弱い親潮が続きそう (親潮ウォッチ2023/9)

見通し(長期予測)

海洋予測モデルJCOPE2Mで、約2か月先までの予測を行っています。図1はJCOPE2Mによる水深100メートル[1]で9月14日の水温(色、℃)と流れ(矢印)です。赤色が黒潮の影響を受けた暖かい水温で、青色が親潮の影響を受けた冷たい水温です。親潮の影響を受けている範囲の指標として、水温5°Cに赤線を引いています。

黒潮続流(A)も例年に比べて異常に北上しており東北沖は水温が高くなっています(図5、6も参照)。

気象庁は黒潮続流の北上のために三陸沖の海洋内部の水温が記録的に高くなっていることを発表しています[2]

暖水が東北沿岸よりやや離れたため、以前よりは親潮の水が南下ししやすくなっています(図5、6も参照)。気象庁が診断した親潮面積[3]を見ても、やや平年値に近づいています。それでもまだ親潮は弱い状態です。

今後(図2~3)は、黒潮続流は暖水渦として切り離されると予測しています(A)。実際にちぎれるかは不確実です。しかし、仮にちぎれても、ちぎれた暖水渦は東北沖に残ります。黒潮続流も再び北に伸びてきそうです(B)。そのために、親潮は南下しにくく、東北沖の高水温は続きそうです。

日本海では水温が高く、北海道北部で水温5度線の分布が平年よりも広がっており、それが続く予測です(C)。気象庁の対馬暖流の勢力の時系列(日本海における深さ 100m の水温が 10℃以上の領域の面積)も、8月に短期間だけ平年値に近づいていましたが、再び平年よりかなり高くなっています。

図4は2023年9月14日から11月23日までの予測をアニメーションにしたものです。

Fig1

図1: JCOPE2Mによる2023年9月14日の水深100メートルでの水温(色、℃)と流れ(矢印)。赤色が5°Cより高い黒潮の影響を受けた暖かい水温で、青色が5°Cより低い親潮の影響を受けた冷たい水温。親潮の影響を受けている範囲の指標として水温5°Cに太い赤線を引いた。青線は1993-2020年平均の水温5°C線で平年の親潮の影響範囲。

 

Fig2

図2: 図1に同じ。ただし2023年10月23日の予測。

 

Fig3

図3: 図1に同じ。ただし2023年11月23日の予測。


図4: 図1に対応する2023年9月14日から11月23日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

 

今月のハイライト: 黒潮続流の北上

JAXAひまわりモニタ・海中天気予報のサイト がリニューアル公開されました(「JAXAひまわりモニタ・海中天気予報のサイトがリニューアル」) 。このサイトでは上の予測(JCOPE2M, 約9kmメッシュ)よりも高分解能のモデル(JCOPE-T DA, 約3km)の様々な図を見ることができます。モデルの結果と人工衛星「ひまわり」の図を重ねることもできます。

図5と6は、8月17日と9月18日の「ひまわり」観測の海面水温と、モデルによる流れの推定です。黒潮(黒潮続流)は先月も今月も異常に北上しています(A)。ただし東北沿岸の水温は下がり、以前に比べれば親潮が南下しやすくなっています。

Fig5

図5:8月17日午後4時の人工衛星「ひまわり」観測の水温(色)とモデルによる流れ(矢印)(①で指定)。色の幅は18~31℃とした(②で指定)。

 

Fig5

図6:図5に同じ。ただし9月18日午後4時。


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黒潮親潮ウォッチでは、親潮の現状について月に一回程度お知らせします。親潮に関する解説一覧はこちらです。 JCOPE-T-DAによる短期予測はJAXAのサイトで見ることができます。 4日毎に更新されるJCOPE2Mによる親潮の長期解析・予測図はJCOPE のweb pageで見られます。親潮関係の図の見方は2017年1月18日号2017年2月1日号で解説しています。

  1. [1]天気の影響を受けやすい海面よりも海流の状態を反映していると考えられます。
  2. [2]三陸沖の海洋内部の水温が記録的に高くなっています」(気象庁、2023年8月9日)
  3. [3]東経141度〜148度、北緯43度以南における、深さ 100m の水温が 5℃以下の領域の面積