台風近づく (親潮ウォッチ2017/10)

台風21号が近づく直前の日本周辺の海の様子を見つつ、最近の親潮について解説しています。黒潮大蛇行によって高潮がおこりやすい状況になっており、注意が必要です。親潮は先月よりも岸沿いに南下しています。

全体的な状況

まず、日本周辺の水温状況を見てみましょう。図1は、2017年9月17日(親潮ウォッチ2017/09で解説)と、2017年10月16日の、海面水温の平年との差を見たものです[1]。平年は1993から2012年の20年間の平均で、それより高い場所が赤っぽい色、低い場所では青っぽい色になっています。

日本の南は平年より水温高くなっています(A)。この解説を書いてる時点で、台風21号[2]が台風が北上してきており、高い水温上を通過することで強い勢力で日本に近づくことが心配されます。

もう一つの注目点として、関東から東海沿岸にかけて海面水温が平年より高くなっています(B)。黒潮大蛇行が現在発生しており(2017/10/18号黒潮予測参照)、それにともなう冷水渦(C)の北側では、東から西へ沿岸沿いに黒潮から暖水が流入しているためです。この暖水に対応して沿岸では海面が高くなっており、台風による高潮に注意する必要があります[3]。黒潮大蛇行と高潮の関係については、2017/9/13号「黒潮大蛇行で浸水被害?」で解説しています。

[2017/10/25追記]2017年台風21号による静岡沿岸での高潮に対する影響は 2017/10/24放送・NHK総合「ニュースウォッチ9」で解説しました。

親潮周辺海域では、全体的に平年より冷たい海域が目立ちますが、詳細に見ると平年より冷たい海域ばかりではありません(D)。以下で見ていきます。

Fig1

図1: 海面温度の平年との差(℃)。[上段]2017年9月17日。[下段] 2017年10月16日。

 

親潮の様子(海面)

親潮周辺の様子を詳しく見てみます。図2左は、図1下段を親潮域で拡大した図です。上で述べたように親潮域周辺で全体的に平年より冷たくなっていますが、赤矢印でしめしている海域などでは平年より高くなっています。全体的に冷たい中で、一部だけ水温が高いのは海流(暖水渦)の影響だと考えられます。図2右は、対応する海面温度そのもの(色)と、流れ(矢印)です。赤矢印でしめしている暖水と北海道の間には隙間があり、そこを通過して親潮が南下している様子がうかがえます。

Fig2

図2: [左図] 2017年10月16日の親潮周辺の海面温度の平年との差(℃)。[右図] 同じく2017年10月16日の海面水温(色、℃)と流速(矢印)。

親潮の様子(海面下)

海流の様子をより良くみるために、天気の影響を受けにくい海面下の水深100メートルの様子を見てみましょう(図3左図)。先月の状況とも比べます(図3右)。先月は暖水が北海道近くまで伸びており、親潮が岸沿いに南下しにくい状態でした。今月になると暖水と北海道との間に隙間が空き、岸沿いに南下しやすくなっています。

Fig3

図3: 水深100メートルでの水温(色、℃)と流速(矢印)。親潮勢力の指標として水温5度に赤細線で等値線。青枠は図6の計算に使用。[左図]今年の10月16日。暖水の動きを説明するために、ピンクの太い矢印を記入。[右図] 先月の9月17日。

10月16日からの予測

図4は、JCOPE2Mで10月16日から予測した10月31日の親潮域の水深100mの水温(左図)と、平年の水温([4]、右図)を比較しています。水温5度の等値線が親潮の勢力の指標になっています。

図4左の赤矢印でしめしている暖水渦が北上することで、再び親潮が南下しにくくなるという予測になっています。図5は、図4に対応する10月16日から12月21日までの予測をアニメーションにしたものです。渦の動きの予測は難しいので、今後予測が変わる可能性があります。最新の予測は週2回更新されるJCOPE のサイトでチェックしてください。

Fig4

図4: JCOPE2Mで2017年10月16日から予測した10月31日の親潮域の水深100mでの水温(左図)と流速(矢印)、平年の水温(右図)の比較。親潮勢力の指標として水温5度に赤細線で等値線。青枠は図6の計算に使用。

 

 


図5:
親潮域の水深100mでの2017年10月16日から12月21日までの水温のJCOPE2Mによる予測(左図)と、平年の水温(右図)の比較のアニメーション。親潮勢力の指標として水温5度に赤細線で等値線。青枠は図6の計算に使用。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

親潮面積

JCOPE2Mによる推定によれば(図6青太線)、親潮の勢力の指標である親潮面積(図3の青枠での水深100メートルの水温5度以下の水の広がり)[5]は、岸沿いの親潮の南下が弱かったことを反映して9月は平年(黒線が平年の値、灰色が通常の範囲)よりかなり小さな値になってましたが、その状態が解消してやや平年並みの値に近づいてます。予測(黄点線)では、再び平年よりかなり小さい値になりそうです。

Fig6

図6: 親潮面積の時系列(単位104 km2)。赤線が2015年1月から現在までのJCOPE2再解析から計算した時系列。黒細線は平年(1993-2012年)の季節変化。灰色の範囲は平均からプラスマイナス標準偏差の範囲。2016年10月からは、JCOPE2再解析の代わりに、新モデルであるJCOPE2Mによる値(青実線)を使用。黄点線は2017年10月16日からのJCOPE2Mによる予測。

 

  1. [1]この記事では、今年の値はJCOPE2Mを、昨年や平年の値はJCOPE2再解析を使用しています。
  2. [2]デジタル台風:台風201721号 (LAN)
  3. [3]気象庁の黒潮の大蛇行関連ポータルサイトには、潮汐観測資料へのリンクがあり、潮位の高さを見れます。
  4. [4]1993から2012年の平均。
  5. [5]親潮面積については、「親潮が記録的なあたたかさ(親潮ウォッチ2015/9)」で解説しています。

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黒潮親潮ウォッチでは、親潮の現状について月に一回程度お知らせします。親潮に関する解説一覧はこちらです。 JCOPE-T-DAによる短期予測はJAXAのサイトで見ることができます。 週に2回更新されるJCOPE2Mによる親潮の長期解析・予測図はJCOPE のweb pageで見られます。親潮関係の図の見方は2017年1月18日号2017年2月1日号で解説しています。