黒潮大蛇行の終息が発表されましたが、その余波は続いています。蛇行がある程度大きくなっていますが、大蛇行になる可能性は低くなっています。 |
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- JCOPE-T DAによる短期予測(20日先)
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- JCOPE3Mによる長期予測(2か月先)
を行っています。
ここで12月5日までのJCOPE3Mによる長期予測を解説します。長期予測では、黒潮大蛇行の予測がテーマです。
予測
図1は2025年10月4日の状態の推測値、図2・3は11月5日、12月5日の予測です。
気象庁と海上保安庁は今回の黒潮大蛇行が2025年4月に終息したとの判断を発表しています(2025/8/29発表)。しかし黒潮大蛇行の余波は続いています(「2025年の黒潮のこれまでをふりかえる」参照)。
黒潮大蛇行からちぎれていた渦は、黒潮に吸収されて蛇行をつくっています(図1, A”)。
蛇行が大きいまま、潮岬での離岸が続けば大蛇行になりますが、観測に接岸の兆候があらわれています(図4参照)。
黒潮は、八丈島の南を流れる非大蛇行離岸流路(図2)から、八丈島の北を流れる非大蛇行接岸流路になっていく予測になっています(図3)。
黒潮大蛇行の特徴の一つは、黒潮が潮岬で離れていることです。黒潮が潮岬で離れているかを観測で見る良い方法として、串本と浦神の潮位差を見るという方法が知られています(「潮岬への黒潮接岸判定法は?: 串本・浦神の潮位差」参照)。黒潮が紀伊半島に近づくと潮位差は大きくなり、黒潮が紀伊半島から離れると潮位差は小さくなります。図4はその潮位差の時間変化です。2017年に黒潮大蛇行が始まって以来、一時を除いて小さな値が続いていました。しかし、4月の黒潮大蛇行の終息後の後しばらくして値が大きくなり、潮岬で黒潮が接岸しました。その後、西の蛇行(A”)による離岸によって、串本と浦神の潮位差は再び小さくなりましたが、断続して上昇が見られています。黒潮が潮岬に接岸していく徴候と考えられます。
黒潮大蛇行の特徴のもう一つの特徴は、黒潮が八丈島の北を通ることです。八丈島の南を黒潮を通ると、八丈島の潮位が下がることが知られています(「黒潮が八丈島の南を流れているのをどうやって観測で確認するの?」参照)。八丈島の潮位は、東京大学大気海洋研究所の藤尾伸三准教授のウェブサイト「潮位データを用いた黒潮モニタリング」で見ることができます。図5は、このサイトから八丈島での潮位のこの10年の変化をグラフ作成したものです。黒潮大蛇行が始まって以来、短期間を除き、八丈島の潮位は高い状態が続いてきました。大蛇行が終息した後、潮位は低下しました。その後、ある程度上昇しましたが、直近のデータは再び下降に転じています。これも黒潮大蛇行にならない兆候です。
「今後の黒潮: 考えられる4つのシナリオ」の中では、シナリオ1と2が可能性が無くなっています。現在は、シナリオ3(大蛇行の再誕生)か、シナリオ4(完全終息)のいずれかに絞られてきており、現在はシナリオ4が有力になっています。
図6は、2025年10月4日から12月5日までの予測をアニメーションにしたものです。





図6: 2025年10月4日から2025年12月5日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。
参考: アンサンブル予測
今週はアンサンブル予測の更新はありません。
JCOPE2Mは4日毎に更新を行っています(解説参照)。JCOPE2Mの他の予測図についてはJCOPE のweb pageでご参照ください。図の見方は連載: JCOPE2解析・予測画像の見方で解説しています。