2016年7月号:いよいよ夏本番!

fig_0_201607

写真:横浜研究所から最も近い海

皆さん、海の日は海に行かれましたか?写真は横浜研究所から最も近い海です。東京湾ですが、青空と海の景色が素敵ですね。気象庁の発表によると、九州から東海は梅雨が明け、夏本番となりました。これからの季節、気温や雨が気になりますね。SINTEX-Fの季節予測によると、8月とその後の9-11月は世界の多くの地域で気温が平年より高くなりそうです。また、熱帯の太平洋では平年並または弱いラニーニャ現象の状態が続き、インド洋では負のインド洋ダイポール現象が発達し、これらの現象が地域の降水に影響を与えそうです。以下で詳しく見ていきましょう。

今年の9-11月の気温と降水量は?

fig_1_201607

図1 2016年9月から11月までの地上気温の平年差(ºC)。 予測開始日は7月1日。

今年の9-11月に予測される世界の気温です。SINTEX-Fの予測によると、世界の多くの地域で9-11月の気温は平年より高くなりそうです(図1)。一方で、アメリカ中部やブラジル西部、中央ヨーロッパでは、気温は平年より低くなりそうです。

fig_2_201607

図2 2016年9月から11月までの降水量の平年差(mm/日)。予測開始日は7月1日。

次に、今年の9-11月に予測される世界の降水量です。SINTEX-Fの予測によると、東アフリカやインドシナ半島では雨が平年より少ない見込みです(図2)。一方で、インドネシアやオーストラリア、南米の北西部では、雨が平年より多くなりそうです。

また、日本の8月と9-11月は、気温が平年より高い予測となっています。8月は西日本で雨が平年より多く、10月は北日本で雨が平年より多い見込みです。ただし、予測精度に限界がありますので、今後の予測情報に注意してください。

fig_3_201607

図3 2016年9月から11月までの海面水温の平年差(ºC)。 予測開始日は7月1日。

日々の天気と異なり、季節を決める気候の変動には海面水温が大きく関わっています(参照:季節予測とは?)。特に、熱帯域は他の海域に比べて海面水温が高く、わずかな水温の変動が世界の気候に影響をもたらすことが知られています。

熱帯太平洋では昨年より、中央部と東部で水温が平年より高くなる「エルニーニョ現象」が発生していましたが、今年の3-5月にはほぼ終息しました(参照:気象庁 エルニーニョ監視速報)。7月の観測値を見ても、熱帯太平洋の水温はほぼ平年並となっています(参照:NOAA/PSD)。

SINTEX-Fの予測によると、これからの季節、熱帯太平洋は平年並、または弱いラニーニャ現象のような状態が続く見込みです(図3)。これは、先月の予測結果と比べて、大きな変化となっています。7月の水深200mくらいまでの水温を見てみると、赤道全体で水温が平年より低くなっていますので(参照:NCEP/CPC)、これらの変化は、7月1日までに観測された海面水温を用いて予測を行う手法(参照:季節予測とは?)によって生じているかもしれません。今後の予測情報に注意してください。

一方、インド洋ですが、今年の3-5月まで全域で水温が平年より高い傾向にありましたが、7月の観測値を見ると、東部で水温が平年よりも高く、西部で低くなっています(参照:NOAA/PSD)。これは、「負のインド洋ダイポール現象」として知られるもので、これから9-11月にかけて発達する見込みです。そのため、東アフリカやインドシナ半島では、雨が平年より少なくなりそうです。

fig_4_201607

図4 2016年7月以降に予測される、ニーニョ3.4指数とインド洋ダイポール指数(ºC)。 予測開始日は7月1日。青が観測値、グレーが9つの異なる初期条件で計算した予測値、赤が9つのグレーの予測値の平均値。

最後に、これら熱帯域の現象が 今後どのように発達するか、見てみましょう。図4は、2つの現象がそれぞれ最もよく現れる海域で計算された海面水温の平年差になります(図4)。ニーニョ3.4指数は、赤の予測値の平均をみると、10月以降にゼロ度を下回り、年末に向かって平年並、または弱いラニーニャ現象のような状態が続くことを予測しています。

一方、インド洋ダイポール指数は、7月から11月までマイナス0.5度を越えて、負のインド洋ダイポール現象が発達することを予測しています。その後、年末にかけてインド洋ダイポール現象は減衰する見込みです。

日本を含む世界の気候には、太平洋に発生するエルニーニョ現象やラニーニャ現象だけでなく、インド洋に発生するインド洋ダイポール現象も大きく影響を及ぼすことが分かっています。今年の9-11月は、インド洋では負のインド洋ダイポール現象が発達し、太平洋では平年並、または弱いラニーニャ現象のような状態が続きそうです。海洋起源の2つの気候変動現象がこれからどのように発達し、世界の気候にどちらの影響がより強く現れるか、今後注意して見ていきましょう。