黒潮大蛇行の終息が発表されましたが、その余波は続いています。蛇行がある程度大きくなっていますが、大蛇行になる可能性は低いです。 |
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- JCOPE-T DAによる短期予測(20日先)
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- JCOPE3Mによる長期予測(2か月先)
を行っています。
ここで12月19日までのJCOPE3Mによる長期予測を解説します。長期予測では、黒潮の蛇行の予測がテーマです。
予測
図1は2025年10月18日の状態の推測値、図2・3は11月19日、12月19日の予測です。
気象庁と海上保安庁は今回の黒潮大蛇行が2025年4月に終息したとの判断を発表しています(2025/8/29発表)。しかし黒潮大蛇行の余波は続いています(「2025年の黒潮のこれまでをふりかえる」参照)。
黒潮大蛇行からちぎれていた渦は、黒潮に吸収されて蛇行をつくっています(図1, A”)。
蛇行が大きいまま、潮岬で離岸すれば黒潮大蛇行になりますが、観測では黒潮が潮岬に接岸しています(図5参照)。
また、黒潮は八丈島の南を流れています(図1, 図6も参照)。これも通常は黒潮が八丈島の北を流れる黒潮大蛇行ではない特徴です。
現在の黒潮は非大蛇行離岸流路と判定されます。
黒潮は、八丈島の南を流れる非大蛇行離岸流路(図1)から、八丈島の北を流れる非大蛇行接岸流路になっていく予測になっています(図2~3)。蛇行A”が東に流れ去ることで、黒潮大蛇行の最後の余波が消えることになりそうです。
「今後の黒潮: 考えられる4つのシナリオ」の中で、シナリオ4に向かっています。
図4は、2025年10月18日から12月19日までの予測をアニメーションにしたものです。



図4: 2025年10月18日から2025年12月19日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。
観測で見る黒潮流路
黒潮大蛇行の特徴の一つは、黒潮が潮岬で離れていることです。黒潮が潮岬で離れているかを観測で見る良い方法として、串本と浦神の潮位差を見るという方法が知られています(「潮岬への黒潮接岸判定法は?: 串本・浦神の潮位差」参照)。黒潮が紀伊半島に近づくと潮位差は大きくなり、黒潮が紀伊半島から離れると潮位差は小さくなります。図5はその潮位差の時間変化です。2017年に黒潮大蛇行が始まって以来、一時を除いて小さな値が続いていました。しかし、4月の黒潮大蛇行の終息後の後しばらくして値が大きくなり、潮岬で黒潮が接岸しました。その後、西の蛇行(A”)による離岸によって、串本と浦神の潮位差は再び小さくなりましたが、断続して上昇が見られています。黒潮が潮岬に接岸している証拠となります。予測通りであれば、今後も黒潮は潮岬に接岸し、潮位差は高い値になります。
黒潮大蛇行の特徴のもう一つの特徴は、黒潮が八丈島の北を通ることです。八丈島の南を黒潮が通ると、八丈島の潮位が下がることが知られています(「黒潮が八丈島の南を流れているのをどうやって観測で確認するの?」参照)。八丈島の潮位は、東京大学大気海洋研究所の藤尾伸三准教授のウェブサイト「潮位データを用いた黒潮モニタリング」で見ることができます。図6は、このサイトから八丈島での潮位のこの5年の変化をグラフ化したものです。黒潮大蛇行が始まって以来、短期間を除き、八丈島の潮位は高い状態が続いてきました。大蛇行が終息した後、潮位は低下しました。その後、ある程度上昇しましたが、直近のデータは再び下降しています。黒潮が八丈島の南を流れている証拠です。予測通りであれば、八丈島の北を黒潮が流れるようになるので、今後は上昇に転じる見込みです。


参考: アンサンブル予測
JCOPEでは、上記の予測の他に、予測初期での条件を変えて予測がどれくらいの幅で変わるかという予測実験も行っています(JCOPE3Fによるアンサンブル予測)。下の参考図は12月19日の黒潮の予測です。全24の予測をおこなっています。半数以上がJCOPE3Mと同じく非大蛇行接岸流路を予測していますが、他の流路を予測しているケースもあります。

JCOPE3Mは水平1/12度の分解能で2か月先までの予測を行っています。予測は毎日更新されています。