2018年3月23日から5月24日の予測(3月28日発表)

黒潮は、東海沖で大きく蛇行しています(黒潮大蛇行)。八丈島の北を黒潮が通過しています。東海沖の蛇行のために、紀伊半島・潮岬でも離岸しています。四国・室戸岬では黒潮が離れており、足摺岬は近づいています。房総半島では西で黒潮が近づいています。黒潮大蛇行は継続するでしょう。ただし、大蛇行を作る冷水渦は弱くなってくると予測しています。

JCOPE2の改良版であるJCOPE2M週2回の予測を行っています。ここでは2018年3月23日から5月24日までの予測を解説します。

現状

図1と図2はJCOPE2Mで計算した2018年3月23日と3月28日の黒潮の状態です。

黒潮は東海沖で非常に大きく離岸しており、黒潮大蛇行と呼ばれる状態になっています[1](図1,2)。大蛇行にともない、紀伊半島・潮岬でも離岸しています大蛇行を作っている反時計回りの大冷水渦の北側では、東海沿岸で西向きに暖水が入りやすい状況です[2](図1,2。図8も参照。)。

房総半島沖では東側では黒潮が離れていますが(離岸傾向h[3]、図1,2)、西から黒潮が近づいています(接岸傾向i)。

四国・室戸岬では黒潮が離れ(離岸傾向n)、足摺岬では近づいています(接岸傾向o)。

黒潮は八丈島(図の)の北を東に通過しています(図1, 2)。

Fig1

図1: 観測値を取り入れて作成した2018年3月23日の推測値。矢印(ベクトル)は海面近くの流れの向き(メートル毎秒, 長いほど早い流れ)、色は海面高度(メートル, 相対値)。赤丸()が八丈島の位置。海面高度が低いところは海面水温が低いおおまかな関係があります。

 

Fig2

図2: 3月28日の予測値。

 

予測

図3・図4・図5・図6は4月4日・4月11日・4月18日・5月24日の予測です。

東海沖の黒潮大蛇行は続くでしょう(図3~6)。紀伊半島・潮岬での離岸も継続するでしょう(図3~6)。黒潮大蛇行については次の節で詳しく見ています。

四国・室戸岬と足摺岬では離岸と接岸の変化が大きく変化すると予測しています(図3~6)。房総半島沖では、東では離岸気味の傾向が続きますが(図3~6)、近づく時期もあるでしょう(図5)。

図7は、3月23日から5月24日までの予測をアニメーションにしたものです。

Fig3

図3: 4月4日の予測値。

 

Fig4

図4: 4月11日の予測値。

 

Fig5

図5: 4月18日の予測値。接岸・離岸の記号は略。

 

Fig6

図6: 5月24日の予測値。接岸・離岸の記号は略。

 


図7: 2018年3月23日から5月24日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

黒潮の大蛇行は今後どうなるか?

この欄では黒潮大蛇行の今後を検討します。図8下段にしめした図が典型的な黒潮大蛇行になった場合のイメージです。典型的な黒潮大蛇行には(1)蛇行が大きい(2)紀伊半島・潮岬での離岸(3)八丈島の北を流れるといった特徴があります。特徴をひとつずつ見てみましょう。

蛇行が大きいというのは北緯32度以南(図8の赤点線)まで蛇行するというのが目安です[4]。図8上段と中段は今年3月18日と3月26日の「ひまわり8号」が観測した海面水温を比較した図です[5]。黒潮は温度の高い帯として見えています。3月18日(上段)、3月26日(中段)とも、東海沖で冷水が北緯32度よりも南まで広がっています。それを迂回して、黒潮が大きく蛇行しています。予測では、大きな蛇行はまだ続きます(図3~6)。

黒潮蛇行の南西にある時計回り渦の動きに注目しています(図1~6)。この時計回り渦は東側の南向きの流れにより、短期的には蛇行をさらに南に引き出す働きをします。一方で、過去の黒潮大蛇行では、蛇行を南に引きちぎるようにして、その後の大蛇行を弱めた例があります。実際、JCOPE2Mの予測(図1~3)では、大蛇行を作っている冷水渦がAとBの2つに分離したと見ています。渦Bが分離した分、大蛇行を作る本体の渦Aは弱くなります。分離した渦Bは引きちぎられるところまでいかなくても、次第に消滅していきます。図8中段の水温図では、渦Bの消滅が温度上昇として見えているようです。

