黒潮大蛇行は、2017年の8月に始まってから期間が3年1か月を越え、史上2番目の長さです。大蛇行から大きく渦がちぎれて大蛇行の特徴を失う可能性がありますが、まだ様子を見る必要があります。 |
高分解能予測JCOPE-T DAの開始にともない、
- JCOPE-T DAによる短期予測(10日先)
- JCOPE2Mによる長期予測(2か月先)
を行っています。
ここでは11月18日までのJCOPE2Mによる長期予測を解説します[1]。長期予測では、黒潮大蛇行の予測がテーマです。
予測
図1は2020年9月9日の状態の推測値、図2・3は10月18日・11月18日の予測です。黒潮大蛇行の期間は3年1か月を越え、記録が確かな1960年代後半以降の史上2番目の長さの黒潮大蛇行になっています(最長は1975-80年の4年8か月。「黒潮大蛇行の歴史」参照。)。
東海沖の典型的な黒潮大蛇行が続いています。典型的な黒潮大蛇行には(1)蛇行が大きい、(2)紀伊半島・潮岬での離岸、(3)八丈島の北を流れるといった特徴があります。
蛇行が大きいというのは北緯32度以南まで蛇行するというのが目安です[2]。黒潮は北緯32度を越えて大きく蛇行しています(図1)。黒潮大蛇行から大きく渦がちぎれる可能性があります(図2)。実際にこのようにちぎれると黒潮は大蛇行ではなくなりますが、渦のちぎれは過大に予測される場合があり(例えば「2020年6月の予測を検証します 」)、まだ様子を見る必要があります。また渦が実際にちぎれても、再びくっつく場合があります(図3)。
黒潮は潮岬で離岸しています(B)。串本と浦神の日平均潮位差(気象庁)も小さいままであることから、離岸が継続していることがわかります[3]。渦が予想どおりちぎれると、黒潮が潮岬に接岸します(図2,3)。
黒潮は八丈島の北を通過する流路が続くと予測しています(C)[4]。八丈島の南を流れる流路が長期化、つまり大蛇行を作る反時計回りの渦が八丈島を越えて東に移動するのが黒潮大蛇行の通常の終わり方ですが、いまのところ予測されていません。
小蛇行(D)の影響で、足摺岬で黒潮の離岸が続くと予測しています。大蛇行からの渦のちぎれ方によって、室戸岬で接岸する可能性があります(図2,3)。
図4は、2020年9月9日から11月18日までの予測をアニメーションにしたものです。
図4: 2020年9月9日から11月18日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。
黒潮大蛇行を作る渦の強さ
図5は、黒潮大蛇行を作る冷水渦の強さの指標です[5]。東海沖水深1000mの冷水の面積の指標を3℃以下から、3.3℃以下に変更しています。
黒潮大蛇行を作る渦は弱まっています(黒太線)。最新の予測(赤線)は渦が大きくちぎれる予測ですが、渦が黒潮の近くにとどまるため(図2,3)、先週(黒点線)と同程度の値が続く予測です。
- [1]2020/4/15日号の予測より、予測モデルへの海面高度観測のデータの入れ方を変更しています。↩
- [2]海上保安庁の用語の説明参照。http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/KAIYO/qboc/exp/yougo.html↩
- [3]串本・浦神潮位差については、2016/4/1号「潮岬への黒潮接岸判定法は?: 串本・浦神の潮位差」で解説したように、紀伊半島・潮岬で黒潮が接岸→潮位差大、黒潮が離岸→潮位差小という関係があります。過去の串本・浦神潮位差の解説一覧はこちら。↩
- [4]東京大学大気海洋研究所の「潮位データを用いた黒潮モニタリング」のグラフで見ると、潮位が高い位置を保っており、黒潮が八丈島の北を流れていることを示唆しています。八丈島の潮位については、「黒潮が八丈島の南を流れているのをどうやって観測で確認するの?」で解説しています。八丈島の潮位の持つ意味は、解説「黒潮大蛇行が終わる時: 2005年の場合」でもとりあげています。↩
- [5]図の見方は「深海から黒潮大蛇行のこれからを予測する」を参照↩
JCOPE2Mは4日毎に更新を行っています(解説参照)。JCOPE2Mの他の予測図についてはJCOPE のweb pageでご参照ください。図の見方は連載: JCOPE2解析・予測画像の見方で解説しています。