海面水温低下(親潮ウォッチ2018/8)

東北・北海道沖では、台風第13号や前線の影響で海水面温度が低下しています。暖水渦は存在していますが、岸沿いの親潮の南下はさまたげられていない状態です。

全体的な状況

まず、日本周辺の水温状況を見てみましょう。図1は、2018年7月13日と、8月26日の、海面水温の平年との差を見たものです[1]。平年より高い場所が赤っぽい色、低い場所では青っぽい色になっています。7月の海面水温については、「予測以上に暖水渦が強いが(親潮ウォッチ2018/7)」で解説しています。

7月(図1上段)には全体的に日本周辺の海域は平年より海面水温が高くなっていましたが、その後台風が多数通過したことから、8月末(図1下段)には平年より水温が低くなっているところが目立っています。図1下段の線は7月13日以降の台風の経路です。台風12号(青線)による海面水温低下については、「2018年台風12号通過による海面水温の変化」で解説しています。台風13号(赤線)の海面水温低下は、次で取り上げています。

今後の日本周辺の水温については、姉妹サイトの「季節ウォッチ」も参考にしてください。「2018年8月号:今年の秋はどうなる?」には、秋の予測が出ています。

Fig1

図1: 海面温度の平年との差(℃)。[上段]2018年7月13日。[下段] 2018年8月26日。線は7月13日から8月26日の間に図の範囲で通過した台風の経路。凡例の数は台風の号数にあたる。台風の経路のデータはデジタル台風から入手した。

台風13号による海面水温低下

ここでは台風13号による海面水温低下を見てみましょう。図2の左はJCOPE-T-EASというモデルで計算した[2]海面水温の変化の様子をアニメーションにしたものです。台風13号が通過したところで(が中心位置で、青線がその時刻までの台風の経路)、海面水温が変化しています。図2の右は、左図に対応する8月8日18時の水温からの温度変化(℃)です。台風の通過にともなって1℃以上温度が下がっているところが見られます。


図2: [左図] 2018年台風13号の経路と海面水温のアニメーション。2018年8月8日18時から­10日15時(日本時間)。色がJCOPE-T-EASによる海面水温(ºC)の推定値­。★印が台風の中心位置。青線がそれまでの台風の経路。台風の経路はデジタル台風から入手した。[右図]左図に対応する8月8日18時の水温からの温度変化(℃)。

親潮の様子(海面)

親潮周辺の様子を詳しく見ていきます。図3左は、図1下段を親潮域で拡大した図です。台風13号の通過の他にも、前線の停滞[3]などがあり、東北・北海道沖では平年より水温が低い海域が広がってます。

全体的に温度が平年より低い中でも、図3左のa~dの地点では水温が平年より高くなっています。水温が高いのは海流(暖水渦)の影響だと考えられます。図3右は、対応する海面温度そのもの(色)と、流れ(矢印)です。a~dの位置に時計回りの暖水渦が見られます。

Fig2

図3: [左図] 2018年8月26日の親潮周辺の海面温度の平年との差(℃)。[右図] 同じく2018年8月26日の海面水温(色、℃)と流れ(流線)。

親潮の様子(海面下)

海流の様子をより良くみるために、天気の影響を受けにくい海面下の水深100メートルの様子を見てみましょう(図4左図)。昨年の状況とも比べます(図4右図)。

昨年の暖水渦(図4右図のe)に比べて、今年の暖水渦(図4左図のa)は北海道から遠く、親潮の沿岸沿いの南下がさまたげられにくい状況です。昨年の暖水渦(図4右図のe)については、「海面水温は西高東低 (親潮ウォッチ2017/08)」で解説しています。昨年はこの後、暖水渦が親潮を弱めるようになりました(「親潮はそれほど強くない (親潮ウォッチ2017/09)」)。

Fig3

図4: 水深100メートルでの水温(色、℃)と流れ(流線)。親潮勢力の指標として水温5度に赤細線で等値線。青枠は図7の計算に使用。[左図]今年の8月26日。[右図] 1年前(2017年)の8月26日。

8月26日からの予測

図5は、JCOPE2Mで8月26日から予測した9月5日の親潮域の水深100mの水温・流れ(左図)と、平年[4](右図)を比較しています。水温5度の等値線が親潮の勢力の指標になっています。図3の渦aの動きが重要になりそうです(図6左)。現在のところ予測では、平年の親潮第一分枝(①, 図6右)と比べて親潮が南下しにくいということはなさそうですが、第二分枝は弱めそうです[5]

