山災害が大きくなる懸念があります。そこで、海域火山における災害の発生予測や地球環境への影響評価を行い、災害の軽減につなげることを目指して、海域の火山と地球内部を統合的に理解する調査研究を推進しています。
地震発生帯研究センターや神戸大学と連携して鹿児島の南の海底にある鬼界カルデラに海底地震計を高密度に設置し、自然に起きる地震を数ヵ月〜1年間観測することにより、海底下10〜100kmの構造を探査しています。
そこにマグマだまりなどがあれば、とらえることができると期待しています。
海域火山の現状を監視するために、水圧計や海底電位磁力計を設置し、記録されたデータを吸い上げる無人観測システムの開発についても、神戸大学や東京大学地震研究所と一緒に進めています。
観測データからは火山活動の現状を把握することができますが、いざ活動が活発化したとき、今後の火山活動の推移を予測するには、過去にその火山で起きた噴火履歴を調べることが重要です。火山周辺の海底面や海底下には、過去のさまざまな年代に噴出した火山岩や火山灰が降り積もっています。鬼界カルデラや伊豆・小笠原などの火山周辺の海底を探査し、火山噴出物を採取・分析して過去の噴火活動のデータを蓄積しています。噴出するマグマの粘性や成分・量によって火山はさまざまなタイプに分かれるので、溶岩を分析して、火山の地域ごとのタイプの分布も明らかにしていきます。
科学的な根拠に基づいて火山活動を予測するためには、表面近くの現象だけでなく、地球内部の営みを理解する必要があります。日本周辺の火山は、プレートの沈み込みによってつくられたものです。プレートの沈み込みによって、地下にあるマントルの岩石に水が加わることでマントルの融点が大きく下がり、マントルが溶けてマグマができます。そのマグマが上昇して火山ができると考えられています。
海溝からの距離により火山のタイプは異なる傾向があります。それは、海溝に近い沈み込んだばかりの浅い領域で絞り出される水と、海溝から遠い深い領域で絞り出される水では、そこに溶け込んでいる成分が異なることが関係しているという仮説があります。
JAMSTECのこれまでの調査により、伊豆・小笠原では南北方向でも火山のタイプが異なるらしいことが分かってきました。それは南北で地殻の厚さに違いがあることによって、マグマのできる深さが異なることが原因の一つだと考えられます。
そもそもプレートの実態や、プレートが生まれ、移動し、沈み込むプレートテクトニクスの仕組みは、地球科学における大きな謎です。IODP(国際深海科学掘削計画)の下で地球深部探査船「ちきゅう」などによる掘削調査も進めてその謎に迫り、なぜその海域に特定のタイプの火山があるのか、理解を深めていきます。
センター長 小野重明
専門:地球内部科学
陸の火山に比べ、海の火山には解決されていない謎がたくさんあります。火山研究の最後のフロンティアである海の火山にチャレンジしたい方は、JAMSTECの門を叩いてみませんか。