毎月、過去1カ月の予測を検証しています[1]。4月は予測通り、黒潮大蛇行が続きました。予測通り黒潮大蛇行は続いています。予測よりも大蛇行は安定しています。 |
予測と実際(長期予測)
今回は2020年5月27日号の、5月20日から予測した6月17日までの結果を検証します。
5月27日号では黒潮大蛇行が続くと予測しました。その予測は当たっています。
図1左は、5月20日から予測した6月17日の黒潮の状態です。図1右は、観測値を取り入れて実際に近いと考えられる6月17日の状態です。図2は、同じく予測値(左)と実際(右)の比較を、5月20日から6月17日までのアニメーションにしたものです。
5月27日号の予測(図1左)は、実際(図1右)の黒潮大蛇行の特徴である、潮岬が継続して離岸している(C)こと、黒潮の最南下点が北緯 32 度より南に位置することを予測できていました(A)。ただし、予測では黒潮大蛇行から大きく渦がちぎれると予測していましたが、実際にはそこまでいかず、蛇行が大きく南にのびています。
黒潮が八丈島の北を流れる流路が継続すると予測していました(図1左B)。その予測は当たっています(図1右)[2]。
四国の室戸岬でも足摺岬でも大きく離岸することも予測できていました。
図2: 2020年5月20日から6月17日までの予測(左)と実際(右)の比較のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。
黒潮大蛇行を作る渦の強さ(長期予測)
大蛇行を作る渦の強さを数値化するために、2018/3/14号「深海から黒潮大蛇行のこれからを予測する」で、深層の冷水面積(水深1000mの水温3℃以下の海域の面積)を渦の強さの指標として導入しました。長期予測モデルJCOPE2Mをアップデートし、指標を水温3.3℃以下に変更しています。
図3の点線は、2020年5月27日号の5月20日からの予測による1か月の冷水面積の変化です。いったん下がるものの、最終的にほぼ横ばいを予測していました。実際には、値が下がっていますが、これは実際の黒潮大蛇行が冷水面積の評価範囲の北緯30度よりも南にはみ出してしまったからです。評価範囲を北緯29度まで広げると予測と実際はほぼ一致しており、黒潮大蛇行の強さは横ばいです。
黒潮大蛇行が2017年8月に始まってから約2年11か月[3]になっており、記録が確かな1960年代後半以降では、史上最長の1975-1980年(約4年8か月)に次ぐ長さになっています(「黒潮大蛇行の歴史」参照)。
予測と実際(短期予測)
今回は先週の6月15日から予測した6月21日の予測を検証します。図4上段は、6月15日から予測した6月21日の黒潮の状態です(1日平均)。図4下段は、観測値を取り入れて実際に近いと考えられる6月21日の状態です。
おおむね良く予測できていました。異なっているところをあげると、予測では6月21日の時点で大蛇行の南端から渦がちぎれていると予測していましたが、実際にはそこまでいっていないようです。また黒潮が蛇行した後に本州に近づいていますが、予測は実際より沿岸に近づき過ぎていたようです。
- [1]2017/7/12号「黒潮流路はどれくらい先まで予測できるのか」でも解説しているように、1ヶ月はある程度の精度をもって予測できる限界に近い長さです。毎月の検証では、限界に挑戦するため1ヶ月先の予測の検証をしています。仮に検証で1ヶ月先の予測が当たっていない部分があっても、たとえば1週間先の予測が外れ続けたという意味ではないことにご注意ください。↩
- [2]東京大学大気海洋研究所の「潮位データを用いた黒潮モニタリング」のグラフで見ると、潮位が高い状態が続いており、黒潮が八丈島の北を流れる流路を示唆しています。八丈島の潮位については、「黒潮が八丈島の南を流れているのをどうやって観測で確認するの?」で解説しています。八丈島の潮位の持つ意味は、解説「黒潮大蛇行が終わる時: 2005年の場合」でもとりあげています。↩
- [3]2017年8月も1か月に加えて数えてます。気象庁に合わせた数え方です。↩