2018年台風12号通過による海面水温の変化

2018年台風12号の通過による海面水温変化の様子を、気象衛星「ひまわり8号」による観測と、モデルによる計算で見てみました。

台風が12号が近づく前

週末に台風12号が日本を横断しました[1]。この文章を執筆時点では台風は九州の南方にまだ存在します[2]

図1の上段は、台風12号が近づく前の2018年7月26日のJCOPE2Mで推定した海面水温です。図1の下段は、2018年7月26日の、海面水温の平年との差を見たものです[3]。平年はより高い場所が赤っぽい色、低い場所では青っぽい色になっています。

沖縄周辺を除き、台風12号が近づく前の海面水温は平年よりかなり高く(図1下段)、日本の南には29℃を越える海面水温が広がっていました。この高い海面温度の上を通ったために、台風12号は強い勢力を保ったままで日本に近づきました。

沖縄周辺の海面水温が平年より低いのは、以前の台風の通過のために海面水温が冷やされたためです。

Fig1

図1: [上段] JCOPE2Mで推定した2018年7月26日の海面温度(℃)。[下段] 同日の海面水温の平年からの差(℃)

 

台風通過による海面水温の変化

図2の上段は、気象衛星「ひまわり8号」[4]が観測した、台風12号が日本に近づく前の2018年7月26日の海面水温です。図2の下段は、台風が東から西に日本を横断した後の7月30日の海面水温です(台風経路は青線)。図2の上段と下段を比較すると、台風の経路を中心として海面水温が低下した様子がうかがえます。

Fig1

図1: 気象衛星「ひまわり8号」が観測した海面水温(℃)。[上段] 2018年7月26日。[下段] 2018年7月30日。下段の青線は7月31日0時(日本時間)までの台風21号の経路。は7月31日0時の台風の中心位置。台風の経路のデータはデジタル台風から入手した。

 

台風12号の通過にともなう水温変化をモデルで見ることができます。図3はJCOPE-T-EASというモデルで計算した[5]海面水温の変化の様子をアニメーションにしたものです。台風12号が通過したところで(が中心位置で、青線がその時刻までの台風の経路)、海面水温が低下しています[6]

台風12号はまだ続いており、注意が必要です。また、水温が下がったといっても水温の高いところの大部分は残されていますし、8月にはさらに水温が上昇が見込まれることから、今後の台風にも警戒が必要です。


図3: 2018年7月26日0時から­31日午前0時(日本時間)までのアニメーション。色がJCOPE-T-EASによる海面水温(ºC)の1時間ごとの推定値­。★印が台風の中心位置。青線がそれまでの台風の経路。台風の経路はデジタル台風から入手した。

関連解説

過去の台風関連の記事一覧はこちら

  1. [1]2018/8/8追記: 台風12号がこのような経路を通った原因についてはJAMSTEC研究者による解説があります。
    【コラム】なぜ台風12号はかつてないルートで日本を襲ったのか?~熱帯起源の渦(台風)と高緯度起源の渦(寒冷渦)との相互作用~(2018/8/7)
  2. [2]台風に関する最新の様子はは気象情報をご覧ください。
  3. [3]この記事では、今年の値はJCOPE2Mを使っています。平年の値はJCOPE2M再解析の1993~2016年の平均を使っています
  4. [4]「ひまわり8号」の海面水温はJAXA提供のデータです。2015/10/9号・気象衛星「ひまわり8号」で見た黒潮を参照してください。鹿児島県水産技術開発センター和歌山県水産試験場三重県水産研究所からも「ひまわり」の画像が公開されています。過去の「ひまわり8号」の水温データを使った解説一覧はこちら
  5. [5]JCOPE-Tについては、「ちきゅう」のための海流予測2 (6)予測モデルJCOPE-Tについてで解説しています。1時間毎のデータがあるので、台風にともなう変化のように短い時間で変化する現象を見るの向いています。過去のJCOPE-Tを使った解説一覧はこちら
  6. [6]台風によって水温が低下するメカニズムについては、気象庁の解説を参照してください。