暖水渦の影響弱まる? (親潮ウォッチ2020/7)

まとめ

    • 北海道に南東に位置する暖水渦だった時計回りの渦は残っていますが、暖水と冷水が入り混じるようになっています。沿岸寄りの親潮の南下①(親潮第一分枝[1])は、はっきりしません。
    • 沖側の親潮の南下②(親潮第二分枝[1])は平年より強くなっています。
Fig1

図1: 親潮状態の説明図。

 

見通し(長期予測)

海洋予測モデルJCOPE2Mで、約2か月先までの予測を行っています。図2はJCOPE2Mによる水深100メートル[2]での7月7日の水温(色、℃)と流れ(矢印)です。赤色が黒潮の影響を受けた暖かい水温で、青色が親潮の影響を受けた冷たい水温です。親潮の影響を受けている範囲の指標として、水温5°Cに太い黒線を引いています

先月まで暖水渦だった時計回りの渦は北海道南東にまだ残っています。しかし、暖水渦としては、はっきりしなくなり、渦によって暖水と冷水が入り混じるようになっています。沿岸寄りの親潮の南下は、時計回りの渦のためにはっきりしません。暖水渦の影響が弱まっているためか、気象庁の解析による親潮の面積は平年の範囲より大幅に小さかったのが、平年の範囲に近づくほうに増加しています。

一方、より東では、水温5°C線(黒太線)は平年の位置(青線)より南にあり、沖側の親潮は平年より南下しています。

図3は図2に対応する2020年7月7日から9月15日までの予測をアニメーションにしたものです。時計回りの渦の周辺で暖水と冷水が入り混じる様子が続くと予測しています。

日本海を見ると、水温5度線(黒線)が平年(青線)より北にあることから(図2)、日本海は平年より水温が高い状態です。予測でも平年より高い状況が続きます(図3)。

Fig2

図2: JCOPE2Mによる2020年7月7日の水深100メートルでの水温(色、℃)と流れ(矢印)。赤色が5°Cより高い黒潮の影響を受けた暖かい水温で、青色が5°Cより低い親潮の影響を受けた冷たい水温。親潮の影響を受けている範囲の指標として水温5°Cに太い黒線を引いた。細い青線は1993-2018年平均の水温5°C線で平年の親潮の影響範囲。

 


図3: 図2に対応する2020年7月7日から9月15日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

詳細(短期予測)

より高い水平分解能のモデルJCOPE-T DAで短期予測(約10日先)も行っています。毎日更新されるJCOPE-T DAの予測は、JAXAが提供を開始した可視化サイトで見ることができます。図の見方は「JAXAと共同で新しい海洋予測を開始」で解説しています。

図4は2020年7月13日午前9時から7月23日午前9時までの予測のアニメーションです。左が海面、右が水深100mです。右の水深100mの図には、親潮の勢力の範囲の指標として、水温5℃線を黒太線線にしています。JCOPE-T DAは潮の満ち引きも計算しているので、1時間ごとの図でアニメーションにしています。

水深100mでは、長期予測と同じく、時計回り渦の周辺で暖水と冷水が入り混じる様子が見られます。海面では、それほどでもなく、暖水渦が形を保っています。

最新の予測は上記JAXAの可視化サイトでご確認ください。


図4: 2020年7月13日午前9時から7月23日午前9時までの1時間ごとの予測のアニメーション。左が海面、右が水深100m。矢印(ベクトル)が海面の流れの向きと強さ(メートル毎秒)。色が海面水温(℃)。温度の等温線も2℃ごとに白色で加えてある。水深100mの右の図には親潮の勢力の指標として水温5℃の等温線も黒太線で加えている。クリックして操作してください。全画面表示にしたり、途中で停止したりできます。

 

 


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黒潮親潮ウォッチでは、親潮の現状について月に一回程度お知らせします。親潮に関する解説一覧はこちらです。 JCOPE-T-DAによる短期予測はJAXAのサイトで見ることができます。 4日毎に更新されるJCOPE2Mによる親潮の長期解析・予測図はJCOPE のweb pageで見られます。親潮関係の図の見方は2017年1月18日号2017年2月1日号で解説しています。

  1. [1]親潮第一分枝・第二分枝については親潮はどんな流路になっているの?で解説しています
  2. [2]天気の影響を受けやすい海面よりも海流の状態を反映していると考えられます。