黒潮は潮岬で離岸しています(図8上段・中段、黒潮の高水温が潮岬が離れている)。串本と浦神の日平均潮位差(気象庁)も小さいままであることから、離岸が継続していることがわかります[6]。予測では潮岬での離岸も続きます(図3~図6)。和歌山での黒潮の離岸の影響に関しては、取材協力した番組の内容が動画とテキストで公開されています(2018/1/26放送・毎日放送VOICE「サンゴや熱帯魚に異変 和歌山の海に一体何が」)。

八丈島()の周囲は暖水になっており、黒潮は八丈島の周囲を流れています(図8上段・中段)。東京大学大気海洋研究所の「潮位データを用いた黒潮モニタリング」のグラフを見ると、八丈島の潮位が上昇していることから、八丈島の北を流れる流路なっているようです[7]。一般的には黒潮が八丈島の北を流れたほうが大蛇行が安定するとされています。同じく「潮位データを用いた黒潮モニタリング」のグラフを見ると三宅島の潮位も上昇していることから、黒潮は三宅島にも近づいているようです。

Fig8

図8:[上段]3月13日に「ひまわり8号」が観測した海面水温。は八丈島の位置。白くなっているところは雲がかかって観測できなかった所。[中段]同じく3月18日。[下段]典型的大蛇行になった場合の流れのイメージ。

 

図9は、水深水温3℃以下の海域の面積(冷水面積)による、黒潮大蛇行を作る冷水渦の強さの指標です(図の見方は「深海から黒潮大蛇行のこれからを予測する」を参照)。黒太線は解析値(観測を取り入れて実際に近いと考えられる値)で、先週の予測(点線)よりも大きく減少しています。最新の予測(赤線)では、減少がいったん落ち着きますが[8]、その後はやはり減少(黒潮大蛇行を作る渦の弱化)が続くと予測しています。

Fig9

図9: JCOPE2Mで推定と予測した冷水面積(水深1000mの赤点線枠で水温3℃以下の海域の面積)の1日毎の時系列。黒潮大蛇行を作る冷水渦の強さの指標。単位は104平方キロメートル。黒線は観測を取り入れつつ推定した値。赤線が最新の予測で、青線が一つ前、黒点線が2つ前の予測(先週の予測)。参考のために、前回の大蛇行が終了した2005年の時の時間変化を薄い線で重ねた。


  1. [1]黒潮大蛇行の記事のまとめはこちら
  2. [2]黒潮大蛇行時の東海沿岸への暖水進入については2017/9/13号「黒潮大蛇行で浸水被害?」を参照。
  3. [3]接岸と離岸の傾向を上流から一連のアルファベットで図示しています。赤字i,k,,が接岸傾向で、青字h,j,,が離岸傾向です。黒潮上に接岸・離岸傾向は交互にあらわれており、黒潮が波うっている様子をあらわしています。接岸・離岸傾向は黒潮の流れで下流に流されます。アルファベットは図1から図4まで共通で(前号とも共通ですが、あらためて記号を振り直したところもあります)、同じアルファベット、たとえば離岸傾向fが、上流から下流に位置が動いていることをしめしています。
  4. [4]海上保安庁の用語の説明参照。http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/KAIYO/qboc/exp/yougo.html
  5. [5]「ひまわり8号」の海面水温はJAXA提供のデータです。2015/10/9号・気象衛星「ひまわり8号」で見た黒潮を参照してください。鹿児島県水産技術開発センター和歌山県水産試験場三重県水産研究所からも「ひまわり」の画像が公開されています。過去の「ひまわり8号」の水温データを使った解説一覧はこちら
  6. [6]串本・浦神潮位差については、2016/4/1号「潮岬への黒潮接岸判定法は?: 串本・浦神の潮位差」で解説したように、紀伊半島・潮岬で黒潮が接岸→潮位差大黒潮が離岸→潮位差小という関係があります。過去の串本・浦神潮位差の解説一覧はこちら
  7. [7]八丈島の潮位については、「黒潮が八丈島の南を流れているのをどうやって観測で確認するの?」で解説しています。
  8. [8]上で述べた渦Bの分離に始まった大蛇行の渦の弱化が一段落したことに対応していると考えられます。


JCOPE2Mは週2回の更新を行っています(解説参照)。JCOPE2Mの他の予測図についてはJCOPE のweb pageでご参照ください。図の見方は連載: JCOPE2解析・予測画像の見方で解説しています。