離岸流路は続くか?

我々の予測では、黒潮が八丈島の南を流れる離岸流路が続くとしていますが、気になる点もあるので、詳しく見てみましょう。

図1は、地球観測衛星ひまわり8号(※1)で観測された10月20日の海面水温です。東海沖に、黒潮から分岐して、岸方向に高い水温(黄色っぽい色)が流入している様子が見えます(図の点線)。これは、今週号の現状・予測における接岸傾向gに対応しています。ただし、ひまわり8号の観測(図1)と同日のJCOPE2の海面水温(図2)を比較すると、JCOPE2の離岸傾向gは、高い水温がなだらかに岸方向に広がっている程度にしか表現できていません。これは、ひまわり8号で観測されている細長い暖水の流入を再現できるほどJCOPE2の分解能(水平分解能約9km)がないからです。

そこで、より高い分解能(約3km)を持つJCOPE-T(※2)のデータを見ると(図3)、細長い暖水の流入がより良く再現できています。ただ、この暖水は東へと移動していますが、ひまわり8号の観測と比べると(図1)、東への進行が若干遅れているようです(図3)。

いずれにせよ、離岸傾向g(暖水流入)は東へと移動し、伊豆諸島へと近づいていきます。その影響で黒潮は八丈島に近づきます。JCOPE2の予測では、それがきっかけで黒潮が八丈島の北を流れる接岸流路になることはなく、離岸流路が続きます。JCOPE-Tの予測でも離岸流路が続きそうです。図4は、JCOPE-Tによる10月20日から10月30日までの予測のアニメーションです。

とは言え、接岸傾向g(暖水流入)の勢いが想定よりも強かった場合、より接岸流路的な傾向に近づくことも予想されますから、今後注目して見ていきます。

Fig1

図1: ひまわり8号で観測した2015年10月20日の海面水温(°C)。白い空白は雲で観測できなかった場所。

 

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図2: JCOPE2による10月20日の予測値。矢印は海面近くの流れ(メートル毎秒)、色は海面温度(°C)。

 

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図3: JCOPE-Tによる10月20日の推測値。矢印は海面近くの流れ(メートル毎秒)、色は海面温度(°C)。

 


図4: 10月20日から10月30日までのJCOPE-Tによる予測のアニメーション(※3)。クリックして操作して下さい。途中で停止することもできます。

 


 

※1 ひまわり8号の海面水温については2015年10月9日号「気象衛星「ひまわり8号」で見た黒潮」で解説しました。本稿にて使用したひまわり8号から作成した海面水温プロダクトは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の分野横断型プロダクト提供サービス(P-Tree)より提供を受けました。図1には、JAXA作成の1時間平均のデータを使い、24時間のうち各地点毎に観測できたデータを時間平均して、1日平均の海面水温を作成しました。例えば夜だけ晴れていれば、夜だけのデータを使って平均していることになり、値が偏っている可能性があります。オリジナルのデータはノイズが含まれているようなので、5×5のサイズのメディアン・フィルターを適用してなめらかな図にしています。

※2 JCOPE-Tのデータは、2015年3月13日号「JAMSTECが渦について新発見をしたと聞いたけど?」、7月24日号「台風の通ってきた海」、10月16日号「台風23号接近で高潮発生」でも使用しています。

※3 JCOPE-Tのデータは1時間毎のデータが使用可能ですが、ここではJCOPE2に合わせて、1日平均の1日毎のアニメーションにしています。

 


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美山 透

海の変化は、漁業海運エネルギー天候など様々なことに影響します。海洋予測がもっと身近なものになるように、頭をしぼって書いています。