図6は、図5に対応する8月26日から11月1日までの予測をアニメーションにしたものです。

Fig5

図5: JCOPE2Mで2018年8月26日から予測した9月5日の親潮域の水深100mでの水温(色、℃)と流れ(流線)の図(左図)と、平年(右図)の比較。親潮勢力の指標として水温5度に赤細線で等値線。

 


図6: 親潮域の水深100mでの2018年8月26日から11月1日までの水温のJCOPE2Mによる水温(色、℃)と流れ(流線)の予測(左図)と、平年(右図)の比較のアニメーション。親潮勢力の指標として水温5度に赤細線で等値線。青枠は図7の計算に使用。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

親潮面積

JCOPE2Mによる推定によれば(図7青太線)、親潮の勢力の指標である親潮面積(図3の青枠での水深100メートルの水温5度以下の水の広がり)[6]は、親潮の第二分枝が弱いことから、平年(黒細線)よりかなり小さな値が続いています。予測(黄点線)では、親潮の第一分枝が強まることから、平年(黒細線)に近づきそうです。

渦の動きの予測は難しいので、今後予測が変わる可能性があります。最新の予測は週2回更新されるJCOPE のサイトでチェックしてください。

Fig7

図7: 親潮面積の時系列(単位104 km2)。青線が2017年1月から現在までのJCOPE2Mから計算した時系列。黒細線はJCOPE2M再解析による平年(1993-2016年)の季節変化。灰色の範囲は平均からプラスマイナス標準偏差の範囲。黄点線は2018年8月26日からのJCOPE2Mによる予測。

 

関連情報

  • 水産庁は7月31日に、「平成30年度 サンマ長期漁海況予報(道東~常磐海域)」を発表しています。それによれば、「道東沖には暖水塊は停滞するものの、親潮第1分枝の南限位置は平年並み~やや南偏で推移すると予測される」(中略)「このため、道東海域へのサンマの来遊及び南下を妨げるような水温分布にはならず、9月中旬には色丹島沖周辺に主漁場が形成されると予測される。その後は、親潮第1分枝に沿って一部のサンマが南下するもの、親潮第2分枝を通って南下するものも多く、漁場は東西に広く形成されると考えられる」としています。
  • 取材協力
    8月29日放送のテレビ朝日系「ワイド!スクランブル」のサンマ豊漁のニュースのなかで、今年の親潮域の状況について取材協力しました(電話インタビューと図提供)。
  1. [1]先月までは、JCOPE2Mのデータを使っていましたが、JCOPE2Mが取り入れている気象衛星「ひまわり8号」の海面水温観測で千島列島付近に一部問題があり、図1,3,4についてはJCOPE2のデータを今回使っています。図5~7については、予測がJCOPE2Mしかなく、海面下のデータで問題が少ないと考えられることから、JCOPE2Mのデータを使っています。平年の値は1993~2016の平均を使っています。
  2. [2]JCOPE-Tについては、「ちきゅう」のための海流予測2 (6)予測モデルJCOPE-Tについてで解説しています。1時間毎のデータがあるので、台風にともなう変化のように短い時間で変化する現象を見るのに向いています。過去のJCOPE-Tを使った解説一覧はこちら
  3. [3]参考:「平成30年8月13日から18日にかけての大雨に関する気象速報」(pdf, 2018/8/22 札幌管区気象台)
  4. [4]1993から2016年の平均。
  5. [5]親潮第一分枝・第二分枝については「親潮はどんな流路になっているの?(親潮ウォッチ2015/7)」の解説参照。
  6. [6]親潮面積については、「親潮が記録的なあたたかさ(親潮ウォッチ2015/9)」で解説しています。

黒潮親潮ウォッチでは、親潮の現状について月に一回程度お知らせします。親潮に関する解説一覧はこちらです。週に2回更新される最新の親潮の解析・予測図はJCOPE のweb pageで見られます。親潮関係の図の見方は2017年1月18日号2017年2月1日号で解説しています。

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美山 透

海の変化は、漁業海運エネルギー天候など様々なことに影響します。海洋予測がもっと身近なものになるように、頭をしぼって書いています。