ペルーの洪水とエルニーニョ現象の兆し

 東京都心で桜が開花しました。気象庁の発表だと平年より5日早く、昨年と同日だそうです。約1週間で満開との見通しでしたが、最近の冷え込みで少し遅れそうです。春爛漫の季節が待ち遠しいですね。

 ところで、ペルーでは豪雨による洪水で甚大な被害が出ているようです(参考記事(c)AFPBB News)。これは熱帯太平洋東部ペルー沖の海水温の異常が大気を不安定にさせて引き起こしたと考えられます。図1は人工衛星で観測した過去1ヶ月間平均の海面水温の異常値(平年値からのずれで定義。偏差とも呼ぶ)です。暖色が平年よりも水温が異常に高いことを意味しています。ペルー沖合の海水温が異常に高いですね(月平均で3ºC以上も高いところがあります)。

図1:2017年2/19-3/18で平均した海面水温の偏差図(ºC)
Data/image provided by the NOAA/OAR/ESRL PSD, Boulder, Colorado, USA, from their Web site at http://www.esrl.noaa.gov/psd/

 熱帯の海面水温が上昇すると、上昇流が発生し、積雲が生じて雨を降らすことが知られています。図2は積雲発生の程度を表す外向き長波放射量(OLR)について、図1と同様に過去1ヶ月間で平均した偏差の図です(積雲が発生すると、それに遮られて地表や海面から放射される赤外線が宇宙空間に届かなくなります)。寒色の領域では対流が活発で、雨が多いと解釈できます。ペルーでは積雲活動が活発で雨が平年より多くなっていることが確認できます。

図2:2017年2/24-3/25で平均した外向き長波放射量(OLR)の偏差図(w/m2)。Data/image provided by the NOAA/OAR/ESRL PSD, Boulder, Colorado, USA, from their Web site at http://www.esrl.noaa.gov/psd/

 この冬、熱帯太平洋ではラニーニャモドキ現象が発生していました(エルニーニョモドキ・ラニーニャモドキ現象とは?)。この現象が発生すると、熱帯太平洋西部は高温に、日付変更線付近の中央部は低温に、そして太平洋東部のペルー沖は高温になり、水温偏差の三極構造が現れます。2016/17年冬の予測の「答え合わせ」記事でも今年の冬に熱帯太平洋がラニーニャモドキ的であったことを議論していますので参照してください。年明けの頃から、ペルー沖合の海面水温がどんどん上昇し、西方に広がりを見せてきました。この異常な高温は、今後さらに発達してエルニーニョ現象になる可能性があります。アプリケーションラボでは予測シミュレーションにもとづいて、2017年1月の時点で、今夏のエルニーニョ現象の発生を予測しています(季節ウオッチ2017年1月号)。最新の予測でもエルニーニョ現象の発生を予測していますので確実性が増してきました(季節ウオッチ2017年3月号)。ペルーの洪水だけでなく、日本南岸で次々低気圧が発生し春の大雪を招くなど、既にエルニーニョ現象のテレコネクションとも考えられる現象が起きています。この初夏に発生が予想されるインド洋のダイポールモード現象とともに、今後も熱帯の気候変動現象を注意深く監視していく必要があります。