予測以上に暖水渦が強いが(親潮ウォッチ2018/7)

最近の親潮の様子を見ています。先月の予測以上に暖水渦の効果が残っています。それでも2年前ほどではないという予測を維持しています。

全体的な状況

まず、日本周辺の水温状況を見てみましょう。図1は、2018年6月7日と、7月13日の、海面水温の平年との差を見たものです[1]。平年より高い場所が赤っぽい色、低い場所では青っぽい色になっています。

7月現在(図1下)、暑い天候が続いたことにより、全体的に日本周辺の海域は平年より高くなっています。黒潮大蛇行が現在発生しており冷水渦の存在が存在していますが(黒潮予測記事参照)、それにもかかわらず日本南岸でも平年より高くなっています(図1下C)。東シナ海では高い水温が維持されており、「平成30年7月豪雨」の一因と考えられる東シナ海の活発な対流を支えた可能性があります[2]。沖縄周辺からその南では台風通過などの影響があり平年より水温が低くなっています(図1下D)。東北東沖では暖水渦の効果で特に平年より水温が高いところが見られます(図1下B、次節以降参照)。

逆に北緯40度より北では悪い天候が続いたことにより、平年より冷たい海域が広がっています。弱いながら暖水渦の効果が見られる北海道南東沖でも(図1下A、次節以降参照)、平年より高い水温は目立たなくなってます。

今後の日本周辺の水温については、姉妹サイトの「季節ウォッチ」も参考にしてください。平年より高い夏の日本周辺の水温を予測しています(季節ウォッチ「2018年5月号:今年の夏の天候は?」図3)。

Fig1

図1: 海面温度の平年との差(℃)。[上段]2018年6月7日。[下段] 2018年7月13日。

 

親潮の様子(海面)

親潮周辺の様子を詳しく見ていきます。図2左は、図1下段を親潮域で拡大した図です。図2左のa~fの海域などでは平年より高くなっています。水温が高いのは海流(暖水渦)の影響だと考えられます。図2右は、対応する海面温度そのもの(色)と、流れ(矢印)です。a~fの位置に時計回りの暖水渦が見られます。a~cの渦は比較的弱く水温への影響が弱く、d~fの渦は比較的強く水温への影響が強いようです。

Fig2

図2: [左図] 2018年月7月13日の親潮周辺の海面温度の平年との差(℃)。[右図] 同じく2018年7月13日の海面水温(色、℃)と流れ(流線)。

親潮の様子(海面下)

海流の様子をより良くみるために、天気の影響を受けにくい海面下の水深100メートルの様子を見てみましょう(図3左図)。暖水渦の影響が大きかった2年前の状況とも比べます(図3右)。暖水の影響で、親潮が岸沿いに南下しにくくなっています(図3左)。ただし、強い暖水渦のあった2年前(2016年)ほどではありません(図3右g)。

Fig3

図3: 水深100メートルでの水温(色、℃)と流れ(流線)。親潮勢力の指標として水温5度に赤細線で等値線。青枠は図8の計算に使用。[左図]今年の7月13日。[右図] 2年前(2016年)の7月13日。

先月の予測との比較

先月の親潮ウォッチ2018/6の予測を検証します。図4右は、6月7日から予測した7月13日の親潮の状態です。図4左は、観測値を取り入れて実際に近いと考えられる7月13日の状態です。予測は、暖水渦a,d,fの動きについては悪くありませんでしたが、暖水渦b,c,eの強さについては過小評価したようです。図5は、同じく予測値(右)と実際(左)の比較を、6月7日から7月13日までのアニメーションにしたものです。

Fig4

図4: 水深100メートルでの水温(色、℃)と流れ(流線)。親潮勢力の指標として水温5度に赤細線で等値線。青枠は図6の計算に使用。[左図]観測値を取り入れて計算した2018年7月13日の解析値。[右図] 6月7日から予測した7月13日の予測値。

 


図5: 6月7日から7月13日までの予測(右)と実際(左)の比較のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

7月13日からの予測

図6は、JCOPE2Mで7月13日から予測した7月31日の親潮域の水深100mの水温・流れ(左図)と、平年[3](右図)を比較しています。水温5度の等値線が親潮の勢力の指標になっています。図3の渦dの北上が重要になりそうです(図6左)。現在のところ予測では、平年の親潮第一分枝(①, 図6右)と比べて親潮が南下しにくいということはなさそうですが、第二分枝は弱めそうです[4]

図7は、図6に対応する7月13日から9月13日までの予測をアニメーションにしたものです。

Fig6

図6: JCOPE2Mで2018年7月13日から予測した7月31日の親潮域の水深100mでの水温(色、℃)と流れ(流線)の図(左図)と、平年(右図)の比較。親潮勢力の指標として水温5度に赤細線で等値線。

 


図7: 親潮域の水深100mでの2018年7月13日から9月13日までの水温のJCOPE2Mによる水温(色、℃)と流れ(流線)の予測(左図)と、平年(右図)の比較のアニメーション。親潮勢力の指標として水温5度に赤細線で等値線。青枠は図7の計算に使用。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

親潮面積

JCOPE2Mによる推定によれば(図8青太線)、親潮の勢力の指標である親潮面積(図3の青枠での水深100メートルの水温5度以下の水の広がり)[5]は、平年(黒細線)よりかなり小さな値が続いています。先月は平年並みの値を推測・予測していたので、想定よりも暖水渦の効果が強かったことになります。予測(黄点線)では、平年よりかなり小さい値が続きそうです。

渦の動きの予測は難しいので、今後予測が変わる可能性があります。最新の予測は週2回更新されるJCOPE のサイトでチェックしてください。

Fig8

図8: 親潮面積の時系列(単位104 km2)。青線が2017年1月から現在までのJCOPE2Mから計算した時系列。黒細線はJCOPE2M再解析による平年(1993-2016年)の季節変化。灰色の範囲は平均からプラスマイナス標準偏差の範囲。黄点線は2018年7月13日からのJCOPE2Mによる予測。

 

  1. [1]この記事では、今年の値はJCOPE2Mを使っています。平年の値はJCOPE2M再解析の1993~2016の平均を使っています。
  2. [2]「平成30年7月豪雨」の大雨の特徴とその要因について(速報)(気象庁、2018/7/13)
    一般的な豪雨と東シナ海の関係については「豪雨の鍵をにぎる東シナ海」で解説しています。
  3. [3]1993から2016年の平均。
  4. [4]親潮第一分枝・第二分枝については「親潮はどんな流路になっているの?(親潮ウォッチ2015/7)」の解説参照。
  5. [5]親潮面積については、「親潮が記録的なあたたかさ(親潮ウォッチ2015/9)」で解説しています。

黒潮親潮ウォッチでは、親潮の現状について月に一回程度お知らせします。親潮に関する解説一覧はこちらです。週に2回更新される最新の親潮の解析・予測図はJCOPE のweb pageで見られます。親潮関係の図の見方は2017年1月18日号2017年2月1日号で解説しています。

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美山 透

海の変化は、漁業海運エネルギー天候など様々なことに影響します。海洋予測がもっと身近なものになるように、頭をしぼって書いています。