「池内博之の漂流アドベンチャー 黒潮に乗って奇跡の島へ」(2016/7/19追記あり)

以下の番組に取材協力しました。海の日の番組で黒潮に思いをはせてはいかがでしょうか。

番組名 池内博之の漂流アドベンチャー 黒潮に乗って奇跡の島へ
放送日時 2016年7月18日(月曜日、海の日)21:00~22:30
放送局 NHK BSプレミアム
内容 本番組は俳優の池内 博之さんが世界有数の大海流・黒潮に乗って、その流れの先にある島を目指すアドベンチャー番組です。
番組サイト https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/92357/2357069/index.html
関連リンク  NHK BSオンライン スペシャルコラム 黒潮に乗って流れてゆくとその先に「奇跡の島」があるのをご存知でしょうか? ~「池内博之の漂流アドベンチャー 黒潮に乗って奇跡の島へ」~ BY 大野了

池内博之の漂流アドベンチャー2「黒潮のその先へ 南島奇談」NHK BSプレミアム2017年5月6日午後9時30分~ 午後11時00分放送(2017/5/2追記)

new2018/9/3 追記
2018年9月5日(水) 午後3時30分からNHKBSプレミアムで再放送予定です。

2017/8/17 追記
2017年8月19日(土) 午後6時00分からNHKBSプレミアムで再放送予定です。

2017/4/29 追記
2017年5月5日(金) 午前9時00分からNHKBSプレミアムで再放送予定です。

2016/08/17 追記
2016年8月21日(日) 午後3時30分~ 午後5時00分にNHKBSプレミアムで再放送予定です。

2016/08/11 追記
同番組がNHKワールド・プレミアム(海外にお住まいの日本人や旅行者向けに日本語で番組を放送するチャンネル)で2016年8月17日(水)に放送予定です。英語への翻訳などはありません。


2016/07/19追記

番組で取り上げられていた長平は、四国から鳥島にたどり着くまで、参考資料1によれば14日間漂流したと言われています。同じく四国から鳥島まで流されたジョン万次郎(2015/09/19号 BS日テレ「日米の架け橋 ジョン万次郎の真実を追え!」参照)の場合は、参考資料1によれば7日間漂流したと言われています。番組では、海流の影響が強調されていましたが、実際の漂流については風の影響も考慮に入れる必要があります(参考資料2,3,4)。また、黒潮に流されたとして、必ず鳥島にたどり着くというわけではありません(参考資料3)。漂流してもあっさり助かった人たちは記録に残りませんし、助からなかった人たちも歴史に消えていきます。鳥島に漂着した人たちは、大変な条件ながらも、生還することがあり、大きな物語になります(参考資料2)。以上のことをことわった上で、ここでは番組に提供した海流情報を解説します。

黒潮の流路の型はいろいろな分類がありますが、図1では4つを描いています。このうち(典型的)大蛇行流路、非大蛇行離岸流路、非大蛇行接岸流路については2015/02/06号「黒潮の位置はどのように変化するの?」で紹介しました。これに加えて、非大蛇行離岸流路の離岸が大きく発達した場合、非典型的大蛇行流路と呼ばれることがあります(※1)。離岸の大きさは黒潮が北緯32度線の南を通るかが基準になることが多いです。非典型というのは、典型的な大蛇行は八丈島の北を通過するという特徴があり、それ以外は非典型的ということになります。

Fig1

図1: 黒潮の流路の分類。点線は北緯32度。は鳥島の位置。

 

番組では、非大蛇行接岸流路の時期(図2)と、非典型的大蛇行流路に変化していく時期(図3)のアニメーションが紹介されていました。漂流した人々が遭遇した黒潮の状況は今となってはわかりませんし、どれだけ黒潮の流路の違いが重要だったかもケースバイケースでしょう。単に黒潮の流れだけ言えば、黒潮の離岸が大きい方が鳥島に近づきやすいとは言えるかもしれません。参考資料1は、漂流状況の記録と漂流時間が短かったことから、ジョン万次郎の漂流の時は黒潮大蛇行であったという仮説を提唱しています。

番組の航海が行われた今年の5月初頭は黒潮の離岸が大きく、非典型的な大蛇行に近い状況だったようです(2016/05/06号黒潮現状参照)。

番組では室戸岬沖の黒潮牧場10号ブイが映っていました。黒潮牧場ブイについては黒潮親潮ウォッチでしばしば紹介しています。高知県漁海況情報システムによれば、黒潮牧場10号ブイで観測された黒潮の海面近くの流速は、2016年5月1日の平均で2.5ノット(約1.3メートル毎秒)でした。


図2: JCOPE2による非大蛇行接岸流路であった2014年5月1日から6月1日までのアニメーション。は鳥島の位置。矢印は海面での海流流速(メートル毎秒)の向きと大きさで、右下に1メートル毎秒の海流の大きさがしめしてあります。速さが0.2メートル毎秒より弱い流れは省略しました。色が海洋表層の温度(°C、海面から深さ200mまでの平均)です。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

 


図3: 非大蛇行接岸流路から離岸が大きく発達し非典型的大蛇行になった2013年8月1日から9月30日までのアニメーション。

 

番組では、黒潮の水が塩分が高いという描写がありました。黒潮は、雨が相対的に少なく蒸発が多い亜熱帯を流れてくるために塩分が高いです。また、川などの影響がある沿岸よりも塩分が高くなります。一方、親潮域は塩分が低く、2015/08/07号「親潮は甘い」で解説しました。図4は2016年5月10日の西太平洋の海面塩分分布です。

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図4: JCOPE2推定による2016年5月10日の西太平洋の海面塩分分布。

 

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関連解説


参考資料

1) “中濱万次郎 -「アメリカ」を初めて伝えた日本人” 中濱博 著  (冨山房インターナショナル)
ジョン万次郎(中濱万次郎)の漂流した時、黒潮は大蛇行していたという説を提唱しています。巻末特別項目に、ジョン万次郎のケースも含めた、鳥島漂流19例のまとめがあります。

2) “漂流の島 -江戸時代の鳥島漂流民たちを追う” 髙橋大輔 著 (草思社)
鳥島と漂流者たちについて詳しいです。

3) “黒潮の文化誌” 日高旺 著 (南方新社)
起章「黒潮の物語」で、鳥島漂着に限らない漂流の例が書かれています。

4) ”気象学から見た漂流記” 倉嶋厚 著 (日本庶民生活史料集成 第5巻「漂流」p.864-869、三一書房)
統計的に漂流は圧倒的に冬が多く、正月用品や取り立てた年貢米を運ぶ季節にあたっているとともに、北西季節風の最盛期であることが原因であろうと考察しています。


注釈

※1 海上保安庁による黒潮の型: http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/KAIYO/qboc/exp/yougo.html