海も猛暑!(2016年8月)

今年の8月初旬は非常に暑い日が続きました。この天候が海にどのような影響を与えたか見てみましょう。

図1の上段は、JCOPE2のデータを用いて、今年7月25日段階の海面水温が平年(1993から2012年の20年平均)より高いか(赤っぽい色)、低いか(青っぽい色)、を見たものです。海水面温度が平年より高くなるか低くなるかは、海流や天候の影響を受けて変わります。親潮域(図中A)は、春先から存在する暖水渦の影響で平年より高い状態が続いてました(過去の親潮解説参照)。九州東岸(図中B)が平年より冷たかったのは、小蛇行のため黒潮が岸から離れていたためです(7月31日号現状参照)。沖縄周辺から日本南方の海面水温(図中C)が平年より低かったことには、台風の通過による影響があります(※1)。

その後、日本周辺では天気が良く、暑い日が続いたため、海面温度も上昇しました。図1下段は8月8日の海面水温の平年との差です。平年より冷たい海域(青っぽい色)はほぼ消え、日本周辺全域が平年より高い海面水温(赤っぽい色)になりました。もともと平年より高かった親潮域などは、さらに温度が高くなっています。

歴史的に見て、これはどれくらい高い海面水温だったのでしょうか?図1下段の点線で囲まれた領域で8月前半(8月1日から15日)の海面水温を平均して過去の年と比較すると(図2)、JCOPE2のデータが利用できる1993年以降、1994年、2008年に次いで、今年は3番目の高い温度でした(※2)。このような高い温度は、各地で目撃されているサメや、西日本の赤潮の発生に影響をあたえているかもしれません。また、これから日本に近づいてくる台風の発達を促進することが懸念されます。

今年の夏が暑くなった原因としては、インド洋で発生している正のインド洋ダイポールモード現象の影響が考えられます。インド洋ダイポールモード現象に関してはJAMSTECニュース「予測通りにインド洋ダイポールモード現象が発生か?」(7月24日)を参照してください(※3)。図2で第1位の1994年も、正のインド洋ダイポールモード現象発生のために猛暑になったと考えられている典型的な年です。

長期的な今後の天候と海況の予測については、アプリケーションラボの季節予測のサイトhttps://www.jamstec.go.jp/frcgc/research/d1/iod/seasonal/outlook.htmlで情報発信を行っています。

Fig1

図1: JCOPE2再解析による海面温度の平年(1993年から2012年の平均)との差(ºC)。[上段] 7月25日。[下段] 8月8日。

Fig2

図2: 図1下段bの点線枠(125-150ºE,26-46ºN)での8月1~15日平均の海面温度の平年値からの差の時系列。横軸は年。

 


※1 台風9,10,11号による海面水温低下については7月24日号「台風の通ってきた海」で解説しています。台風12号(台風Halola)による海面水温低下についてはYouTube動画「Typhoon HALOLA and Sea Surface Temperature」を参照。

※2 各年の順番は平均期間によっても異なります。8月の1ヶ月平均では、ラニーニャ現象の影響が大きかったとされる2010年が、1993-2014年の期間では第1位になります。

※3 猛暑とインド洋ダイポールモード現象の関係については、JAMSTECプレスリリース「関東地方における熱中症と気候変動の関係を解明」(2014年7月10日)と、そのジュニア向け解説「気温が35℃を 越こえたら要注意!熱中症ねっちゅうしょうの 死亡者数しぼうしゃすうには、 熱帯域ねったいいきの 気候変動きこうへんどうが関係していた!」も参照。